少子化防止の決め手(屋山 太郎)

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会長・政治評論家 屋山 太郎

日本の少子化は亡国の兆しを見せている。このまま行けば人口が回復する見込みはない。かといって人口減を移民で埋めても亡国はとまらない。

少子化対策は次の二手につきる。

1つは子育ての無償化である。子供を育てるのに一銭もかからないとわかれば子供は増える。現在1人の子持ちでも、大抵の夫婦は本当は2人、3人と欲しかったが経済的に無理と判断したのが大勢だ。岸田首相は年に3兆5千億円の財源が必要だというが、党内からは既に多すぎるとの反論もある。しかし現実の統計と比べると、最上位の収入家庭でも塾代は年間12.5万円もする。これは授業料を払ったうえで、余計に費やさざるを得ない額だ。

50年ほど前、スイスは小・中学校無償を始めた。その頃私はスイスに赴任して子供を2人小学校に入れた。「無償というのは本当のタダ」で、工作の材料まで支給されたのに驚いた。当時の日本も「無償」を標榜していたが、補習教材は全部家庭が支払っていた。当時の日本教育現場で「本物の無償化」を叫ぶものもいたが、財源問題で常時、立ち消えた。

岸田提案によると各子供に対して支給を上げていって、1人月3万円まで支給するというのである。スイスの場合、学校が終わって塾に通うという習慣もない。子供の教育費がタダだとわかるから、親の負担は少なくなる。前回少子化が1.6になった際、政府が支出を約束したおかげで、人口下落傾向がとまったが、政策を皆が信じなくて1年しかもたなかった。相変わらず少子化の道を辿っている。当年だけの支給補助で国民が国の政策を信用するわけがない。以後減り続けて、現在1.26。この減り方は7年連続で、政治の責任は明らかだ。

以上の支援を決めたうえで政府は「将来不動」を約束し、大学生には卒業後返済の資金を貸すという第2の政策を打ち出すべきだ。就職する女子は30歳前後で第一子を生むのが習性となっているが、30歳で子供を生む悪習を経営者は改めなければならない。

たまたま私のかかっている医療事業所には8~9人の女性看護師やリハビリ師がいる。この子らが20歳すぎると職場転換させ、職場労働が変わる。これは所長の判断で決めているようだが、女子は誰でも同じ経歴をとる。全女子が22歳程度で出産。既に2人目を身籠った人もいる。全経営者がこういう発想だと、女子を引きとめて置くためには、この配慮が必要になる。女子がそういう職場を選ぶようになる。全国民が社会的習慣を変えるようになれば人口は増える。

人口減少は政府だけの責任ではない。何十年も前から十分に余見できた。財政当局が健全財政に固執するから、政策が生まれてこなかった。高校生まで教育経費がかからない、となれば、子供好きは2人も3人も生むようになるだろう。人口が増えれば、増えた人達が稼ぐようになるだろう。移民受け入れは必要だが、人口が減る分をその人達で埋め合わせようとの考え方は大間違いだ。

政府は骨太の方針で①女性の役員を30年に30%に増加、②男性の育休の制度化を求めている。

屋山 太郎(ややま たろう)
1932(昭和7)年、福岡県生まれ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、解説委員兼編集委員などを歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。著書に『安倍外交で日本は強くなる』など多数


編集部より:この記事は一般社団法人 日本戦略研究フォーラム 2023年6月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は 日本戦略研究フォーラム公式サイトをご覧ください。