以前ある人から「北尾さんはリーダーとして人の上に立つ中で、どういうところに妙味を実感されますか?」というように尋ねられました。
世の中には「リーダーの醍醐味は、全メンバーの人生の宝となる、理想のチームを創れること」とか、「リーダーシップによって、部下の心に火をつける。これこそが、リーダーの醍醐味」といった表現をされる人もいるようですが、先ず大前提としてプロジェクト個々の是非は問われねばなりません。最も大事なことは、大きな志を抱き全身全霊を傾ける対象が世のため人のためになるということであります。
その時そのプロジェクトを如何にして成し遂げるか――ヘンリー・フォードが「人が集まることが始まりであり、人が一緒にいることで進歩があり、人が一緒に働くことで成功をもたらしてくれる」と言われていますが、第一に人を集めることです。事業は一人では大したことは出来ないでしょう。目的遂行に当たっては、どれだけ最善の陣を敷けるか、言い換えれば最良のパートナーであり協力者を得られるか、が成否を左右します。
その次のステージは、人を効率的に動かして行く組織を作って行くことです。私どもSBIグループに照らして言えば、私が描くビッグピクチャーに集った人達と共に、企業生態系のような組織を作り上げてきました。例えば、私達は証券事業からスタートし、関連する多様な事業会社を設立する中で、相互進化と相互シナジーを徹底追求してきたということです。
上記の人集め・組織作りにはリーダーが、「この集団はここの領域でこういう仕事をして、このように社会に貢献して進んで行くんだ」という明確なビジョン、更には組織としての使命を明示して行くことが極めて重要になります。こうした戦略立案等々が上手く機能して行く、といったところにリーダーの醍醐味があるのではないかと思います。
私は99年のグループ創業時、「正しい倫理的価値観を持つ」「金融イノベーターたれ」「新産業クリエーターを目指す」「セルフエボリューションの継続」「社会的責任を全うする」、をコーポレートミッションとして掲げました。以来一貫して此の経営理念を愚直に堅持し弛まず実践してきたことが、我がグループ飛躍的成長の根底にあるものと考えています。
編集部より:この記事は、「北尾吉孝日記」2023年7月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。