ロシアへ移民のキューバ人もウクライナ戦争に志願

ロシア軍に入隊すれば給与が支給され、市民権が取得できる

5月24日付電子紙「ディアリオ・デ・クバ」と他数紙はウクライナ戦争にキューバからロシアへ移民したキューバ人がロシア軍に志願兵として入隊していることを報じた。その背後には入隊すればロシア市民権の取得と報酬が受けれるということが約束されているからだ。

因みに、人口1100万人のキューバを出国した移民は2020年の統計だと175万7000人。その内の米国への移民が一番多く、137万6000人。その次がスペインで16万2000人となっている。

同年4月29日付「エル・パイス」がロシアへ毎年およそ2万5000人が観光者として入国していると報じている。

更に同紙は以下のようなことを報じている。キューバ人はロシアにはビザなしで入国できて90日滞在できることになっている。しかし、本当の入国の目的は仕事に就くためである。その前に、ロシアに入国するために航空券と入国の為の必要書類を入手するためにマフィアにひとりあたり5000-7000ドルを払うのが相場となっているという。更に、その書類でスペインやイタリアまで行けるとされているが、実際にはロシアはシェンゲン協定には加盟していないから行けない。

仕方なくロシアに留まる。仕事に就くのは容易ではない。また働いても給与の支給を受けれる保証はない。仮に給与の支給を受けても月給はユーロにしておよそ300ユーロだ。しかし、その職場に就けるのも仲介業者に3000ルーブル(凡そ37ユーロ)を支払うことになっているという。国の家族に仕送りをするのが目的で移民して来たが、逆に生活苦で資金支援を国の家族に頼まねばならない場合もあるという。

このような事情下にあるキューバ移民にとって稼げる手段があればそれに飛びつくというのが実情だ。

既にウクライナへ450名以上のキューバ志願兵が向かった

上述キューバ電子紙によると、5月16日にプーチン大統領はロシア軍に入隊してウクライナ戦争で戦う志願兵にはロシア市民権を付与するという特例に署名した。この市民権は志願兵の両親さらに子息も含まれるというものだ。報酬は19万5000ルーブル(2420ドル)。移民でリャザン州に在住している者は追加で20万ルーブル(2480ドル)が加算されるとしている。

生活苦にあるキューバ移民にとっては絶好の機会である。実際、今年に入って450名以上のキューバ人が入隊したそうだ。しかし、軍事専門家の間では十分な軍事訓練も積んでいない者がウクライナ軍と戦うのはあたかも人肉の砲弾になるだけだと指摘している。

志願兵となって報酬を貰える保障はあるが、戦場で死ぬことも可能性としてある。しかし、彼らにとって、稼げるということと、家族も市民権を取得できるとということで自らを犠牲にする気持ちもあってのことであろう。

カストロ兄弟によるキューバ革命以後、それまで存在していた産業は国営化して発展する産業はなくなり、官僚ばかり増えた。そして最初はソ連に寄生虫のごとく依存。ソ連が崩壊すると、キューバは強度の経済後退を余儀なくさせられた。

その後、台頭するチャベス大統領のベネズエラに依存して経済を支えた。そして、ベネズエラの経済が崩壊する中で耐え忍んでいるのが現在のキューバである。その影響で国内の食糧から始まって全ての物資そして資金が不足している。それを逃れるべく毎年のように多くの市民がキューバを去っているのである。