日本共産党の「生産手段社会化」で経済停滞?

日本共産党が目指す「生産手段社会化」とは何か?

日本共産党は「社会主義革命」を目指している。すなわち、発達した資本主義の国での社会主義・共産主義への前進を目指している。そして、社会主義革命の中心は、主要な生産手段の所有・管理・運営を社会の手に移す生産手段の社会化である。

生産手段の社会化によって、人間による人間の搾取がなくなり、資本による利潤追求がなくなり、経済の計画的運営が可能になり、生産力が飛躍的に発展し、真に平等で自由な人間関係からなる共同社会(共産主義社会)への展望が開かれるとしている(党綱領五「社会主義・共産主義の社会をめざして」参照)。

日本共産党の志位委員長 NHKより

社会主義革命の目玉政策とされる「生産手段社会化」

このように、共産党は「生産手段社会化」を社会主義革命の目玉政策としている。しかし、党綱領では、「生産手段社会化」の具体的内容・方法は書かれていない。

すなわち、そもそも「生産手段社会化」とは何なのか、国有なのか、公有なのか、協同組合所有なのか、日本の企業や個人が所有する土地・建物・機械設備などの生産手段をどのような方法で「社会化」するのか、「社会化」の対象は大企業だけなのか、中小企業も含むのか、農家も含むのか、個人も含むのか、「社会化」が有償なのか、無償なのか、「社会化」を法による適正手続きで行うのか、それとも強制的な行政手段で行うのか、などが全く不明である。

「生産手段社会化」の具体的内容や方法が全く不明であると、社会的な大混乱が生じるであろう。旧ソ連のスターリン政権による農業集団化や、中国の毛沢東政権による人民公社化などを見ても、農民に多大の犠牲者を出している。

日本共産党の「生産手段社会化」で経済停滞?

上記のとおり、党綱領で、日本共産党は、「生産手段社会化」によって、搾取がなくなり、利潤追求がなくなり、計画経済が可能となり、生産力が飛躍的に発展すると主張している。

確かに、「生産手段社会化」は、いわゆる資本家を絶滅し、資本家に代わって国家が経済を運営する体制であるから、資本家による労働者の搾取すなわち剰余価値の取得はなくなるであろう。しかし、国家による剰余価値の取得はなくならない。これを否定すれば拡大再生産ができず、経済の発展はないからである。

また、「生産手段社会化」により資本家がいなくなれば利潤追求もなくなり、計画経済が可能となるであろう。しかし、利潤追求がなくなり、計画経済になれば生産力が飛躍的に発展するとの共産党の主張は極めて疑問である。

なぜなら、利潤追求がなくなると競争原理が働かないため、技術革新が遅れ、計画経済は非効率性・低生産性に陥り、国家による経済運営が破綻する。この事実は、旧ソ連の計画経済の破綻や、鄧小平による市場経済導入以前の毛沢東時代の長期に及ぶ経済停滞が証明している。旧ソ連は「計画経済」が破綻し「利潤原理」を導入せざるを得なくなった。

したがって、競争原理が働かない「計画経済」が非効率や技術革新の遅れなどにより、経済の長期停滞をもたらせば、利潤追求による競争原理を認める資本主義的な「市場経済」を導入せざるを得なくなる。共産党が金科玉条のごとく主張する「生産手段社会化」には経済運営上の重大な矛盾と欠陥があることに注意すべきである。

以上に述べた通り、日本共産党が社会主義革命の目玉政策にしている「生産手段社会化」による「計画経済」は、生産力の飛躍的発展どころか、経済の長期停滞をもたらし、国民生活を破綻させる恐れがあるのである。