黒坂岳央です。
世の中の仕事はざっくり「社会から求められる仕事」と「自分がやりたい仕事」にわけられる。
多くの人はやりたい仕事のことだけを考え、必要とされる資格やスキルを取得し、そして応募して就職や転職を実現させる。自分自身がそうしてきたのでよく分かることなのだが、結論的には「自分がやりたい仕事」よりも「求められる仕事」をする方が長期的に見れば仕事の満足度は高くなるかもしれないと考えている。
やりたい仕事が人生を辛くする?
世の中は「今の仕事をやめたい」「同じ時間使うならもっと別の仕事をしたい」といった声で溢れている。自分の親族には本人が高齢でありながら介護施設で働く人物がおり、「老老介護はしんどい。自分は若い世代のお世話をする仕事がしたい」と言い続けながら働いている人がいる。
自分自身も昔はそう考えていた時期があった。コールセンター派遣で単純作業の仕事をしていた時期は、上司や周囲からはかわいがられたり仕事っぷりを褒めてもらえたりしたが、「今のような付加価値が低い仕事をずっと続けても、今後数十年働き続けるのは不安だ。働きながら自分の市場価値を高めていく専門性の高い仕事をしたい」とずっと忸怩たる思いがあった。
月日は流れ、念願かなって米国系外資に転職し、国際的な舞台で外国人エリート社員と一緒に働く仕事をやってみた。10年以上追い続けてきた願望が成就したことで、仕事がスタートした時はとてもやる気があった。しかし、最後は心折れた。イマイチ自分の努力量と結果が伴わない。端的にいえば自分はこの仕事にはまったく向いていなかったのだ。
毎日、出社して空き時間は勉強に注ぎ込んで働いたが、周囲の同僚はみんな自分の3分の1くらい努力で次々と結果を出していく。すっかり自信は失われてしまい、華々しい舞台に行くのが嫌になってしまった時期があった。前の部署の人達からは「あなたは花形部署でエリート街道まっしぐらという感じだね」と言われたが、その声が余計に辛く感じたことを覚えている。冷静に振り返れば、過去に派遣社員で周囲から認められて働いているときの方が充実感があったかもしれない。そのことに気づいた。
やりたい仕事、ずっと夢だった念願の仕事は、とうとう自分を幸せにすることはなかった。給与が上がり、ボーナスをもらっても「嬉しい」というより「あまり貢献できてないのに申し訳ない」という後ろめたい気持ちの方が強かったかもしれない。
求められる仕事で幸せをつかめる
今は脱サラしたが、ここに来るまでは経済的合理性だけを追求して、やりたくもない仕事をやっている瞬間もあった。だが、結局は続かなかった。現在、自分の手元に残っているのは「顧客やクライアントから求められる仕事」だけであることに気づいた。それ以外の仕事は自然消滅していたことに気づく。
求められる仕事は、もしかしたら自分が本当にやりたい仕事とは違うかもしれない。だがそれでもやりたい仕事で周囲から強烈な支持を得られないものより、幸せをつかめる可能性はあると思っている。ここからはその根拠を述べたい。
まず、求められる仕事は顧客やクライアントから、応援や感謝の言葉をたくさん受け取ることで自信や自己愛が育まれるのだ。マズローの5段階欲求の図を見たことがある人なら知っているだろうが、世の中のざっくり7-8割以上は「承認欲求」の壁を超えるのに苦戦する。実際、この壁を壊すことは難しい。年収が2000万、3000万くらい稼ぐ人でも仕事で承認欲求が満たされずにお金を払ってキャバクラで話を聞いてもらったり、周囲に経済力を誇ることで承認欲求を満たそうとするという話があるくらいだ(キャバクラにいっている人全員が承認欲求を満たしたくてそうしていると言っているわけではない)。しかし、お客さんから「助かっています。ありがとう」とか「またよろしくお願いします」と言われれば、承認欲求は自然と健全に解消され、必然的に自己実現欲求へと至る。これはお金では買えない価値であり、とても幸せなことである。
そして求められる仕事で結果を出すことで、「やりたい仕事」にランクアップすることがある。自分は仕事でビジネス記事を書いたり動画を出しているが、本音を言えば動画を出すことをずっと避けていた。話すより書く方が楽しいし、自分には適正があると思っているためだ。トーク力の向上に限界を感じており、できれば同じ内容を伝えるなら話すより書く方がやりたい。
だがニーズを考えると世の中は書いた文章を読む人より、動画越しで話を聞きたいという人が圧倒的に多い。ざっくり8割が動画派、テキスト派は1割とか2割くらいだろう。実際、読書をする人よりテレビやYouTubeを楽しむ人の方が多いことからもそれがわかる。しかし、苦手だからと敬遠していた動画も出せば喜んでくれる人がいる。そうなると辛かった動画投稿も反応が嬉しくなって徐々に楽しくなってくる。「次はこんな話をしてみよう」と創意工夫をしようとアイデアも湧いてくる。気がつけば「求められる仕事」は「やりたい仕事」になっているのだ。
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仕事をする上では人間関係から逃れることはできない。同じ仕事をするなら相手に喜んでほしい、感謝されると嬉しいのは誰でも同じ感覚を持っているはずだ。「とにかく自分がこれをやりたい」と自分本位になりすぎるよりも、「喜んでくれる仕事をやりたい」と利他的に考えることで、自分自身にとってもやりたい仕事になるのではないだろうか。
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