ヒロシマと核兵器の現実

野口 修司

ベラルーシへの低出力核(戦術と戦略がますます重なるケースが多くなり、戦術核という言葉は死語になり、これから使用されない可能性が高い)の配置は、ほぼ完了した。ロシア・ベラルーシ連合に参加する国には、全て核兵器が与えられるという論も出ている。「核拡散防止」と「核軍縮」など夢で、廃絶に至っては「絶対にあり得ない」状況になっている。

現在、ウクライナの逆転攻勢が進行中であり、東部だけでなくクリミアもウクライナ軍に奪還される可能性がある。もし限界まで追い詰められるとすれば、プーチンは自分で勝手に併合した”祖国”の存亡の危機に直面し、核兵器使用がますます高まる。

筆者は欧州の米軍基地で秘密裡に取材を重ねる。表面だけでなく、水面下でも英米は諜報支援を実施する。さらに半年くらい前に米国がプーチンに対して、もし核を使うなら米軍とNATOは通常兵器使用で、報復すると警告した。ウクラ領内のプーチン軍と黒海艦隊を殲滅。さらにプーチン個人の暗殺も辞さないという内容だ。プーチンは怖いはずだ。これが「ヒロシマ体験」よりも、プーチンに対して効果的な「抑止」になっている。これが現実なのだ。間違いない。

G7ヒロシマ首脳会議が先日終了した。この場所は人類が最初に(そして最後になることを願う)原爆被害を受けた場所であるため、核軍縮と核抑止に関する議論が重要となった。日本人が多く望む「核廃絶」の話も被ばく者などから強く出たが、後述する理由で、大きなテーマにはならなかった。

サーローさんと彼女の仲間の気持ちは理解できる。彼(女)らの努力と信念には敬意を表す。しかし、彼(女)らは世界の現実を把握していない。例えば、「お祭り騒ぎだけ」という言葉は適切ではない。またウクライナとインドの握手の意味が理解されていない。大きな結果を期待することはできなかったとしても、象徴的な意味にも配慮すべき。もし彼(女)らの主張が有効であるならば、核兵器は既にほとんど地球上に存在しなくなっているはずだ。

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原爆資料館で実際の被ばくの実相を目にし、核兵器の使用にためらいを抱くことを期待するのは、G7よりもむしろプーチンや習近平、そして金正恩だ。サーローさんらはこの3人に原爆の実態をみせて、核使用自粛を直接言うべきだ。G7に言う方が簡単で、メディアも報じてくれるからだろうか。

残念ながら世界の核の「現実」は、以下の通りだ。

① 露中北はますます核を増やす。英仏だけでなく米国もそれに備えて「増強」する方向性。少しは歴史を勉強すれば分かること。米を中心としたG5などは、基本方針でいえばだが、懸命に核軍縮に努力してきた。もちろん、日本の被ばく体験が元になっている。10発の核兵器でも相手を皆殺しできる。お互いに殲滅し合う。そうなら、100発は不要だろうという考えだ。その結果、米ソは核削減条約を結んだ。レーガン・ゴルバチョフに拍手だ。だが独裁者プーチンは今回一方的にその努力を無効にした。

さらに中国と北朝鮮は一方的に核を増強している。交渉も頓挫。核拡散防止条約もほぼ効果無し。もともと「自分らは核を持っていいが、お前らは持つな」という、誰が聞いても不平等な条約なので、なかなか巧くいかない。さらに日米などがどんな悪いこと、つまり彼らが脅威を感じるような刺激的なことをしたのか?なにもしていないと言える。そのため当然だが、中北の核などの軍備拡大に対抗するしかない。

韓国も北の脅威を受け、「自国で自国防衛」思想により、実現性はまずないが、独自核武装への支持が高まる。廃絶ではなく、拡散防止に必死になってきた米は、韓国の動きを抑えるのに必死だ。それもあり、日韓に「仲直りせよ」とかなりの圧力をかけ、その結果が出た。

