共産党の本気の「選挙共闘」の挫折
立憲民主党執行部は、共産党との本格的な「選挙共闘」すなわち衆議院選における両党候補者当選のための共闘体制の確立には否定的である。その背景として、自衛隊や日米安保に関する基本政策が異なること、支持母体である「連合」が反対であること、保守陣営側から「立憲共産党」との攻撃に晒されること、共産党との「選挙共闘」は枝野代表の前回総選挙で失敗していることなどが指摘できよう。
しかし、共産党はかねてより立憲民主党に対し、政策合意に基づく対等平等な本気の「選挙共闘」を求めてきたから、立憲民主党との「選挙共闘」の挫折は共産党にとっては党綱領四に定める「統一戦線戦略」の挫折でもあり衝撃であろう。
単独では到底政権が取れない共産党
共産党は現在の国会議員の勢力では、選挙によって共産党単独で政権を取ることは到底不可能である。このことは共産党自身が自認しているに違いない。したがって、共産党にとっては党綱領四に定める「統一戦線戦戦略」に基づき立憲民主党などと連合政権を樹立して政権をとる以外にはない。そして、連合政権樹立の手段が共産党のいう本気の「選挙共闘」なのである。
しかし、上記のとおり、共産党のいう本気の「選挙共闘」実現のためには、外交安保の基本政策の違いや、「連合」との関係、「立憲共産党」批判に象徴される国民の間の根深い「共産党アレルギー」の存在、さらには、志位委員長任期問題に端を発した民主集中制に基づくベテラン党員の除名問題も無視できないであろう。
これらの諸問題は、立憲民主党が解決すべき問題ではなく、すべて立憲民主党に対し本気の「選挙共闘」を求める共産党自身が解決すべき問題である。
危機的状況の日本共産党
ところが、共産党は立憲民主党との本気の「選挙共闘」が挫折し孤立化するや、上記の諸問題の解決への改革ではなく、逆に共産主義革命への「原点回帰」を主張し、先般の第8回中央委員会総会ではことさら「革命政党」を強調し、日米安保体制と大企業財界を激しく糾弾した。そして、除名問題に関する朝日、毎日の批判は党に対する攻撃であり、「攻撃は革命政党であることの証拠として、誇りをもって打ち破ろう」と志位委員長は全国の党員に檄を飛ばした。
しかし、朝日、毎日の除名問題に関する「共産党は異論を認めないのか?」との疑問や批判は国民感情に基づくものと言えよう。したがって、共産党はこの批判を党攻撃とみなして一刀両断するのではなく、真摯に受け止め委員長の任期制など抜本的な党改革をすべきである。
また、強調された「革命政党」についても、「過激なイメージで怖い」(7月14日付しんぶん赤旗「読者の広場」)との印象を国民に与え「共産党アレルギー」を増幅する結果になる。
このように、「選挙共闘」の挫折により孤立化した共産党は、逆に「革命政党」として過激化した。これは共産党の本質を露呈したとも言えよう。
共産党が「暴力革命」ではなく選挙による「平和革命」を目指す政党であるとすれば、立憲民主党をはじめ、広範な日本国民の支持を得なければならないから、今回の共産党の過激化は明らかに逆効果である。これが「選挙共闘」の挫折により孤立化し追い詰められた結果であるとすれば、近年における顕著な党勢衰退と相まって、日本共産党は危機的状況にあると言えよう。