いじめっ子、いじめられっ子、G7のもう一つの立ち位置

世の中に現在人類は80億人強、います。その80億の個体には一つとして同じものは存在しません。見かけ、色のみならず、所属するグループや国家、価値観や思想などあらゆるものが先天的、後天的、さらには宿命的に備わった上で成人となっていきます。当然ながら民主的な議論した場合、意見は割れるのでそれを最も公平な形で判断するのが多数決の原理でありました。100人もいれば意見は割れ、誰かの主張が通り、誰かがあきらめなくてはいけない、これが人類の歴史の中で延々と繰り広げられているわけです。

では100人ではなく少人数ならどうでしょうか?近代史ではお仲間が集まり、自分たちの存在感をアピールし、声を上げます。三国同盟、三国協商、四国同盟、五国同盟など歴史上、まとまりやすい数の集団が力を合わせることは古典的、伝統的手法とも言えます。では、それが7人ならどうでしょうか?その7人がお仲間であるとすればこれは比較的意見がまとまりやすいのは当然であります。いや、一時8人だったけれど追い出してしまった、と言う方が正解かもしれません。

当然ながらそのグループの声明に対して外部から様々な異論は出てきます。しかし、その外部の異論には耳を一切傾けず、明白なターゲットを作り、それを話の材料として議論を展開します。

これは我々一般人も同じことをしています。井戸端会議で「〇〇さんの話、聞いたー?いやねぇー」からサラリーマンの居酒屋での「今度の上司、お前、どう思う?」まで敵をネタにした話題展開はしやすいのです。

G7の威厳が低下しているとされるのはかつての大所高所から強力なリーダーシップのもと、地球全体ベースで経済、政治、社会をリードするという姿勢からグループ国の利益追求型に変わってきていることが一つあるのでしょう。

広島でいよいよG7が開催されますが、日本はお祭り状態にも見えます。しかし、焦点は議論の内容です。議論予定のテーマは10本ぐらい上がっていますが、中心はウクライナ問題、中国問題、北朝鮮問題と言った「敵ネタ」ものがメインディッシュで「そうだ、そうだ!」になりやすくなります。主催国の特権で選べるテーマは岸田首相が核軍縮、不拡散をテーマに掲げると思いますが、各国は「聞くふり」で終わると思います。

開催前日の日英首脳会談 首相官邸HPより

意見が割れるのが気候変動、エネルギー問題、デジタル対応あたりになるとみています。またグローバルサウスの声をどう取り込むかも理念と実態の差が浮き彫りになるでしょう。G7は主導権をグローバルサウスに取られたくないのは自明なのです。

よって個人的にはG7での共同声明は凡庸で、当たり障りのないもので終わるだろうと思います。極論すれば今、私がこのブログで共同声明の内容を書け、と言われても書けるぐらいのものになるでしょう。これはG7ですら利害関係が一致せず、一枚岩ではないので取り繕い、政治的判断をし、グループ結束のアピールにするためです。「化粧をしたG7リーダーたち」というのが私の思うところです。

今、世界で起きていることはいじめっ子がいるのでいじめられっ子がそれに負けないようにグループ化を進める、だけど「どちらもいやだわ」という第三極、つまりグローバルサウスが、「私たちはどちらにも味方しない!」と存在感をアピールするのです。つまりバラバラ。

なぜ、利害関係が一致しなくなったのか、といえば社会が成熟化し、情報が共有できるようになったから、としか言いようがありません。満たされるまでは国家は挙国一致体制で進みやすいのですがある程度のレベルになるとバラバラになります。これは人間社会の宿命と言ってよいでしょう。アメリカはなぜバラバラで、日本はなぜ30年もさまよったのか、中国は共産体制なのになぜ世界で最も貧富の差が激しいのでしょうか?安直かもしれませんが、マズローの欲求5段階説を国家のレベルに応じて当てはめていくと割とわかりやすい仕分けができるのです。アフリカの一部の国は生理的欲求、ウクライナは安全の欲求、多くの東南アジア諸国は社会的欲求、日本は承認欲求でアメリカや中国が自己実現欲求かもしれません。

もちろん、多くの国家同士がコミュニケーションをし、連携していくことは地球全体としては重要なことなのですが、利害関係だけを見れば二国間の方がやりやすいのです。これはトランプ氏の発想にも重なります。多国間連携は必ずどこかに妥協が入る、そして妥協の度合いが大きいのはマズローの5段階で下のクラスで、上に譲歩するということかもしれません。「長いものには巻かれろ」でしょうか?

G7では私のこんなつぶやきを吹き飛ばすような大いなる成果を期待したいところですが、今回は招待国が多いのでG20並みに困難がつきまとうかもしれません。

では今日はこのぐらいで。

バイデン大統領と岸田首相 首相官邸HPより


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年5月19日の記事より転載させていただきました。