②ウクライナに対するプーチンの侵略行為でも、いままでと基本的に核抑止に関する総論は不動だ。日本人ジャーナリスト柳澤秀夫氏は「米国がウクライナ戦争を煽っている」という「思い込み」を言っていたが、日本の国益を損なうとんでもない話だ。開戦後72時間とそれ以降からいままでの動きを詳細に見れば、それが事実でないことが理解できる。

同盟国ではないのに、ウクライナ人男女が血を流しつつ、必死で祖国を守っているのを知った。それに感動した米国(人)は、ウクライナ支援を実行中。しかし、露骨なウクライナ支援はプーチンを必要以上に刺激し、脅威と感じさせる。そうなると最後は、もともと通常兵器で劣るプーチンが核使用したくなる。だから最初から英米独仏勢力は、抑制的にウクライナ支援を継続している。そこでは明らかに核を怖がる抑止論が、機能している。

同時に米国など西側を刺激すると、まずあり得ない極論だが、西側による核使用につながる可能性があった。にも関わらずにプーチンがウクライナに侵攻したのは、核抑止が破綻したという論もある。本来は核兵器の存在が戦争回避になるはずだが実際に戦争が起きた、だから破綻したという論だ。しかし議論は必要だが、上記よりは説得力は弱いと思われる。

③ 今回のウクライナ戦争が始まる前に、「安全保障は保証する」という米英露の約束、ブタペスト合意があり、ウクライナやカザフスタンなどは核を手放した。だが約束は破られた。ウクライナや同じ当事国のカザフスタンやベラルーシに限らず世界中(日本も?)が、「核がないと侵略される」と思い込み、核拡散が広がる。だがウクライナ勝利なら、日本人が思い込んでいるほど世界に伝わっていないヒロシマ被ばく実相よりも、効果的に核拡散防止が実現する。だから日本はより積極的にウクライナ支援をするべきだ。

④ 5大保有国以外でも、特に北朝鮮、そして長年の天敵同志のインドとパキスタン(インドは対中国対策も)さらにイランがもうすぐ核を完成することもあり、イスラエルは絶対に放棄しない。国の存亡がかかっているため確実だ。米国も同じ。敵国が放棄しないのに、誰が自分で最初に放棄して裸になりますか?まずは米国がお手本を示せという無知がいる。既に人を殺していまでも出刃包丁を振り回しているヤクザ相手に、誰が自分の防衛策を放棄、無防備になりますか?自分は関係ない、人ごともいい加減にしてと言いたい。

日本人の多くは「9条」や「戦争しない国宣言」で、核はもちろん誰からも攻撃など受けないと思い込む。実際、他にも理由があるが、主要因は米国の核の傘に守られ誰からも攻撃を受けなかった。その結果70数年平和だった。だから自国防衛を真面目に考えていない。例えば日米軍事同盟が解消、米が核を放棄、その傘が無くなり、その結果なにが起き得るのか、全く考えない。日本が核ではなく、通常兵器でも焼野原になり、他国に占領されたら、誰が責任を取るのか? ノーベル賞に輝くサーローさんら、反核思想、廃絶だけを考えて、邁進する人々は、その責任が取れるのか?

⑤筆者は10ー20年くらい前に、ペリー、キッシンジャー、シュルツ, シュラシンジャー元国防長官、国務長官、安全保障特別補佐官、CIA担当者と長時間複数回対談した。シュラシンジャー、諜報官、補佐官らは反対意見だが、ペリー、キッシンジャー、シュルツ、ナン上院議員は「核廃絶」に旗を振っていた米実力者だ。

その時、筆者は「廃絶とか言ってもイスラエル、北朝鮮などなど、廃絶するとは思えないが、、」と責め立てた。みな「それでも諦めない」と言った。

しかしつい最近。ペリー元国防長官が言った。彼はブタペスト覚書でウクライナに核放棄させた功労者だ。

「”核なき世界”を話していた時、実現は難しいが可能なことであり、努力する価値があると思っていた。だが今日はその実現は不可能に思える。ウクラにおけるロシアの行動はその事を明確に示している。”核なき世界”について話していた時でさえ、その実現可能性が高かったわけではなく、どれだけ難しいかは認識していそた」。

