東京大学に入って良かったこと

東京大学は、主に法学部に進学する文科一類と、主に経済学部に進学する文科ニ類が、教養学部の2年間同じクラスで学ぶようになっています。

私が在学した時は、文1文2 17組という第2外国語がフランス語のクラスに配属されました。もう40年前の1982年の出来事です。

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このクラスが、専門学部に進学後もクラスメイトとして、つながりを持ち続けることが多いのです。

私が所属したクラスには、Fさんというメンバーをまとめてくれる世話役のような方がいて、彼の尽力によって未だに仲良く交流が続いています。

このクラスは、私の人生に大きな影響を与えてくれました。

例えば、私が1999年にマネックス証券の創業に参画できたのは、同じクラスに創業者の松本大さんがいて、そのご縁が続いていたからです。

もし、同じクラスでなければ、知り合うことすらなかったはずです。

また、公開されている情報なので書いてしまいますが、今月、財務省の新しい財務次官に就任したCさんは、実は同じクラスのクラスメイトです。在学時代から図抜けた存在でしたが、官庁の中の官庁と言われる財務省でトップに立ちました。日本のこれからを舵取りしていく実務面のリーダーに同じクラスのメンバーが選ばれたのは、とても誇らしいことです。

今や東大卒の学歴も、あまり役には立たない時代になりました。でも、東京大学に入って良かったのは、このような本当に優秀な人たちと知り合うことができたことです。

私自身も東京の都立高校の進学校にいて、それなりに勉強ができる学生だったつもりです。

でも、東大に入って分かった事は、私などよりもはるかに優秀な人たちが世の中にはたくさんいることでした。

彼らを知ることによって、自分の限界を知り、勉強ではなく他の分野で競争しなければ勝てないことを悟ったのです。

そしてもう一つ大切な事は、このような極めて優秀な人たちは、ただ優秀なだけではなく、利他の精神を持ち天下国家を語る、人格的にも優れたスケールの大きな人たちであると言うことです。

目先の自分の利益だけを考えるだけではなく、長期的なビジョンに基づき、国の未来や社会をどうやって良くしていくのかを真剣に考えている。そして、それを実現するために日々努力を惜しまない。

私にはとても真似ができない高い理想と志を持って、未だに毎日を過ごしているのです。

決して真面目な学生とは言えず、たいした勉強もしなかった学生時代。自業自得と言えばそれまでですが、東京大学の授業から学べた事は、残念ながらあまりありません。

しかし、自分が尊敬できるような同世代の人たちと、プライベートに酒を飲みながら語り合ったことが、今の自分を作る大きな力になっていることを実感します。

のんびりとカリフォルニアのナパに滞在して、ふと今までの人生を振り返り、40年も前の学生時代のことを思い出してしまいました。

そろそろ少しホームシックにかかっているのかもしれません。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2022年6月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。