最近の国外における新型コロナウイルス感染状況は?

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日本では、沖縄を中心に新型コロナ感染者数が増加し、第9波の到来が指摘されているが、海外からはコロナの感染情報が聞こえて来ない。コロナの流行は、パンデミックからエンデミックに移行したのだろうか。実際、WHOは、5月5日に“国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態宣言”を解除した。

Worldometerのサイトから、世界各国のコロナ感染者数の推移を知ることができる。図1に、日本を含めた9カ国のコロナの発生状況を示す。猛威を振るったコロナも、2023年に入ってからは、全世界で収束傾向にあることが読み取れる。日本では、5月8日以降、コロナ患者の全数把握は終了しWorldometerでも患者数は更新されていないが、多くの国では継続して全数把握が行われている。

図1 各国における新型コロナ感染者数の推移

図2には、9カ国における5月1日以降の新規患者数の推移を示す。日本以外の8カ国はWorldometerから新規患者数を拾うことができるが、日本の新規患者数はモデルナのWebサイトに公開されている全国コロナ患者数の推定値を用いた。

図2 2023年5月1日以降の各国における新型コロナ新規感染者数

5月の初めには、日本の新規患者数は、韓国、オーストラリア、ニュージランドを下回り、フランスと同程度であったが、それ以降、他の国の患者数は減少するも、わが国のみが増加を続け、6月末からは韓国を抜いてトップに立っている。

5月8日からの6回目ワクチン接種の開始とともに新規感染者数が増えたようにも見える。7月3日の10万人あたりの日本の新規感染者数は44人で、0.7人である米国の50倍以上である。

国内において、沖縄の患者数が突出していることについて、コロナ感染症対策アドバイザリーボードの脇田隆字座長は「沖縄はワクチンの接種率が低く、昨年冬の流行も広がらず免疫が下がったからではないか」とコメントしている。

図3には9カ国の追加接種回数を示すが、日本が突出しており、他の国は、昨年の春以降ほとんど接種回数は増えていない。追加接種回数と新規感染者数は相関係数が0.78と正の相関を示しており、追加接種回数が多いほど新規感染者数が多い。この結果を国内に当てはめた場合、ワクチン接種率が低いことを沖縄において感染者数が突出していることの理由にすることはできない。

図3 各国におけるコロナワクチン追加接種回数

また、脇田座長は、免疫が下がったことが沖縄県におけるコロナ流行の理由としているが、5月17日〜31日の調査結果によると沖縄県の抗N抗体の保有率は全国でも最も高い。

BA.5が流行した第8波の検討では、抗N抗体の保有率は新規感染者数と負の相関を示した。すなわち、抗N抗体の保有率の最も高い沖縄県は、感染者数が最も低かった。

しかし、XBB変異株の流行期における抗N抗体保有率と新規感染者数は、BA.5流行期とは逆に、抗N抗体の保有率は新規感染者数と正の相関を示した(図4)。すなわち、抗N抗体の保有率が高いにもかかわらず、沖縄は全国で最も新規感染者数が多かった。

図4 抗N抗体保有率と新規感染者数

図5には、BA.2、BA.5変異株でブレイクスルー感染を起こした患者血清におけるXBB.1、XBB.1.5変異株に対する中和抗体価を示すが、XBB系統の変異株に対する中和抗体価の上昇は見られない。すなわち、過去にコロナに感染した既往があっても、XBB系統の変異株に対する中和抗体価は産生されないことを意味する。

図5 BA2/BA5変異株による感染後患者血清中の各種変異株に対する中和抗体価

今回の検討から、5月以降新規コロナ患者の増加が見られるのは、追加接種を推進しているわが国のみであることが明らかになった。とりわけ、5月8日からの6回目ワクチン接種開始時期に一致して感染者数の増加が始まったのは気になるところである。ワクチン接種直後には感染リスクが高いことが知られており、“魔の2週間”と呼ばれている。

これまで、わが国ではコロナワクチンの接種が始まると決まってコロナ感染者数の増加が見られている。また、同じことを繰り返すのであろうか(図6)。

図6 ワクチン接種の開始とコロナ感染者の増加