日本でキリスト教信者の数が増加した。これは文化庁の宗教年鑑「2022年度年次報告書」によるものだ。データーは2021年の宗教界からの情報に基づく。統計によると、日本ではキリスト教会だけで約5万2300人の新規信者が増えている。この結果、日本でのキリスト信者数は196万7584人となる。ただし、日本のキリスト教信者数は総人口のわずか1%にも満たない。その3分の1はカトリック教徒だ。バチカン・ニュースが5月16日報じた。
へえー、日本でキリスト教信者が増えたのか、という新鮮な驚きを感じた。キリスト教文化圏に属する欧州に住んでいると、毎年「教会脱会者が増加」、「牧会する聖職者もいない教区が出てきた」といった類のニュースが多いので、日本でキリスト教信者の人口増加はやはり驚きだ。日本では過去、宗教一般に対して無関心が増えていると聞いていたので、なおさら、その感が強い。
バチカン・ニュースによると、日本のキリスト教徒の大多数はカトリック教会に属しているが、カトリック教会の信者数は増加せず、カトリック教会は2020年以来約4000人の信者を失い、現在信者は43万1100人だという。カトリック教会の信者数が減少したのは、社会の世俗化と共に、教会聖職者の未成年者への性的虐待事件の多発問題の影響があることは間違いない。キリスト信者数の増加は主にプロテスタント教会系という。
日本では神道信者か仏教徒がメインだが、統計によるとその数も減少傾向にあるという。一方、日本は「宗教の百貨店」と呼ばれるように、多種多様の宗教が存在し、多くの国民は複数の宗教に属している(日本では、信者総数は日本の人口を上回る)。
どうして日本でキリスト教信者人口が増えたのか、という興味深い問いには残念ながら欧州に住んでいる当方は答えられない。日本の宗教学者が答えるべきテーマだ。バチカンによれば、毎年、世界のカトリック信者数は微増だが増加している。2019年で13億4400万人だ。アジア・アフリカ諸国で信者が増えている一方、欧州では減少傾向が続く。
欧州の代表的なカトリック教国のオーストリアではあと数年で信者数は人口の50%を下回ると予想されている。当方が40年前にオーストリアに初めて来たとき、80%以上の国民が信者だった。信者数減少の理由は、聖職者の性的スキャンダル、それに伴い教会や聖職者への信頼感が失われてきたからだ。
ちなみに、カトリック教会の支援団体の連合体である「国際カリタス」は13日、ローマで開催している第22回総会で、東京大司教区の菊地功大司教を第13代総裁に選出した。ローマ・カトリック教会の国際組織のトップに日本人聖職者が選ばれたのは初めて。日本のカトリック教会にとって朗報だろう。
参考までに、欧州では信者数だけではなく、修道院の数も減少してきた。例えば、ドイツの修道院の数は過去10年間で大幅に減少した。ドイツの修道院院長会議(DOK)が5月26日発表したところによると、女子修道院の数は2012年の1627件から2022年には964件に、男子修道院数は461件から385件にそれぞれ減少している。
DOK(会長はフランシスコ会副修道士アンドレアス・ムルク)によると、修道院の居住地には、100人以上の修道女や修道者がいる大規模な修道院から、教団のメンバーが2~3人しかいない小さなコミュニティまで、さまざまだという。
修道院のメンバー数は2022年末現在で1万4302人で、修道女は1万0953人、修道僧は3349人だ。特に、修道女の減少は急激で、過去20年間で大幅に減少した。2002年には、その数はまだ2万8973人だった。ドイツの修道女の約82%(8975人)は65歳以上で、それ以下の年齢層は13%(1422人)に過ぎない。
修道院が過去、果たした役割は大きい。社会から隔離された修道院で瞑想しながら、神への信仰を深める一方、多くの修道僧や修道女は社会的奉仕活動、医療活動を行ってきたことは周知の事実だ。現在のローマ法王フランシスコもイエズス会出身者であり、修道院生活を送ってきた高位聖職者は多い。前法王べネディクト16世は2010年2月2日、「僧職に奉じた人生の日」への記念礼拝の中で、「修道院生活の意義はカトリック教会にとって大きい。修道僧や修道女のいない世界はそれだけ(霊的)貧困となる。彼らは教会と世界にとって価値ある贈物だ」と強調し、修道僧や修道女の献身的な職務に感謝している(「修道院・出家時代は終わった」2013年11月5日参考)
世界的に毎年3000人以上の修道僧、修道女が修道生活から離れていくが、修道院離れの原因として「修道院システムが迅速化したインターネット時代にマッチできなくなってきたからだ」といわれる。当方は21世紀の現代、出家時代は終り、修道院制度は幕を閉じ、在家信仰、家庭教会が主流になっていくと予想している。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年5月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。