あれだけ「それでも頑張る」と言っていたペリー長官が、いまや「不可能に思える」と明言した。これが現実だ。

⑥核廃絶は技術的にも不可能。人類の歴史をみれば分かる。一回生まれた兵器などの技術は、それに勝るものが登場しない限り、無くならない。筆者はプルトニウム発明(発見)したグレン・シーボーグ博士を母校のUCバークレー校で、長時間対談した。その時、同博士は核兵器は「予想以上の非人道的な兵器だ。しかし、一回生まれたものを消し去ることはできない」と言った。造語の「発明を取り消す」という意味の de inventionという言葉を使ったのが印象的だった。

ハンス・ベーテ博士

他にも筆者はハンス・ベーテ博士(写真)など、マンハッタン計画で原爆を作った科学者5人くらいと直接対談した。

べ―テ博士はエド・テーラー博士を除く他の開発者と同じ。ヒロシマとナガサキの結果をみて「反核」に転じたが、核兵器の数はいまは多過ぎるが、数十くらいなら必要と筆者に明言した。

基本的に皆シーボーグ博士と同じ。

「廃絶は無理、まずあり得ないことだが、各国が万が一にでも廃絶を決めても、原爆製造技術情報は、既に世界に拡散しており、ネット利用でテロリストなどが個人で作れる」。つまり完全に無くすことは不可能と言った。

日本人の多くは知らない。筆者は40年くらいワシントンを取材している。30年くらい前から、米国は日本にプルトニウムがあること。それを利用して原爆製造に走ることを懸念、警戒してきた。無知だった筆者は日本人は核アレルギーなので、原爆製造はあり得ない。なんでそんな心配するのか?と思っていたし、そうも言った。飛んでもない。ここ15年くらいますます確信するようになった。日本もこれから原爆製造国になる可能性がある。安全保障のプロ、米国は常にいろいろ考えている。自分も含めたトンボ日本人とは全く違う。

製造技術そのものはそんなに難しくない。だが、ウラン濃縮やプルトニウム入手は非常に難しい。日本に既にあるプルト利用で、原爆製造に走ることは十分可能。1年かからないでできるだろうと、米専門家から聞いた。いまこの瞬間も米側専門家は、常に日本のプルトを監視している。

⑦ 抑止力、自国防衛に使える大量殺戮兵器は3つ。米はそのうち2つ「生物」「化学」を放棄。「核」だけに依存する。

(現時点ではこの3つに代わる兵器は、存在しない。筆者は世界最大といわれた大規模爆風爆弾MOAB を直接取材した。アフガンで実際に使われたからだ。一方のロシアはその4倍の威力という FOABを開発したという。報道だけで、詳細の確認が取れていないが、かなりのものと聞いた。いずれにしても、この両者とも核の威力には及ばないのは間違いない)

露中はいまだに3つとも継続保有するので、米の核放棄は、日本の防衛もあり、絶対にない。

⑧ 他国が攻める大きな理由がなかったなど、要因の全てではないが、日本の平和は基本的に米の「核の傘」で守られている。だから過去70年くらい米国にお願いしている。基地問題も地位協定問題も、反米に傾く日本の世論を日本政府は基本的に抑えて来た。その一方で米国が廃絶に向けて動こうとした時、なにが起きたか、日本人は直視するべきだ。

例えばオバマ政権が核拡散を抑えようとやろうとしたこと。「先制不使用」宣言など、日本政府が米国政府と議会に対して、反対した。理由は「日本防衛力が弱まるから」だった。つまりいつも日本国民が理想論、綺麗ごとで信じている核拡散防止(核廃絶)を支持するかのようにみえるが、実は日本政府の行動はそれに逆行した。悲惨・廃絶思考だけで、思考停止の日本人の多くが知らないだけだ。

