100億円突破は、時間の問題――。2023年のふるさと納税による世田谷区税の流出額が97億円に上ることがわかり、衝撃が走っているというのだが、いい加減、茶番はやめてもらいたい。
【判明】世田谷区、ふるさと納税で97億円流出…23年度速報値で過去最大https://t.co/kq2XtiVvVI
区は22年度から返礼品を拡充して寄付額を前年度から倍近く増やすことに成功したが、流出額との差は依然大きい。区は「流出額が100億円を超えるのは時間の問題」と危機感を募らせている。
— ライブドアニュース (@livedoornews) July 9, 2023
マイナンバーカード問題と同じく、毎年恒例の保坂区長の政府批判のネタの1つなのだが、こちらは毎年流出額が増加しているので、区長にとっては何度でも使えて、重宝している感じさえ窺える。
ふるさと納税による区税の流出については、当然、私以外にも「早急に返礼品を充実させるべきだ」などと議会から危惧する声は、かなり以前から上がっていた。しかし、保坂区長は制度を批判するだけで、何ら具体策を講じるわけではなく、「問題提起するため、返礼品競争には与しない」と同じ答弁を繰り返しているだけだった。
こうして孤高を気取っている間に、総額400億円近くの流出が決定的となり、区長も昨年末から新たに返礼品を100品目揃えるなど、ようやくその重い腰を上げた。
世田谷区、ふるさと納税返礼品を大幅拡充 方針転換: 日本経済新聞 https://t.co/rHRYqW4Mi8 世田谷区は、ふるさと納税制度の返礼品を大幅に拡充すると発表。全国的にファンが多いスイーツ店の食品や宿泊施設のクーポンなど約100の製品・サービスを用意した。同区はこれまで社会参加型、地域参加型の
— 保坂展人 (@hosakanobuto) December 30, 2022
その結果、2022年に比べて今年は2倍となる4億円の寄付金が集まる見通しなのだが、焼け石に水状態。何しろ、区長の方針転換が遅いばかりか、返礼品についてもたしかに以前よりはマシにはなったが、内容を本当に精査したのかわからないラインナップである。
役所の小さな頭で考えていないで、広く区民にアンケート調査でもして不断に充実を図るべきだ。それよりも、本当はまったく手付かずの行財政改革を断行しなければならないはずだ。
議会から見ると、かくて世田谷区が本気でふるさと納税対策に取り組む気配があるとは思えない。それもそのはず。実は保坂区長が言うほど区税流出は“痛くない”のである。
というのも、流出額の85%は都区財政調整制度によって、東京都から補填されている。80億やら90億やらが毎年、世田谷区の財政を直撃しているならば、現在進行中の400億円にも上る、庁舎の建て替えなんて出来るわけないのである。また、ふるさと納税の控除額が区税に占める割合を見ても、世田谷区が突出しているわけではない。
世田谷区の #ふるさと納税 流出のニュースを受けて、23区での流出額をグラフ化してみた(2022年度
"額"で見ると世田谷が突出してますが、区民税に占める"割合"で見るとトップはなんと中央区
制度見直しを訴えていくのはもちろんですが、当面の対策も真剣に考えていく必要ありますね pic.twitter.com/7uDkRVM29a
— ほづみゆうき@データ分析に基づき、子どもにも大人にもやさしい中央区を作ります (@ninofku) July 2, 2023
つまりは、この問題が保坂区長の「政府はけしからん」「自治体は何もできない」と自分が目立つためのネタにされているだけで、まったくもって建設的な議論に進展しないのが極めて残念なのだ。
都からだけでなく、挙句の果てに「世田谷区は不交付団体だから、国が補填せよ」などと言う前に、自立した自治体経営を真剣にやってみたらどうなのか。区政のトップに必要なのは、評論家でなく実務家である。