ハイブリッドHC85系車両など

石破茂です。

2022年度の国の一般会計の税収は2021年度より約4兆円増えて71兆円強となり、3年連続で過去最高を更新することが明らかになりました。

基幹三税と言われる所得税、消費税、法人税のうち、所得税は企業の賃金引き上げで名目賃金が上がったことに加えて株主への配当増加などで前年同期の21兆円から22兆円台に、消費税は40年ぶりの物価上昇と個人消費の増加で前年同期の14.8兆円から15.9兆円に、法人税はコロナ後の経済回復と円安によって好業績を上げている大企業を中心に前年同期の7.2兆円から8.9兆円に、それぞれ増収となっているのだそうです。

空前の税収だからと手放しで礼賛していればいいはずはなく、きちんと検証が必要なことは多々あります。たとえば、賃金の上昇の恩恵に浴しなかった労働者はどれだけいるのか。莫大なコロナ給付金の税収への影響はどれほどなのか。名目賃金が上がって税収が増えても実質賃金が下がったためにかえって生活は苦しくなったのではないか。円安によって企業の売り上げが上がったように見えるが、これをドルベースで計算するとマイナスになってはいないか、等々。

税収が絶好調であることは、そのまま経済が好調であることや国民の暮らしがよくなっていることを意味するものではないでしょう。中小零細企業や低所得者の犠牲の上に大企業や富裕層が栄えるというようなことになってしまえば、そんな国のあり方はどう考えても真っ当なものとは思われません。

富裕層をどれほど優遇しても、一定以上の額になればそれは貯蓄や投資に回るため、理論的にもトリクルダウンは起こりにくいとされています。「日本を世界でいちばん企業が活動しやすい国にする」との目標を達成しようとするあまり、「世界でいちばん労働者が報われない国」になってしまっては本末転倒というものです。

組合に代表されることのない、中小零細企業の労働者や、非正規労働者の生活や権利を守り、より賃金の高い仕事に移行できるようにするため、政治の役割が求められます。そもそも「正規雇用」「非正規雇用」の別があるべきなのかも問い直すべきです。

ケインズも、経済学に疎い私などには理解が困難なのですが、財政出動と低金利政策が基本であったように思います。「大きな穴を掘って、またこれを埋めても立派な公共事業である」というのは有名ですが、そんな政府支出をいつまでも続けることは本来の資本主義には反するものでしょう。国会でも以前、公共事業の乗数効果をどのように見積もるのかとの議論がありましたが、この議論ももう一度突き詰めて考えてみる必要があります。

ケインズは低金利政策を提唱すると同時に、「ジョン・ブル(英国人)は大概のことは我慢できるが、2%の利子率には我慢できない」とも述べています。これを「流動性の罠」と呼ぶのだそうですが、超低金利が長く続くと健全な投資資金を阻害するということも考えなければなりません。
このように、岸田内閣の提起する「新しい資本主義」には多くの論点が含まれており、私もできる限りの学びをして参りたいと思っております。

さる19日月曜日に、日本車輛製造㈱豊川製作所を訪問し、JR東海が昨年夏より名古屋・富山間で「特急ひだ」として運行を開始したハイブリッドのHC85系車両を見てまいりました。

架線から電気を集電することなく、ディーゼルエンジンで発電し、蓄電池の電力で走行する車両で、最高速度は120㎞、燃費は35%向上、Co2排出量30%減、NOx排出量40%減という優れもので、深い感銘を受けたことでした。多大なご配慮を頂いた日本車輛製造とJR東海、国土交通省鉄道局の皆様に厚くお礼申し上げます。

HC85系車両 Wikipediaより

京都・大阪方面から、非電化区間の鳥取県東部・中部とを結ぶ「スーパーはくと」のHOT7000系車両も、導入後30年が経過し、後継車両の検討が始まっていますが、このHC85系は有力な選択肢となるように思います。フル規格の山陰新幹線の実現は我々の悲願ですが、多額の費用と長大な時間を必要とするものであり、並行在来線の存続の在り方という難問にも解を出さなければなりません。あらゆる角度から徹底的に議論した上で、結論を出すことが必要な時期に来ています。

今週末から来週にかけて、秋田市と高松市でのスピーチや講演、韓国ソウルでの日韓政治リーダー対話等の日程が入っており、よく準備して臨みたいと思います。

6月も今日で終わり、1年も半分が過ぎてしまいました。時の経つのが加速度的に早くなっていることに驚きと共に焦りを強く感じています。

皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。


編集部より:この記事は、衆議院議員の石破茂氏(鳥取1区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2023年6月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は『石破茂オフィシャルブログ』をご覧ください。