G7の最大の成果とは何か?

G7広島サミットの意義とは?

今回の広島G7における最大の成果とは一体、何だろうか?

議長国である日本において、しかも、唯一の被爆国である日本において、世界で最初に戦略核が使われた広島において、世界の主要国が一堂に介して行われるG7の意味はどこにあるのだろうか?

G7広島サミット 議長国記者会見

核兵器や原発に反対する団体は、被爆地である広島で核廃絶を目指すと言いながら、ウクライナへの武器供与について話し合うのは道理に合わないと言う。またG7の多くが核兵器を保有している中、核廃絶を謳うことに矛盾はないのか?との疑問を呈する。

ゼレンスキー大統領と岸田首相 首相官邸HPより

現在、ウクライナ-ロシア戦争で最も大きな懸念が戦術核の使用であることは論を俟たない。停戦協議や和平交渉に入るべきだという人の多くは、現状、ロシアが侵攻した状況で手打ちにしてはどうかと言う。勿論、これにウクライナが納得する筈も無く、広島に来て対面協議を行ったゼレンスキーウクライナ大統領は、「東部と南部を取り戻すことを目指す」と明言している。

主権国家において、国家の構成要件である国民、国土と領海、統治機構である政府と外交能力を有していることが、国際法上の国家の要件となるが、ゼレンスキー大統領は正に主権を有する国家の長としての発言だ。

21日、議長国である日本の岸田総理は、今回のサミットを総括し、G7国のみならず、他の核保有国やその影響を受ける可能性がある国をも包含した言葉で、今回のサミットの意義を強調した。

我々は皆、『広島の市民』です。世界80億の民が全員、そうして『広島の市民』となった時、この地球上から、核兵器はなくなるでしょう。私はそれを信じています。今回、私は、そうした想いで、ここ広島で世界の首脳たちに集まっていただきました。夢想と理想は違います。理想には手が届くのです。我々の子供たち、孫たち、子孫たちが、核兵器のない地球に暮らす理想に向かって、ここ広島から、今日から、一人一人が広島の市民として、一歩一歩、現実的な歩みを進めていきましょう。

現在、ウクライナはロシアからの侵攻により、美しい街並みは破壊され、数多くのウクライナ国民が謂れなき理由によって殺戮され、或いは住む家を失い、国外に脱出せざるを得ない状況になっている。

プーチンは保身のために、他国に侵略し、それを方便に自ら権力の座に座ろうとしている。曰く、ウクライナはナチ政権であるとか、NATOは東進しロシアに攻め込もうとしているとか、ロシアの資源を狙い欧米はロシア連邦の解体を目指しているとか、国際社会から見れば、およそ妄言としか思えない理由でウクライナに攻め込んだ。挙句、はるか歴史の彼方に埋没したロシアの起源説まで持ち出して、今回の侵略行為を正当化しようとしている。

そのロシアによるウクライナ侵攻の過程において、侵攻当初から懸念されていたのが、プーチンによる戦術核使用の可能性だ。

ことプーチンの思惑と違い、ウクライナ国民がゼレンスキー大統領の元、一枚岩になることで国際世論は大きくウクライナ擁護に傾いた。大変失礼な言い方をすると、或いはウクライナは早々に白旗を揚げ、プーチンとの間に妥協点を見出すのではないか? と見られていたのだ。

見方によっては、ウクライナの広大な穀倉地帯にパイプラインを通し、欧州へのエネルギー供給で外貨と政治的影響力を行使しつつ、ロシアの国内経済の不安定化から来る反プーチンの動きを押さえつけたかったプーチンの大きな誤算は、ウクライナ国民をはじめ国際世論は力による現状変更を許さなかったと言う事実だ。

ロシアを擁護する一派は、ロシアの背後にはもっと強大な「何か」がいるんじゃないか? とか、ロシアにも言い分はあるなどとしたり顔で言うが、力による現状変更が正当化される理由はどこにも無い。そして何より、プーチンの思惑は国際社会から見透かされている事実だ。

そしてこれらの最も大きな懸念が、プーチンの戦術核使用の可能性だった。

ところが、いつまで経っても、プーチンは戦術核使用を決定しなかった。ワグネルのプリゴジンも、チェチェン共和国のカディロフ首長も、またロシア国内のプーチン支持派の一部も早々に戦術核使用に言及し、またプーチン自身もベラルーシに戦術核の下準備を支持するなどきな臭い動きはあったが、これまでのとことプーチンは戦術核を脅しの材料にしか使っていない。

これは何を意味するか?

つまりプーチンは戦術核を使いたくても使えないのではないか?

戦術核を使用すれば、理由の如何を問わず、NATO諸国は猛烈に反発するだろう。況や、核保有国は報復措置に出るに違いない。一つには、ロシアがやっていることは、NATO諸国の衛星画像で手に取るようにバレている。仮にベラルーシに戦術核を配備することは核拡散防止条約に違反しないと方便している。

情報BOX:ロシアによるベラルーシへの戦術核配備、実態と問題点

しかし、ベラルーシのルカシェンコ大統領が、全てにおいてプーチンの言いなりかと言われれば、そうではない。ルカシェンコは同盟国としてロシア支援の姿勢を見せてはいるが、ベラルーシ軍がNATOと敵対できるほどの戦力は持ち合わせていない。

まして、一年に及ぶ戦闘で弾薬の枯渇、兵力の不足が言われているのはロシアの方だ。不確実な情報だが、ウクライナ兵が捕らえたロシア兵の証言によると、最前線では本当に弾薬が不足しているどころか、ウクライナ軍のドローン攻撃によって補給路が相次いで絶たれ、食糧すら不足していると言われている。

今回のG7において、ロシアの戦術核使用を牽制しながら、同時に核抑止の効果は認めつつ核廃絶を最終目標に据えたことの意義は大きいと考える。つまりG7諸国は、核の脅威を目の当たりにすることによって、ロシアが牽制する戦術核使用の危険性を認識し、だからこそ、現在のウクライナを後方支援することで、プーチンに核使用の野望を持たせないことを狙っている。

核を使用することは、これほど甚大な被害を齎すと認識した上で、ロシアを牽制したのだ。

また同時に、それは台湾侵攻を目論みながら、太平洋諸国に影響力を持とうとする中国への牽制でもあるだろう。

ロシアも中国もNATO諸国やG7各国に対して、核を保有しながら自分たちを批判するのは間違っていると言いたいのだろうが、それはただの方便でしかない。事実として力による現状変更を目論み、また行動しているから批判されているのだ。

その意味で、今回のG7を広島で行ったことの意義は大きい。

つまり、今回のG7の主たる目的は、一体誰が平和な世界の敵なのか?を事実として示したのが最も大きな成果ではなかったのか?

以降、

・議長国日本の役割とは何か?
・人類が広島市民になることの意味

続きはnoteにて(倉沢良弦の「ニュースの裏側」)。