世界観というもの

プレジデントオンラインに、『ネガティブ思考は伝染してしまう…「負の発言」しかしない人と罪悪感ゼロで絶縁する最強のフレーズ 人間は無意識に相手の表情を真似してしまう』(22年10月7日)と題された記事がありました。「脳科学者」である筆者はその中で、次のように言われています。

――人は「ひとり」にならないと、「自分だけのことば」は降りてこない。物理的にひとりになるだけじゃだめだ。SNSから離れ、人の思惑から離れる時間がないと、脳が世界観をつくれないのである。人の思惑を探る瞬間、脳では、横方向の神経信号が流れる。世界観をつくるには、縦方向の信号を使う必要があり、そのためには、ひとりでぼんやりしたり、何かに没頭したりする時間が不可欠なのだ。

国語辞書を見ますと、世界観とは「世界およびその中で生きている人間に対して、人間のありかたという点からみた統一的な解釈、意義づけ。知的なものにとどまらず、情意的な評価が加わり、人生観よりも含むものが大きい」等と書かれています。私見を端的に申し上げれば、世界観に広がりを作って行くには自分自身が経験をするということだと思います。

世界観というものは、何も変化のない所で多少本を読んでみても広がってくることはないでしょう。私自身で例示すれば、10年以上海外に住み世界100カ国位を旅してきましたが、その経験は自分の世界観を醸成する上で或いは大きくして行く上で非常に役に立ったと思っています。取り分けその国に住んでみて、異なる歴史・伝統・文化の中で生きてきた異なる言葉を話す人間達を知ることで、実感として世界観の広がりが出てくると思います。

私は例えば、ケンブリッジ大学経済学部在籍時およびワッサースタインペレラ社常務取締役時代、英国に住んでいました。当国を構成する四地域(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)は、夫々に夫々なりの歴史・伝統・文化というものを根強く持っています。彼等彼女等と実際そこで生活をし、様々な事柄が絡み合い複雑に作用し合う中で初めて、それら凝縮されたものが体験的に何となく分かってくるのです。広大な世界観を築き上げるに、体系立ててというよりも、その「何となく」が結構大事なのではないでしょうか。


編集部より:この記事は、「北尾吉孝日記」2023年7月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。