ロシアの軍用コンポーネント買い戻しと、インド、中国などからの迂回輸入の可能性

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ロシア、兵器部品「買い戻し」 ミャンマー・インドから 旧型戦車・ミサイル改良の目的か、日経調査

ロシア、戦車・ミサイル部品「買い戻し」 ミャンマー・インドから 旧型戦車・ミサイル改良の目的か、日経調査 - 日本経済新聞
ロシアが軍事品をミャンマーやインドから逆輸入していることが日本経済新聞の調べでわかった。ウクライナ侵攻以降の通関データを分析したところ、過去に輸出した自国製の戦車・ミサイルの部品を改めて購入していた。ロシアは戦力を急速に消耗している。在庫の旧型兵器を改良して戦場に投入するため、軍事的に関係の深い国の協力を得ている可能性...

ロシアが輸出した自国兵器のコンポーネントを買い戻ししているという話です。後自国自国製品に搭載した西側製コンポーネントもという話も紹介されています。

ロシア軍の戦車を生産するウラルワゴンザボードは22年12月9日、約2400万ドル(33億円)で軍事品を輸入した。取引相手はミャンマー陸軍で、ウラルワゴンザボード製と記載されていた。

品目(HS)コードから輸入品は戦車に搭載する照準望遠鏡6775台とテレビカメラ200台と推定される。陸上自衛隊OBで戦車開発にも携わった赤谷信之氏は「標的までの距離を測定し照準を定めるための光学機器などだろう」とみる。

シンクタンク・国際危機グループのロシア担当アナリスト、オレグ・イグナトフ氏は「光学機器の更新などで近代化すれば(在庫の)旧式戦車の運用も可能になる」と指摘する。

過去の貿易データをみるとロシアの光学機器は西側の技術を活用しており、制裁で部品の調達が難しくなっていることが考えられる。

通関データには「苦情申し立てに基づく輸入」との記載もあった。ウラルワゴンザボードは19年にミャンマー陸軍に軍事品を輸出しており、ミャンマー側が欠陥品を返品した可能性もある。

オランダ拠点の軍事情報解析サイトOryxのヤクーブ・ヤノフスキー氏も「返品にしては数量が多すぎる」とみる。

ミサイルを製造するロシア機械工学設計局(KBM)は22年8月と11月、インド国防省から地対空ミサイル用の暗視装置の部品を計6個、約15万ドルで輸入した。

輸出品を買い戻せば、休眠状態にある在庫の装備を更新して戦地に投入できる。

これは戦争で消耗した戦車や装甲車輌、その他の装備の補充分の生産、更に損傷した兵器の修理などでも必要です。特に光学、電子サイトはもっとも損傷が激しく、量産も効きにくいコンポーネントです。

インドに輸出、あるいは現地生産されているT-90シリーズの戦車にはタレス製のサーマルイメージャーが使用されていましたが、その後ロシアと西側の関係悪化に伴い、供給が止められました。これらの製品もロシアに「転売」された可能性があります。

それだけではなく、インドが使用している国産兵器のコンポーネント、例えばアージュン戦車などのロシア、フランス、イスラエル製のコンポーネントを取り外してロシアに輸出してシレッと、またフランスやイスラエルから輸入すれば問題はありません。これらの供給国も実態は分かっているでしょうが見てみぬふりをするでしょう。バレても知りませんでしたとシラを着ればいいわけです。

あとほぼ真っ黒な供給先は中国と迂回国のスーダンです。スーダンはロシアオリジン含む、中国製の兵器を製造していますが、工業レベルからして殆アッセンブリー生産でしょう。

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スーダン向けに中国がコンポーネントを輸出してそれがロシアに輸出されても、知りませんでした、とシラを切れます。

IDEXやAADなどの見本市でもスーダンのブースには不自然なぐらい中国人が出入りしていません。それはこういうスーダンを迂回ルートに使う気が満々だったからでしょう。

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。

記者クラブの防衛担当記者に軍事報道はできない 大臣発言を検証もせずに報じる新聞メディア


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2023年6月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。