5月18日に私の政策研究会が開催したフォーラム、その後半は基調講演をお願いした宇宙物理学者 村山斉先生とノーベル賞受賞者 山中伸弥先生との「サイエンストーク」。
トークセッションの模様は次のアドレスからご覧になれます(先生同士のトークは4:10頃からスタート)。
意外にもこのお二人、共演はもちろんのこと言葉を交わすのも、実は今回が初めて。
以前からお二人を見ていて、(何か気が合いそうだなぁ)と思っていたので、村山先生の講演が決まった時点で山中先生に「村山先生と一緒に夕食いかがですか?」と伺ったところ、すぐさま「喜んで!」のレスポンスが。
超多忙な山中先生がわざわざ村山先生の講演日程に合わせて上京なさるわけですから、当然、講演も聴いていただく、それならばいっそのこと「そのまま村山先生と対談なんていかがでしょう?」とお伺いを立てたところ、これも「OK」。
ということで、とんとん拍子に夢の共演が実現したというわけです。
生命科学と宇宙物理、分野は違えど二人のスーパーサイエンティストには共通する並外れた能力が4つあると、私は思っています。
一つは「ビジョンをデザインする力」。
山中先生は米国での研究生活で「Vision 」と「Hard Work」の大切さを徹底的に叩き込まれ、帰国してから開いた研究室で「(受精卵を実験で使用しないため)iPS細胞を樹立する」という明確なビジョンを掲げました。
一方、村山先生もご自身が創設された「東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構(IPMU)」の機構長に就任された際、
① 宇宙はどうやって始まったのか
② 何でできているのか
③ これからどうなるのか
④ どのような法則で動いているのか
⑤ 私たちはなぜ宇宙に存在するのか
という5つのビジョンを掲げました。
共通する力の二つ目は、デザインした「ビジョンの実現力」です。
iPS研究所もIPMUも、ともにWPI(世界トップレベル研究プログラム)に指定され、日本を代表する世界的な研究所へと発展しましたが、資金や人材を世界中を駆け回り集めて来て、その躍進を牽引し支え続けたのは、山中所長と村山機構長のお二人でした。
サイエンストークでは、涙ぐましいまでのお二人のご努力と、マネージメントのすべてを研究者任せにする日本の研究環境の不条理が切々と語られているので、是非ともお見逃しなく!
三つ目の共通する力は、卓抜した「発信力と共感力」の高さ。
NHKスペシャル〜シリーズ「人体」や「コズミックフロント」をはじめ、お二人とも様々な特集番組のプレゼンターをなさっていて、おそらく山中伸弥先生の顔や名前を知らない日本人はかなり少ないと思います。
村山斉先生もその著書『宇宙は何でできているのか』が、科学本としては異例の「新書大賞」を受賞し、今や27万部を超えるロングセラーとなっていて、お二人とも著名である上に好感度や信頼度がずば抜けて高く、傑出したカリスマ性をお持ちです。
四つ目の共通点が、実は私が最も強調したい力で「社会貢献力」です。
お二人ともそれぞれの分野で、ノーベル賞受賞あるいは受賞候補に選ばれるほど卓越した研究業績をあげている現役の研究者でありながら、世界に冠たる研究所を創設しそのマネージメントのトップとして経営・運営に奔走されています。
さらにご自身の時間を割いて科学の魅力を伝え、研究環境改善を訴えるため数多くの講演やマスコミへの出演も精力的に行っています。
できるなら研究活動に専心したい!という切なる思いを抱きながら、あたかも強迫観念に駆り立てられるかのような強烈な使命感を持って、世のため人のために尽くす稀有な研究者。
それが、お二人の共通点です。
さて、長くなりましたが、動画でも「4つの共通点」について私が冒頭から4分ほど話しており、山中先生と村山先生のトークは4:10過ぎから始まります。
全体で50分程度のトークセッションとなっていますが、主な内容をそれぞれの再生位置とともに示すと、以下のようになっています。
04:10〜 宇宙が始まる前の世界は? 宇宙は一つ?
10:44〜 教科書は鵜呑みにしてはダメ
17:25〜 知的に自由な米国の研究環境
21:38〜 マネージメントを研究者が担う日本の研究環境の不条理
29:09〜 寄付を集めると、かえって国からの予算を減額される!?
33:03〜 専門分野の本流や成果直結でないと研究が許されない日本
35:52〜 米国の研究環境の強みー適切で徹底した「評価」と、多様で柔軟な「キャリアパス」
41:12〜 最重要課題は「研究時間」の確保と「研究支援者」の待遇改善
51:14〜「地球の出(earthrise)」動画
ナビゲーターとしてサイエンストークに加わっていた私ですら、編集作業でこの動画を見返すたび、感動で目頭が熱くなりました。
胸を打たれること、学びになること満載のサイエンストークですので、どうかじっくりとご覧いただければ幸いです。
編集部より:この記事は、畑恵氏のブログ 2022年6月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は畑恵オフィシャルブログをご覧ください。