海外大手メデイアが報じているのに、つい最近のNHKスペシャルを除いて、日本のメデイアは殆ど報道しない。政権への忖度か。いずれにしても日本人が核問題を議論する時、大切なスタート地点として、このような「真実」を知るべきだ。

⑨ 筆者の父は陸軍将校で、ヒロシマ爆心地3キロで被ばくした。数え切れないくらいの重症者を看取り、死体を焼いた。殆どが「お水を一口」と言って逝ったという。人類史上最悪の「阿鼻叫喚」を体験し、その後父も白血病で死んだ。だが「原爆がなければ、日本は降伏せず”本土決戦” ”一億玉砕” で、間違いなく自分は死んでいた」と、原爆に一定の評価を与えた。

⑩ 原爆投下が必要だったか?否か?まずは米国の「投下理由」。よく言われて来た「日本を降伏させるため」。もう20年くらいになるか、一時期は米側の発表だが、「100万もの米将兵を救うため」が主流だった。これは当然ながら、数が誇張し過ぎだとして、日本側に攻撃された。筆者は当事者にも直接取材した。100万は確かに根拠がなく、大袈裟で不正確だ。たまにある米国人の大袈裟な表現だ。最悪のミスの1つである。

しかし、ポツダム宣言を受諾しなければ、米兵数千くらいだけでなく、日本軍兵士、東京大空襲でも、分かるように、一般市民も数千人が死んでいた可能性がある。原爆とソ連の裏切り侵攻がなければ半年くらいは戦争が続いていた可能性が高い。その間、どれだけの日本の民間人が、無差別爆撃やもしかすると毒ガスで死んでいたか。

筆者はネヴァダ州に残っている日本式木造家屋の立ち入り取材もした。これも複数回対談したロバート・マクナマラ元国防長官が、戦意を失わせ、降伏に導くために、実験用に実際に建築された木造家屋がどのようにしたら、火が回り易く、婦女子も含めて焼き払えるかを計算。戦後、日本政府から日米関係に寄与したとして最高の勲章をもらったルメイ将軍が、B29から焼夷弾を投下、日本各地の民間人の無差別殺りくを繰り返した。さらに米軍は本土決戦で、さらなる無差別殺りくにつながる毒ガス使用なども考慮していた。

「日本を降伏させるため」論が大きく変わったのが、20数年くらい前だ。1965年から同じような主張をしていたが、殆ど無視、脚光を浴びたのが90年代。ガー(アルペロヴィッツ博士Alperovitz)の「降伏に原爆は不要だった」という論が、米国研究者の多くが認めることになる。ガー博士は世界で一番米公文書を読んでいると言われ、筆者はワシントンの彼の自宅で4時間以上対談した。

ガー博士の主張は、米側の投下理由の一番は「ソ連への威嚇」。過去30年前くらいまで一番の理由と信じられていた「降伏させるため」は、実は2番めの理由だ。そして、「予算使い過ぎへの説明」「人種差別」「真珠湾への報復」「(ナガサキは)初めてのプルト二ウム原爆が爆発するかの実験」「放射能攻撃に関する人体実験」「バターン死の行進」「米海兵隊捕虜のペニスを切り落とし口に咥えさせて頭部を切り落とした」などなど小さな要因が多数ある。

だが、米側の投下理由より重要。一番大切な「第二次大戦が終わった」と同義の日本が「なぜどのようにポツダム宣言を受諾したのか?」つまり「日本が無条件降伏した」最大の理由は、まずは「ヒロシマ」そしてダメ押し、降伏を確定することになった「ソ連の裏切り侵攻」だ。ナガサキは不要だった。日本以外の世界の識者と話すと確認できる史実だ。

