「タワマン節税封じ込め」からわかるこれからの日本人に必要なこと

本日の日本経済新聞一面トップは「マンション節税防止へ 相続税、高層階の負担増」でした(図表を元記事で見る)。

タワーマンションの高層階を購入して相続時の不動産の評価額を引き下げるいわゆる「タワマン節税」を封じ込めるのが目的の改正です。導入されれば、相続税の課税評価額と実勢価格と乖離している場合、相続税評価額を是正する課税方法が来年から導入されると伝えられています。

具体的には、乖離幅が1.67倍以上の場合、0.6を乗じた計算式によって相続税評価額と実勢価格の差を是正するとしています。

つまり、相続税課税評価額が実勢価格に対して異常に低い不動産の場合、実勢価格の60%を課税対象額にするというルールです。

もし、本当にこのような相続税の新しい計算方法が導入されるとすれば、不動産の節税メリットが小さくなることを意味します。

といっても不動産価格への影響は軽微だと思います。そもそも、相続税の節税目的で不動産を購入している人の比率はそれほど高くはありません。また、ルールが明確化されることにより、不動産に対する課税の曖昧さがなくなるメリットもあり、金融資産で100%課税対象されるより有利であることには変わらないからです。

それよりも今回の報道から感じるべきことは、日本国内では個人に対する課税がこれからさらに厳しくなっていくということです。

今回の相続税だけではなく、所得税、住民税といった税金も実質的な負担を高める税制改悪が進められると予想します。また税金以外の社会保険料、健康保険料等の負担増も避けられないでしょう。

取れるところから取ろうというスタンスです。

負担強化の流れが予想される一方で、来年からは新しいNISAが導入され、非課税優遇枠が広がります。

年間120万円だった一般NISAは年間360万円に拡大します。最大で1800万円までの非課税枠を活用できるのです。

課税強化と税制優遇。税金に対する知識と正しい理解がますます重要になっていくことだけは確かです。知識や情報を持つ人と持たない人の格差は、ますます広がる一方でしょう。

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編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2023年6月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。