ガラス・クリスタルの名門「ラリック」。創業者ルネ・ラリックの卓越した宝飾デザインとガラス工芸で名を馳せたのち、クリスタルを極め、現在に至る。2022年には工房開設100周年を迎えた、フランスの工芸芸術分野における重鎮メゾンだ。
「ラリック」の世界観に浸れるホテルレストランが、フランスに3軒ある。アルザス地方北部のウィンゲン=シュル=モデールに建つ「ヴィラ・ルネ・ラリック」と「シャトー・ホッホベルク」、そしてワインで名高いボルドー地方はソーテルヌ地区の葡萄畑に囲まれたワイナリーホテル「シャトー・ラフォリ・ペラゲ」だ。
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ルネ・ラリックが暮らした館をホテルに。左は、併設レストラン。
©︎Reto-Guntli
ウィンゲン=シュル・モデールは、ルネ・ラリックがガラス工房を開いた土地であり、彼は、この街に瀟洒な館を建て、パリと行き来をしながら暮らしていた。その館が、ホテルレストラン「ヴィラ・ルネ・ラリック」として稼働し、世界中のラリックファンを迎えている。
豊かな木々と緑眩しい芝生に抱かれた、三角屋根の美しい館。エントランスを入ると、「ラリック」が誇る工芸品が飾られたロビーやラウンジ、バー。
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ロビーやバーは、ラリックの調度品で統一。
ロビー:©︎Agence-Douzal
バー:©︎Gilles-Pernet
ゲストルームの内装にもメゾンの美的センスが存分に宿っていて、さながら”ラリック美術館”。美術館に滞在しているかのような贅沢な環境が「ヴィラ・ルネ・ラリック」にはあり、「ラリック」ファンの心をときめかせる。
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ゲストルームは庭を一望。
©︎Reto-Guntli
ホテルのみならず、レストランも魅力的。ホテルに併設するシャープでモダンなデザインのレストラン空間にも、「ラリック」のオブジェが随所にあしらわれており、テーブルに並ぶグラスやナイフレストなどもメゾンの作品だ。
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ガラス張りの明るいレストラン。ラリックオブジェでまとめられた美しいテーブルアート。
©︎Reto-Guntli
シェフを務めるポール・ストラドネーは、ミシュランガイドで2つ星の評価を得る実力派。美食地方アルザスの豊かな食材を主役にした料理は、食材の風味を丁寧に引き出した繊細でエレガントなおいしさ。一皿一皿の香りをとても大切にしている、と感じるのは、香水瓶のデザイナーとして一世を風靡したルネ・ラリックへのオマージュだろうか。
シェフ・パティシエのニコラ・ミュルトンによるデザートも、食材力を生かした繊細な表現で、洗練された「ラリック」のイメージにぴったりだ。
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洗練された料理やデザートは、ミシュラン2つ星のお墨付き
©︎Karine Faby
ワイン愛好家の方は、ぜひともこのホテルレストランのカーヴを見学してほしい。フランス最優秀ソムリエとフランス国家最優秀章ソムリエ部門のダブルタイトルを持つロマン・イルティスによるワインコレクションは、計60000本。地元アルザス産の希少なワインから、フランス各地の逸品までがずらり並ぶ美しいカーヴは一見の価値がある。
ちなみに、「ラリック」はワインも造っていることをご存じだろうか? ボルドーはソーテルヌにあるもう一つのホテルレストラン「シャトー・ラフォリ・ペラゲ」では素晴らしいソーテルヌワインを醸造しており、サン=テミリオンにもワインシャトーを持っている。洗練された料理やデザートに、”ハウスワイン”を合わせるのも楽しい体験になるだろう。
「ラリック」の美意識を満喫できる「ヴィラ・ルネ・ラリック」。街には「ルネ・ラリック美術館」もあり、こちらもぜひ訪ねてほしい場所だ。
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