戦略は慎重に、行動は大胆に

黒坂岳央です。

日本人はどちらかといえば、慎重派で行動力がないという人が多いのではないだろうか。日本人はセロトニントランスポーター遺伝子SS型と呼ばれる不安遺伝子を持つ人が65%と他国に比べて多く、それが慎重な性格を作り出しているとする説もある。

個人的におすすめしたいのが、戦略は慎重に作り、だが行動する時は思い切って大胆にした方が良いということである。これまで勉強や仕事で挑戦をする時はこのスタンスでうまくいくことが多かった。具体例を交えて私見を述べたい。

am Edwards/IStock

行動はもっと大胆に

「石橋を叩いて渡る」という言葉があるが、同時に「叩きすぎて橋が壊れる」へと続くケースを見ることがある。慎重に計画を練るが、行動も慎重になりすぎて結局不発に終わってしまうという話である。

しかし、計画や戦略を練ることが終わったら思い切って行動する方が良い。行動しなければ、それまで戦略を練ったことが全てムダになってしまう。

戦略とは、端的にいえばシミュレーションすることであり、想定可能なシミュレーションを終えたら後は改善しながら行動を重ねていくしかない。それでも尚、うまくいかない事はあると思うがその失敗経験は次に活きる。次回のシミュレーションでは前回の失敗経験も含めて、より高次な戦略を練ることができる。

それを積み重ねていく先に、「限界まで戦略をしっかり練ったら、後は行動して答え合わせ」という大胆な行動に移る人格を育てることができる。理想はこうであろう。

良くも悪くもやってみないと分からない

戦略を考えた上で行動してみると、その結果が良いか悪いかはやってみないとわからないのだ。

自分の体験談でいうと、会社員として日系企業で財務経理の仕事をしていた時期、そろそろ転職をしようと考えた。労働市場の転職環境を把握した上で戦略を練り、「現在の年収を維持して、よりキャリアアップにつながる仕事の内容へ。そして残業は少なめで高い労働生産性の求められる職場へいこう」という着地点を考えた。

現職の仕事を抱えながらの転職活動はかなり骨を折ったが、有給休暇を活用しながら面接を続けて3ヶ月目で理想の職場が見つかった。転職については妻に相談しながら進めていたのだが、「これまでの面接先の条件を見てみたら、もっと上を目指せるはず。ここで止まらずさらに上へ」とアドバイスをしてくれ、それを真に受けてさらに転職活動を続けた。

最後の方は「もうこれ以上は高望みせず、最初に決めた戦略の目標を達成できるところでいいのでは?」と活動にも疲れが見えてきて、このあたりで打ち止めにしようと考えていたタイミングくらいで転職エージェントからのおすすめがあった。それはこれまでで一番いい条件の転職先だった。結論的には妻の提案通り、簡単に妥協せず最高に理想的な転職になったのである。

この経験から学んだことは、行動を積み重ねていくと当初持っていた戦略以上に良い結果を引き寄せることはあり得るということだ。「おそらくこのくらいの水準だろう」という見積もりの着地点は良く悪くも正しいかどうかは分からない。実際に行動して活動する中で「いやもっと上を目指せる」という上方修正もあるのだ(もちろんその逆もありえる)。

慎重に戦略を練ったら、その後は思い切って大胆に行動するべきである。

現在は独立している立場だが、脱サラする時はじっくり2年間かけて週末起業で売上や取引先を作り、入念に慎重にした。「会社員の時より収入は下がってもいいから、自分のビジネスで食べていければ御の字というつもりで謙虚にやろう」と思っていたが、ありがたいことに想定よりもうまくいっている。

一生懸命、戦略を練っていた時の頭の中からは出てこない結果を享受できているのは、思い切って大胆に行動したからだと思っている。人生は一度きり。時にはリスクを取って大胆に行動すると思わぬリターンが返ってくるものなのだ。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。