御前会議で降伏・抗戦半々だったが、最後は天皇のご裁断で決まる。8月10日の会議だった。ただ相変わらず世界を知らない甘い考え。天皇護持を条件にした。受け入れられるはずはない。強硬派バーンズによる拒否。全て諦めて8月14日に天皇ご聖断。8月15日天皇から国民に降伏が知らされた。理由は「原爆投下」だめ押しの「ソ連参戦」だった。

⑪ 日本人学者の1人は米国を以下のように批判する。トルーマン(黒幕バーンズ国務長官=投下に超積極的、投下のA級戦犯=筆者の補足意見)は、「ソ連への威嚇」にどうしても使用したかった。日本が降伏すれば当然使えない。だから日本に降伏させたなくなかった。その結果、「天皇制存続の保障」を認めてやれば、降伏したのに、ポツダム宣言草稿から皇室容認条項を削除、日本に降伏させないようにした。削除と同時に投下許可を出し、その数日後にポツダム宣言発出。つまり、投下を決めていた。だから米国は悪魔、謝罪しろという主張だ。

⑫ 違う。まず投下許可を既に出していても、日本が降伏決定すれば、当然ながら、すぐに投下中止できた。別にポツダム宣言発出前、最初に投下許可を出していても、全く問題ない。

さらに「天皇制存続の保障」条項。「もう二度と侵略をしないと世界が完全に納得すれば皇室護持を認める」という条件付きだ。

筆者はかなり直接取材したが、当時の米世論、連合国を知れば、世界の納得など「あり得ない」。だから議論はあったが、最終的な「削除」も、日本以外の世界では当たり前。

真珠湾攻撃、捕虜虐待、バターン死の行進、南京虐殺、731石井部隊の生体実験、化学兵器使用、カミカゼ、天皇利用の狂気の軍国主義などの理由、米など連合国は天皇をA級戦犯として扱うことができたし、そのつもりだった。日本にとっては最重要な皇室護持は、当時戦争している相手、連合国などは受け入れられることではない。当然各種議論の前提ではない。普通に考えても1930年代からの日本の行動をみれば、最初から免責など与えない。日本の皇室存続はあくまでも日本側の希望。実際にそうなったが、そんな虫がよい自分勝手な希望は通らない。

⑬ サイパン辺りで日本は敗戦を覚悟した。だが国民・国土より大切な天皇。情報戦にも負けて最初から可能性がゼロだったのに、天皇を守る「条件付き仲介」を、ソ連スターリンにお願いし続けた。しかし裏切られて侵攻されたことをみれば分かる。スターリンは、相手が悪過ぎた。ソ連は頼れないという一報まで欧州から入ったのに、諦めなかった。意味がないことに時間を費やし、降伏勧告を受け入れず、結局原爆を投下された。8月14日に最終受諾しなければ、多分半年くらいは延びて本土決戦、東京大空襲のような焼夷弾による無差別爆撃、毒ガス使用可能性、日本陸軍だけでなく、日本の民間人も多数の人間が死んでいた。それどころか北海道の半分かそれ以上が、ロシア領としていまに至った可能性もある。

一方の沖縄返還。日米の密約を暴いた時、筆者は返還の切っ掛けになったCIA文書を探し出した。沖縄の地元民が、本土復帰を望んでいるという報告だ。お人好しの米国は12000人くらいの米海兵隊が死んだ沖縄を返還した。米議会など米国内の強い反対を押し切った。繊維交渉とか幾つか理由があるが「民主主義」が大きな理由だ。あのまま米軍が沖縄に居座って占領を続けても、世界の世論は殆ど文句言わない。だがロシアはどうか。北方領土をみよ。ロシアが返還しますか?あり得ない。いまだに北海道の殆どがロシア領とか想像したくない。

米はソの参戦を最初は望んでいた。日本を降伏させるためネコの手も借りたかった。だが原爆が完成して、ソ連の参戦、参加が不要になった。スターリンが攻撃したらなにをやるか分からない。日本の半分が占領されるかもしれない。だからスターリンが関係する前に原爆利用で日本を降伏させた。米側の投下理由。一番大きなソ連への威嚇は、2番目の理由、日本を降伏させたかった。この2つは明確に分けられない。一部は重なり合っている。

