「世田谷モデル」総括に見る保坂区長の歴史修正主義

世田谷区議会第2回定例会では、「世田谷モデル」の総括についても質した。

区は先日、「新型コロナウイルス感染症 第8波の検証」と称する報告書をまとめた。これを見ると、介護事業所や学校で抗原定性検査キットをバラ撒いた結果、陽性者がどれだけ見つかったのか、という数字すら出さず、相変わらず全体的に高評価を下すなど自画自賛の報告になっている。

保坂区長が始めた「世田谷モデル」は、もはや雲散霧消してしまい、今となっては総額9億円という多額の血税をムダに使ったという事実だけが残っている。

そこで、ひえしまは、天下の愚策である「世田谷モデル」について総括するよう迫った。これについて保坂区長は、役人も驚嘆するほどの“異例”の長文をもってして答弁したのだが、しかし、その中身たるや、すっかりおかしなストーリーに作り替えられていたのである(答弁動画はコチラ 20:28から)。

細かい指摘は紙幅に限りがあるのでやめるが、早期にPCR検査の開始に取り組んだなどと答弁しているが、そもそも、新型コロナが押し寄せた当初、保坂区長は医師会に抗議されるほどに消極的だったのである(コチラ参照)。

さらには、はじめから高齢者施設にターゲットを絞って、「世田谷モデル」をスタートさせたと語っているが、何をかいわんや、92万の世田谷区民を対象に、「いつでも誰でも何度でも」とのべつ幕なしに検査するかのように、テレビでぶち上げていたではないか。

今年3月、(財)日本公衆衛生協会がまとめた「新型コロナウイルス感染症対応記録」には、下記のように「世田谷モデル」が”失敗例”として紹介されている。

(前略)当初対象とされた90万区民は、介護施設職員ら約2万3,000人に大幅に縮小され、しかも、陽性と判明したのはわずか25人であった。これは、事前の計算から十分に予測できたことであり、予算が4億円超と聞けば、区長の事後のコメント「施設関係者の感染を減らし、医療の逼迫を抑える効果はあった」を肯定的に受け取るのは不可能だ。(p264)

保坂区長が科学者の言に耳を貸さないのは昔からのことだが、何しろ自身が嫌っているはずの、事実を歪曲する“歴史修正主義”を地で行っているのだから、リベラルな支持者も驚きなのではないか。

議会では、提出議案の文言の誤りを連発するなど、世田谷区政は区長の専横と役人の弛みが目立ってきた。引き続き、厳しく監視していく。