ラテンアメリカにおける米国の覇権を侵食している中国

EL PAÍSより

反米政権が中国のラテンアメリカ進出を容易にした

ラテンアメリカにおいて現在活躍している中国企業は2700社以上あるという。エネルギー、インフラさらに宇宙産業などで中国は積極的に進出している。

それを支援すべく、習主席は現在までこの地域への訪問は13回。また中国語の普及と中国礼賛を奨励する孔子学院は23ヶ国に進出している。コロナのワクチン外交も積極的に展開させた。

そもそも中国がラテンアメリカ進出への足場を築いたのは、2000年代の当初ラテンアメリカで反米政権が誕生したことである。ベネズエラ、ブラジル、アルゼンチン、ボリビアと言った国々だ。それが中国の進出を容易にした。

当初、中国の投資の多くは自然資源の開発であった。資源開発をしたくても資金不足で開発できないラテンアメリカの国々に資金を提供したのである。その後、中国はインフラの開発支援に向かうのである。

世銀やIMFは融資する際に返済などに厳しい条件をつけたのに対し、中国はその面では寛容であった。その代りに、特にインフラの開発には中国企業を進出させ、その建設の為の労働には中国人も現地人と同様に参加させた。

そして今、ラテンアメリカで左派政権が軒並み誕生していることは、この地域におけるさらなる影響力を中国は発揮することになっている。特にその中で、ラテンアメリカで最大の経済大国ブラジルでルラ氏が大統領に復帰したことは中国にとって実に都合のよい出来事であった。

中国のラテンアメリカに入る玄関ブラジル

中国はブラジルに2007年から2021年の間に200以上のプロジェクトを推進させ、その投資額は700億ドル。2021年だけを見ると、28のプロジェクトをスタートさせ、その金額は59億ドル。(2022年11月30日付「DFSUD」から引用)。

それに続いてペルーに中国の資金が投入されている。現在まで170社以上の中国企業が進出し、その投資額は300億ドル。

そしてチリが3番目に中国の投資が積極的に見られる国である。その対象の多くが資源の開発である。更に。メキシコそしてコロンビアも中国企業がプロジェクトに積極的に取り組んでいる。

そしてアルゼンチンがそれに続くのであるが、同国の経済の低迷と高いインフレが投資の妨げになっている。2021年の中国の投資額は200億ドルであった。

そうは言ってもアルゼンチンは地政学的に最も魅力のある国で、中国は同国に公には宇宙開発センターを設置しており、将来的には中国の軍港を築くことができるようにアルゼンチン政府に少しづつ圧力をかけている。

仮に、軍港を築くようなことになれば、南極へのアクセスも容易となる。勿論、それには米国が反対している。今年は米国の南方軍初の女性司令官ローラ・J・リチャードソン陸軍大将がアルゼンチンを2回訪問している。

米国がラテンアメリカを支配するのに1948年に創設した米州機構(OAS)に対抗して誕生した現在ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)を中国は基盤にラテンアメリカにおける政治的勢力の拡大を図っている。