原爆無しで降伏したか? 答えは「した」。だがその結果は「原爆あり」と比べて良かったのか?実際にそうなったが、原爆ありの8月14日終戦から多分半年先くらいに戦争終結になっただろう。その場合、本土決戦で日米双方の多数が死んでいた可能性がある。原爆投下があっても無くとも、スターリンは日ソ不可侵条約破って日本を侵攻していた。いまも昔も強い領土欲だけでなく、ヒットラーにやられた恨みを日本にぶつけた要素もある。原爆無し、つまり降伏がかなり遅れた場合、ほぼ間違いなく、スターリンは北海道を占拠していただろう。つまり原爆無しの降伏はありと比べて、より日本の国益を損なっていたといえる。日本人はすぐに米国の世論は、とかいう。それも大切だが、筆者がやってきたように、欧州、アジア諸国、中国、ロシアでも議論したらよい。米国だけでなく、「非米」勢力も含む世界の識者と話したら分かる。

⑭2022年9月。プーチンの演説。「これは孫とひ孫のための戦場だ。奴隷状態で魂を破壊する実験から彼らを守るためだ。思い出して欲しい。米国は世界で唯一2回も核兵器を使用、広島と長崎を壊滅させた国だ。そのような先例を作った」

これに対してウクライナ出身。ハーヴァード大上級研究員。ロシア・ウクライナなどの核兵器を研究するマリアナ・ブジェリン (Mariana Budjeryn) が述べた。

「プーチンは広島・長崎の件を持ち出した。とても気になる。前回の戦争で、核が使われたケースは、核を持たない日本に対するものだった。それは戦争の”早期終結”と”無条件降伏”を引き出すものだった。

ウクライナには独自の抑止力がないし、同盟国による抑止力もないのです」

日本に対する原爆使用により、徹底抗戦を主張し続ける日本から「無条件降伏」を引き出せたというのが日本以外の常識といえる。

⑮ヒロシマの原爆記念碑に刻まれている「安らかに眠って下さい 過ちは 繰返しませぬから」

その碑文の主語は何か。書いた被ばく者の雑賀教授自身や多くの人は「我々=人類の過ち」とかいう。違う、そのような解釈も可能だ。だが「人類」とか言って誤魔化すな。「過ち」の主語も誤魔化すな。当時の日本の戦争指導者を人類と置き換えるな。世界の識者と話せば分かる。

再発防止のために逃げないで史実を元に詰めた議論をするべき。安全保障を中心に日本は大体が「なあなあ」で終わらせる。議論を極限まで詰めない。「知恵を出し合って、話し合いで、、」こう言えば、一件落着。永遠にやり続けるのか。まず1945年の原爆投下責任は、米国(英加も)にある。日本や他国がやったことと同じように「国際法違反」「戦争犯罪」の側面もある。当然糾弾されるべき。

だがなぜ原爆が使用されたのか?その理由は?日本と米国など連合国の双方、なにがどこまで正当化できる?国際政治なので、元を辿れば非常に複雑で双方に言い分、お互いさまの面がある。

だが満州侵略から始まり、開戦前から勝てないと分かっていた戦争を真珠湾攻撃で始め、国民・国土より大切で重要な天皇を守るため、降伏しなかった当時の日本の指導者に、ほぼ全ての責任がある。自国が始めた侵略行為、さらに天皇を守るために降伏しなかった。日本が侵略行為を始めなければ原爆投下まで行かなかったと欧米だけでなく、世界の多くがそう思っている。自国の責任を棚に上げて米国を責めるやり方、そんな主張がどこまで通用するか、米国だけでなく、世界と議論するべき。

