G7で唯一「一帯一路」に参加したイタリア
イタリアはG7の中で最も中国に歩み寄りを示している国だ。
2019年、イタリアは中国の広域経済圏構想「一帯一路」に参加して覚書に署名した。それは景気の後退に苦しむイタリアの中国市場への輸出拡大を狙ったものだ。また同時にイタリアは中国からの積極的な投資を期待したものでもある。
勿論、この決断には米国の当時のトランプ大統領はG7の絆を崩すものだと批判した。
イタリアの薬品が中国に巨額の輸出
ところが、イタリアのこの勇断が功を奏したのか、イタリアの薬品Ursofalk500mg(ウルソファルク)が中国向けに急激な伸びを見せているのである。この薬品は胆石や肝臓疾患に服用されるものである。それをなぜ中国が爆買いしているのか?
実は科学雑誌ネイチャーがウルディオソルがコロナ禍に有効である可能性が高いと発表したからである。イタリアのウルソファルクの有効成分が正にこのウルディオソルだということなのである。
中国人の間では自国のワクチンは効力が弱いというのを知っている。その一方で、中国政府は外国からのワクチンの輸入を禁止している。
ウルソファルクはイタリアでは医者の処方箋なく20カプセル9ユーロで購入できる安価な薬でもある。
中国に入国する外国人に対して医者がコロナ感染を警戒してこの薬を処方しているというのである。中国人の間でもコロナの感染再発を警戒している。
このような状況から中国ではこの薬品への需要が極度に高まり、今年2月にはイタリアから中国への輸出額が30億ユーロにまで到達。それが如何に驚異的かというのは、昨年の輸出は17億ユーロであったことと比較すると輸出が2倍の伸びを見せているのである。
しかし、クォーツはこの研究成果についてはさらに研究調査が必要だと表明している。さらにこの研究チームはワクチンの代替えになるものではないとしている。(以上5月14日付エル・エコノミスタから引用)。
第三国がイタリア経由で薬品を輸出している可能性もある
ところが、5月20日付スペイン紙「ディアリオ・エス」はこの輸出額の増大がウルソファルクだけではないという疑問を表明している。というのは、この輸出の増大にはイタリアだけでなく他のEU加盟国が薬品をイタリアに送ってイタリアから輸出している可能性もあることを指摘しているのである。例えば、ドイツである。ロシアや中国は米国の制裁対象国になっていることから、その批判を避ける為にイタリアに送り、イタリアが輸出しているような形にしている可能性があるということなのである。
イタリア同胞、北部同盟、フォルザイタリアの3政党の連立による右派連立政権は米国からの圧力をかわす意味で年内にこの中国との一帯一路の経済圏から離脱すると表明している。しかし、その一方で中国との取引拡大を狙っているのも事実である。