人を信用をしても期待はしない方がいい理由

黒坂岳央です。

記事や動画で意見を出していると「あなたは他の人と違って信じられる!」と言われることがある。とてもありがたいことだ。しかし、嬉しい反面「どうか過剰な期待はしないでもらいたい」とも感じてしまう。

自分は積極的に誰かを騙そうとか利用しようとは微塵も考えてはいないが、あまりに期待値を高く持たれてしまうことで、勝手にこういう人だと思いこみ、勝手に期待し、そして勝手に裏切られたと感じて罵倒を受ける未来がやってくることがある。そんな未来は望んでいないのだ。

個人的には年齢が20代後半を過ぎたら「信用をしても、期待はしない」という思考に切り替えるべきだと思う。その根拠を取り上げたい。

SunnyVMD/iStock

信用と期待はまったく違う

似ているようだが、信用することと期待することは全然違う。まずはこの違いを述べたい。

信用することは、その人の人間性や社会的責任を信じるということである。ビジネスマンであれば、約束したことをちゃんと守るとか、怒っても暴力を振るわないとか、詐欺や不誠実なことをしないとかそういうことである。

信用される人物になる方法、それはとてもシンプルで「約束を守ること」に尽きるだろう。こんなこと、もはや当たり前すぎると思われそうだが、口と行動が違う人…口では調子のいいことをいいながら行動がまったく伴わない人というのは、世の中驚くほど多い。口と行動の一致を徹底するだけでも、相手からの信用を得ることができるだろう。

そして期待するというのは、相手の行動や作品に対してすることである。大変厳しいことをいうと「この人はこういう人だから、自分が考える通りに動いてくれるだろう」と相手の真の意図を完全に無視し、自分の願望を相手に押し付けてしまう行為とも言えるのではないだろうか。

先日、レストランで食事をした時に利用客の一人が「食事の提供が遅い!普通、もっと早く持ってくるでしょう」とスタッフに叱りつけていた。だが、この店はゆったりとした時間をコース料理で過ごすのがコンセプトであるとホームページなどで表明しており、変わるべきはこの利用客の方である。自分は2時間、まったりと過ごすことができとても素晴らしい店だと感じたが…。自分勝手な期待を相手に押し付けて怒り出すのは迷惑である。

イライラするのは期待値が高すぎるから

人間関係でイライラする理由は、シンプルに相手への期待値が高すぎるからだと思っている。以前の記事でも書いたことがあるが、日本では店員さんに外国人名のネームプレートをつけると利用客からのクレームが激減する。日本人同士だと「察して当たり前」という感覚でも、外国人相手となるとその期待値はゼロに近くなり、仮に自分が思うように察してもらえなくても怒り出す人は減るのだ。

自分は昔、精神的に未熟だった頃はとにかく周囲の人への期待値が高かった。派遣社員時代は周囲は自分よりみんな一回り近く年上の人ばかりだったというのもあり、自分本意な行動も笑って許してくれた。

食事をする時も周囲の年上が多く払ったり、奢ってもらうのが当たり前だった。段々と感謝の感覚はなくなっていき「自分はもてなされて当たり前」という感覚になっていったのだと思う。いざ、自分の思うように相手が動いてくれない時はすぐイライラして「年上なのに先回りしてできないの?」と思うこともあった(大変傲慢だったと今では反省している)。

しかし、環境が変わって現役生より5年間遅れて大学に入ると一気にこの期待値が変化した。それまでは周囲は全員年上で気を回してくれるのが当たり前だったのが、逆に全員周囲が年下に変わって年上の自分に気を回してくれる人など誰もいなくなったのだ。

この体験を経て、「相手はこう動くべき」みたいな感覚は完全に抜けていった。米国大学留学や外資系企業で外国人と一緒に勉強したり仕事をすると、ますます「普通、言わなくてもこのくらいやってくれるでしょ」という期待値もさらにゼロへと近づいていった。

期待値がゼロになるととても気楽に、そしてごきげんに過ごすことができる。期待していない分、相手が思わぬ厚意をくれたならそのまま全てをプラスと捉えることができ、「ありがとう!」と心からいえる。

夫婦間、親友の間柄でも過剰な期待はしない

自分は妻と出会って今年でもう14年になる。これまで本当に色んな事件を乗り越えてきたが、大喧嘩や激しい口論などは本当にたった1度もないし、今後も絶対にないと断言できる。なぜならお互いに相手への過剰な期待はまったくないからである。

お互いビジネスをしているということもあって、独立心は高く、自分のパートはプロフェッショナルとして責任を持って遂行するという感覚を持っている。「普通はこうするでしょ」とか「察して」を相手に押し付けないように明文化されない不文律を有しているためだ。相手に自分の期待を押し付けない、これを鉄の掟にするだけで喧嘩が起きる火種はなくなってしまうのだ。

そして自分には結構長く付き合っている数少ない友人がいる。この友人は正直、かなり適当である。「今度そちらに行く用事があるから、よかったら食事でもどう?」とかなり前から打診をしても返事がない。滞在最終日前日の夜に「まだこっちにいる?都合があえば今からどう?」みたいに連絡が来る。

人によっては「自分の都合のいいように連絡をよこして!」と怒り出すかもしれないが、自分は笑いながら応じるようにしている。この人は元々こんな感じだと分かっているので、「自分がかなり以前から連絡をしているので、それにあわせて事前連絡に応じるべきだ」などとは思わない。自分は自分、人は人。いざ再会すると楽しく話せるからOKなのだ。

信用をしても期待はしない。人間関係はこれを徹底するだけでとても気楽でイライラすることもなくなるのだ。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。