日本人の多くが、米国では「戦争を終わらせるために原爆を使用したと教えられている」と、あたかもそれが間違いのように思い込みで言う。違う。米国以外の世界に聞いたら良い。殆ど全てが「日本が自ら侵略戦争を始めて、天皇を守るため降伏しなかったので、原爆が使用され、日本が降伏して、第二次大戦が終わった」とする。「和平の道を探していたボロボロの日本に、必要もない原爆を落とした悪魔の米国」という日本の考えを支持しないことが分かる。

⑯ 今回のサミットでも再度出た。米国は謝罪しないのか?上記が米国だけでなく日本以外の常識。謝罪はあり得ない。外交音痴で全てを首席補佐官にお任せだったオバマ。核拡散防止が大きな理由で、目標として廃絶を言った。その流れでヒロシマまで来た。

日本の自己責任、日本が始めた侵略戦争が切っ掛けだと分かっていたはずの安倍元総理。代わりに真珠湾に行くことを交換条件にした。だがオバマは重要な本館で展示を見ずに、形式だけ形作りのため、ロビーで用意された数点を10分だけみた。

今回その「オバマ越え」を岸田総理は狙った。バイデンがなにを見たかは非公開。史実を直視しない日本人が望む身勝手な「後悔」「懺悔」「謝罪」などを期待しても、廃絶をいうオバマでさえも、100%あり得ない。みんな史実を知っている。あくまでも、自分で戦争を始めただけでなく、最後まで無条件降伏を受け入れなかったため、原爆を投下された日本の責任。米国民だけではない、親米だけでなく、非米国にも聞いたらよい。当事者の日米対立にしないで、原爆使用に関して、第三者の世界各国がどうみて、考えているか、少し事実を直視するべき。

⑰ G7の献花は感動した。「慰霊の念」は、間違いなく世界中誰でも持つが、圧巻だった。ここは岸田総理の勝利。ゼレンスキー大統領が一番動かされた展示物は、銀行前階段に残る「人影の石」。あっという間に熱線で人間が黒い染みのような影だけ残して消えた。他の兵器ではまずあり得ない。筆者も同じような感情を持った。

ここでも重要なこと。ゼレンスキー大統領のコメントから感じたこと。彼は原爆のことは分かっていたし、近い将来、原発への攻撃、プーチンによる小型核使用もあり得るが、現時点では、ヒロシマの原爆と通常兵器使用によるウクライナ国内の被害を重ね合わせた。つまり彼にとって「原爆だから・・」という考えは、希薄だったように思えた。

⑱昔、アゴラに書いた。河野前統合幕僚長の発言だ。

「核抑止に関する協議には自分は参画したことはありません。ただやっているとは思います。(でも河野さんトップだったのですね?)私は軍人です。(米側とは)軍人同士。核抑止は政治ですから。政治の了解があれば、我々は具体的に決めます。だが米軍と核の抑止に関して話したことは一切ありません」https://agora-web.jp/archives/2055814.html

現在の自衛隊幹部も、軍人として最低限のことはご存じだろうが、有事で米が在日米軍基地も関係する「核使用」を決断する時、自衛隊が迅速に動けないのは、ほぼ間違いないだろう。受け身だけで、なにもしないとしたら、そんな時代は終わったと申し上げたい。

さらに、佐藤行雄・元国連大使は、2017年に著した「差し掛けられた傘」で、「核戦略問題にほとんど口出ししなかった日本が、具体的な提案をすれば、米国は今後、日本をもっと真剣に扱うようになると思った」と回想する。

筆者も過去40年くらい、日米関係、米軍による日本への「核の持ち込み」事実を、直接取材してきた。

多くの米側関係者が、日本人には核はタブー。有事のことなど殆ど考えていないし、ましてや核の運用などオフレコでもまず話せないと言う。

もういい加減、廃絶の夢だけみて、現実と全く違う観念論だけの状態を終わらせる時期が来た。向こう2年くらいまではほぼゼロだが、それ以降、1割くらいの可能性で台湾有事があり得るのだから。

原爆は絶対悪ではなく「必要悪」というのが世界の常識。現実を直視して動くべきだ。「反論」「反証」を激しく期待する。