お金持ちであり続ける難しさ

黒坂岳央です。

「お金持ちの定義」とはなんだろうか?これは聞く人によって、答えは結構左右される問いかもしれない。

「月額の収入が100万円以上をキープ」
「金融資産が1億円以上」
「不動産投資や配当金など安定的な不労所得だけで生活できる状態」

など様々だろう。あくまで個人的には「お金持ちとは、お金を持ち続ける力の持ち主」という定義が一番しっくり来ると思っている。

筆者はマネーリテラシーを高めるため努力をする過程で興味深い事実にぶつかった。それは「一度お金持ちになった人がお金持ち状態をキープできず転落するケースは結構多い」ということだ。これはなぜなのか?本稿で論考してみたい。

せっかく蓄財した資産を失う人たち

世の中には起業したビジネスや、金融投資で蓄財することで比較的短期間で大きく資産を蓄える人がいる。だが、せっかく成功して資産を蓄えてもその後、自らの失敗でその資産を失う人は意外と少なくない。

理由は様々あるが、大きく2つに大別できる。1つは生活レベルの引き上げ、もう1つは投資の失敗である。前者について言えば時代の潮流にのって成功を収めた人が、一時的なバブルのような状態を「自分の実力」と考えてしまい、現在の成功が永続するかのような前提で生活レベルをそこにあわせてしまい、結果資産を失うというケースである。

パッと頭に思い浮かぶだけでもこれは3〜4人の知人の実例がすぐに出てくるほど多く、賃料や車などの固定費を身の丈に合わない金額まで引き上げたり、後は異性関係だ。良くも悪くも成功も失敗もずっと続くわけではない砂上の楼閣に過ぎない。一時的なボーナスタイムのような状態を基準に人生設計を考えると、せっかく得た資金を溶かしてしまう。特に短期間で得た資産ほど短期間でパッと使ってしまいがちだろう。

さらに投資について言えば、事業投資と金融や不動産などの資産運用の失敗もある。事業拡大を考えて、多角化経営や広告などの事業投資をするも、空振りで失敗してしまうケースだ。実例をあげると2010年頃に話題になった話に白いたい焼きブームがある。勢いに乗って事業投資をするも、いざブームが去った後は投資額を回収できず大変な損失を出してしまったという話だ。

また、ビジネスで得たお金を元手に資産運用をするも、ビジネスと資産運用では成功に必要な要素がまったく異なるため、ビジネスが得意な経営者でも、自分の力を過信してビジネスで成功する感覚で取り組んだ結果、資産運用では派手に失敗してしまうことは少なくない。

そして資産運用で収益をあげる専業トレーダーなどの投資家でも、資産運用に失敗することもある。相場環境は自分の力ではどうやってもコントロールできない。難しい相場では手を出さず、収益を上げやすい相場のタイミングが来るまで待つのがセオリーである。だが、そのタイミングを待つ胆力が足りない、もしくは見誤って下手に手を出すことで火傷するというケースである。

こうした事情により、せっかく蓄財した資産をミスハンドリングで失ってしまうということは起こり得るのだ。

なぜリスクを取りに行くのか?

上述した内容はあまり一般的に理解されにくいかもしれない。昔、自分自身も「なぜせっかく努力して培った資産をリスクにさらしてしまうのか?堅実に貯金し続ければ、自らいたずらに減らしてしまうことはないのに」と思っていた時期があった。

しかし、今ならこの気持ちはよく理解できる。まず資産規模が大きくなると、ずっと使わない資金をただ眠らせておくことが機会ロスだと感じられるようになっていく。もしもキャッシュを上手にハンドリングして、事業投資をしたり、自社ブランディングアップをしたり、資産運用をすれば大きく増やすことができる。

また、インフレ負けや通貨安で実質的に資産が目減りし続ける状況に、苦痛を覚えるようになっていく。支払う税金の規模も大きくなれば、「キャッシュを有効活用したい」という気持ちも出てくる。資産規模が膨らむことで、この感覚はより強くなる。なんとかして資産の自然減を食い止め、眠っている資金を有効活用したい。この気持ちが自分の中の世界観をリスク・オンに変えるという流れである。

日本経済はこれまでデフレが続いた状況と異なり、これからはインフレが継続する想定をしなければいけないだろう。そうなるとキャッシュを有効活用したい気持ちは、これまで以上に顕著になる。ミスハンドリングをすると資金を溶かしてしまうので、現行のビジネスをオペレーションすることに加え、事業投資や資産運用の力も求められるようになっていく。

以上の状況を総合的に俯瞰すると今後はますます、お金を持ち続けることは難しくなると思っている。

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