「革命政党」との選挙協力はあり得るのか?

立憲民主党泉代表の方針転換

立憲民主党の泉健太代表は、これまでは共産党との選挙協力を否定していたが、ここにきて、野党共闘を後押しする民間市民団体である「市民連合」を介した選挙協力を排除しない方針を表明した。すなわち、「市民連合」の政策に賛同する政党が名を連ねる形の選挙協力である。

この方針転換は、最近の党内での共産党との選挙協力を求める小沢一郎氏らの動きに影響されたものと思われる。しかし、共産党との選挙協力は、2021年の衆議院選挙における立憲枝野幸男代表と共産志位和夫委員長との「閣外協力合意」が原因で失敗している。

「革命政党」である共産党

共産党は党規約2条で「科学的社会主義(共産主義)」を党の理論的基礎とし、党綱領五で「社会主義・共産主義社会」の実現を目指している。最近の第8回中央委員会総会でも「革命政党として党の統一と団結を固める」と宣言した(6月26日付「しんぶん赤旗」)。

このように、共産党が自他ともに認める「革命政党」であることは明白である。共産党が目指す「社会主義・共産主義革命」とは、共産党が理論的基礎とする「科学的社会主義」によれば、革命によって、資本主義的生産関係を廃止し、資本家階級を絶滅し、生産手段の国有化を断行し、労働者階級による社会主義的生産関係を確立することである。

「共産党一党独裁(プロレタリアート独裁)」の必然性

このような「社会主義革命」は、現行憲法の議会制民主主義制度に基づく国会議員の多数決によって実現すること、いわゆる「平和革命」は不可能である。

なぜなら、「社会主義革命」は、資本主義的生産関係を廃止し、資本家階級を絶滅し、生産手段の国有化を断行するものであるから、仮に多数決で「平和革命」が行われたとしても、資本家階級や中間層による、資本主義体制側の抵抗は極めて激しく、警察や自衛隊、さらには米軍が介入し内戦状態に陥ることすら否定できないからである。

このように、議会制民主主義制度に基づく多数決による「平和革命」が不可能であるとすれば、残るのは「暴力革命」(いわゆる「敵の出方論」を含む)しかない。

ロシア革命や中国革命、キューバ革命などを見ても、歴史上の社会主義革命はすべて「暴力革命」であり、議会制民主主義制度に基づく多数決による「平和革命」は皆無である。しかも、社会主義革命後は資本家階級などによる反抗を抑圧するため例外なく「共産党一党独裁(プロレタリアート独裁)」を断行しており、これは必然と言えよう。

「革命政党」との選挙協力はあり得るのか?

このように、社会主義革命を実現するためには「共産党一党独裁(プロレタリアート独裁)」が必然であるとすれば、これとは両立しない、資本主義的生産関係の上部構造である現行憲法が保障する議会制民主主義制度に基づく、思想、信条、集会、結社、言論、出版、表現の自由などの市民的自由や基本的人権が抑圧されることも必然である。旧ソ連、中国を見れば明白である。

ロシア革命を指導したレーニンは著書「国家と革命」で「労働者階級の解放は暴力革命なしには不可能である。プロレタリアート独裁は資本家の反抗を暴力で粉砕する。暴力のあるところに自由も民主主義もない。」(レーニン全集25巻419頁、499頁1957年大月書店)と断言している。

共産党が「革命政党」であることが明白であるにもかかわらず、共産党と選挙協力を行うことは、共産党の勢力拡大、ひいては、共産党の社会主義革命の実現に力を貸すことになる。

このことは立憲民主党が共産党の革命戦略である「統一戦線」(党綱領四)に組み込まれることを意味する。

立憲民主党がスウェーデン、デンマークなどの北欧福祉国家諸国と同様の社会民主主義政党として、議会制民主主義制度を尊重擁護し漸進的な社会改良を目指す政党であるとすれば、社会主義革命を目指す共産党とは水と油であり、選挙協力などはあり得ないはずである。

立憲民主党は、社会民主主義政党として、日本の議会制民主主義制度を尊重擁護し、市民的自由や基本的人権を守ろうとするならば、「革命政党」である共産党との選挙協力は行うべきではないであろう。