マイナンバーカードをめぐって混乱が続いていますが、河野太郎デジタル相が「マイナンバーとマイナンバーカードは違うので、マイナンバーカードという名前はやめた方がいい」と発言し、さらに混乱しています。いまだにその区別もわからない人が多いので、やさしく解説しましょう。
「マイナンバーカードの名前やめた方が」 河野太郎デジタル相が発言 https://t.co/S4wbRUd1GR
マイナンバー制度というものは、行政の様々な分野でいま現実に日々使われております。
— 朝日新聞(asahi shimbun) (@asahi) July 3, 2023
Q. マイナンバーって何ですか?
これは全国民につけられた12桁の番号です。たとえばこの番号花子さんの場合は「123456789012」がマイナンバー(個人番号)です。これは花子さんが何もしなくてもつけられています。今でも行政事務や税務は、すべてマイナンバーでやっているのです。
Q. マイナンバーは他人に見せてはいけないんですか?
マイナンバーは銀行の口座番号みたいなもので、広く公開するものではありませんが、秘密ではありません。カードを発行するとき袋で番号をおおっているので、見せてはいけないといけないと思っている人がいますが、隠す必要はありません。
ただしパスワード(4種類)は他人に教えてはいけません。メモしないで、暗記したほうがいいです。これも銀行のキャッシュカードの暗証番号と同じで、ほとんどの人が知っているはずですが、いまだにこの区別がつかない人が多い。
Q. マイナンバーとマイナカードはどう違うんですか?
マイナカードはマイナンバーの4情報(氏名・住所・生年月日・性別)をプラスチックのカードに印字したものですが、国民全員に配っているわけではありません。これは任意のカードです。
それを本人認証に使い、健康保険証にも使うことになりました。ここに納税や医療などの個人情報が入っていると思っている人もいますが、マイナカードに個人情報は入っていません。個人情報は、自治体や税務署のコンピュータに入っているのです。
Q. いまマイナカードが騒がれているのはなぜですか?
マイナカードは2016年から始りましたが、使い道がないので、あまり普及しませんでした。税金の確定申告にはマイナカードが必須になったのですが、サラリーマンは天引きで確定申告しないので、問題にならなかった。
それが今年から健康保険証をマイナカードに切り替え、来年秋には廃止するという方針を河野さんが表明したため、大騒ぎになったのです。特に役所がマイナンバーと保険証番号のひもづけをまちがえるトラブルが起こりました。
ほとんどは単純な事務的ミスですが、マイナカードにフリガナがついていないため銀行口座とのひもづけを間違えたのは制度設計のミスでした。先月、戸籍法が改正され、今後生まれる子供にはフリガナがつきますが、大人のカードには手作業でフリガナを振らないといけません。
Q. マイナカードをなくしたらどうなるんですか?
マイナカードは銀行のキャッシュカードと同じようなもので、4情報以外のデータは入っていないので、盗まれてもパスワードがわからないと使えません。でも悪用されると困るので、自治体に届け出たほうがいいでしょう。
Q. マイナカードのICチップには何が入ってるんですか?
暗号化された4情報と公的個人認証キーなどの本人認証情報だけです。これは磁気カードだとスキミングという技術で磁気データをコピーできるので、カードを盗んでも複製できないようにしたものです。
Q. マイナカードを返したらどうなるんですか?
ラサール石井さんなどが返納したようですが、そんなことをしても役所でマイナンバーにひもづけられた個人情報は消えないので、悪用されるリスクは同じです。カードを盗まれるリスクはなくなりますが、それは家にしまって使わなければいいのです。
Q. マイナカードをつくらないとどうなるんですか?
来年の秋には紙の保険証は廃止される予定なので、マイナカードがないと医療が10割負担になります。一時的に「資格確認書」が保険証の代わりに発行されますが、この有効期限は1年です。マイナ保険証に切り替えれば無期限に使えるので、返納するメリットはありません。
Q. なぜ健康保険証をマイナンバーカードに切り替えるんですか?
マイナンバーはもともと社会保障番号としてつくられたものですが、カードは野党やマスコミの反対が強いので義務化できず、「マイナポイント」などでインセンティブをつけてきました。それでも普及しないので、紙の保険証を廃止することにしたのです。
保険証には顔写真がなく、通称が記載できるので、なりすましや偽造が多く、他人に保険証を貸して使い回す人がいて、もっと信頼できる証明書にすべきだという意見が強かったのです。
Q. なんでこんなに反対する人が多いんでしょうか?
返納した人は全国で300人ぐらいで、大したことはありません。毎日新聞の世論調査では64%が「不安を感じる」と回答していますが、具体的に何が問題なのかという指摘はありません。「トラブルが多い」という話ぐらいです。
いま起こっているトラブルの大部分は、マイナンバーと保険証や銀行口座をひもづける手続きの単純ミスですが、すでに8400万枚も発行されているので、0.1%のミスがあっても8.4万件になります。これまで紙の保険証で起こった事故よりずっとましです。
ただマイ-ナンバーの内部はいろいろなシステムをつなぎ合わせて複雑なので、役所の人にも全体がわかりません。おまけに今までの反対運動にこりて過剰セキュリティになっているので、手続きが面倒で、役所に出向かないと解決できません。
Q. 今後もマイナカードの用途は広がるんですか?
マイナカードの用途は、法律で社会保障と税務と災害対策と決められていますが、運転免許証は今後、マイナカードに切り替えることが決まりました。パスポート(旅券番号)は変わりませんが、申請はマイナカードでできます。
民間でも、たとえばサラ金の借金は保険証でできますが、これは偽造やなりすましが容易で危険です。これをマイナカードに変えれば、事故は減るでしょう。本人認証はネット時代には大事な公共サービスなので、マイナンバーに統一するのが合理的です。
Q. 野党は「紙の保険証を残せ」と言っています。
そんなことをしたら、マイナ保険証と紙の保険証がずっと残り、システムが二重になります。これから社会保障の負担が重くなる時期に、事務負担を2倍にするのは愚かなことです。
確かに今のマイナカードの設計はまずいのですが、今さらゼロから番号を付け直すわけにもいかないので、マイナンバーはそのままにしてカードをやめ、スマホで顔認証するなど、もっと便利で安全なしくみに変えていく必要があります。