異常気象にどう打ち勝つ?:湾岸の高層マンションには怖くて住めないわけ

バンクーバーの集合住宅やオフィスビルの駐車場はほとんどが地下にあります。私のオフィスの隣地で55階建ての集合住宅を建築するために地下の掘削が進んでいますが、そこに出来るのは地下7階建ての駐車場。ちなみに私の車は地下4階にあり、正直、出すのが面倒なのでちょっとしたことなら公共の交通機関か徒歩で移動します。

こんなに進化(いや、深化?)した街ですが気になることもあります。それは洪水。私がかつて住宅開発した場所は海に接しているところでした。開発の際、当局と洪水リスクに関する協定を締結しています。バンクーバーはフィヨルドの地形の奥にあるのでなぜ洪水?という気もするのですが、当時言われていたのが温暖化で海水面が今よりぐっと上がり、建物に洪水のリスクがある、というものでした。

仮にそれが起きた場合、建物の地下駐車場に大量の海水が入り込み、建物の機能が失われる可能性があります。特にエレベーターが水に浸かるリスクが高まる同時に、電気室が大抵地上1階から地下1-2階に位置するため、ここに水が入ると電気は喪失され、復旧には極めて多額の資金と時間を要します。昨年、キングタイドと称する特段大きい大潮の日に大雨が降った際、下水道に海水が入り込み逆流、海に近いエリアが海水の洪水になりかけました。幸いにして地下構築物にまでは水が行かなかったものの残されたその場所にある木々や草木が全部枯れました。一種の塩害です。

世界で異常気象が日々起き、それが甚大な被害を及ぼしていることはご承知の通りです。この数十年で確かに気象は変わったと多くの人が思っているでしょう。控えめの報道でしたが中国、北京近郊の8月初めの大雨による水害は画像を見ていて恐ろしいものを感じました。クルマが濁流にどんどん飲み込まれ、まるでベルトコンベアに乗せられたように次々流されていきます。損害うんぬんよりこれが今後、毎年のように起きるかもしれないリスクと背中合わせだと考えれば人々の資産や政府や地方自治体のインフラ管理にどれだけの費用と人材投入が必要かと思うと我々の住む社会は持続可能なのだろうか、と考えてしまいます。

ハワイ、マウイの山火事による被害状況が刻々と伝えられますが、ほぼ全壊した歴史ある街の再建には数千億円がかかるとし、死亡した人が何人になるか想像もつかない状態です。海に逃げたとされる人と救出された人の数の差があまりにも多く、正しい被害状況の把握は困難を極めると思われます。街の再建はお金だけの問題ではなく、人々がそこにまた集まって集落を作るというゼロスタートを切る必要があります。復興には10年以上の月日を要するでしょう。

日本を襲う台風も少しずつ変わってきているような気がします。一番不思議なのは台風の発生地域がかつてはフィリピンあたりだったのが今では日本の南になり、東日本により甚大な被害をもたらすことが増えたように感じます。台風の上陸地点として鹿児島に次いで有名な高知県室戸岬や足摺岬に上陸した台風は2017年以降ありません。また台風が朝鮮半島や更に中国にまで被害を及ぼすようになったこと、日本でも東日本の日本海側に裏側から攻められるケースも出ていることなど台風は何処でもやってくる状況になっています。

1xpert/iStock

台風のみならず、異常高温や干ばつ、大雨など極端な気象現象が世界中で増えていることは深刻というより、都市計画や防災のイロハから見直さねばならない状況にあります。例えば私が超高層のマンションに住みたいと思ったことが一度もない理由はエレベーターや電源喪失はいつ何時も起きかねないからです。避難手段が限られている場合、我々はそれを放棄する以外に手段がないのです。私が事業用土地を買う時は高台であることと地層が頑強であることが絶対条件です。それは水はけと地震などを考えれば住宅開発者として当たり前なのです。

私の元従業員は埼玉県の北部に実家がありましたが、東日本大震災の際、倒壊しました。周りは閑静な住宅街でしたが倒壊したのはその中でもごく一部だけでした。理由はそこがかつて沼地を埋めたためでした。地盤というのは極めて重要で、湾岸にある高層マンションには私は怖くて住めないのです。今、多くの人はあの震災を忘れつつあり、いつかはまたそれが起きるであろうという専門家の予想は聞いたフリでスルーです。しかし災害は忘れたころにやってくることは肝に銘じるべきでしょう。

また、疎開できる第二の場所を持つこともリスク管理としては重要です。これは大戦の空襲時に多くの人が疎開地を求めてさまよったことの教訓です。東日本大震災の時にも原発事故で多くの人が西日本や場合により海外にまでその場所を求めた人もいました。しかし、災害の時には車も期待できないし、新幹線や飛行機も限定されます。極端に遠いところでは対応できないかもしれません。私は自転車で移動できる100キロ圏内という発想をします。直線距離と実際の距離は違うのですがポイントは疎開しやすい現在と諸条件が違うところだと思います。山間部は道路のう回が出来ないので避けたいところです。

暑さ対策の一つは舗装したところと都市熱から離れることかと思います。田畑が広がっているところで打ち水でもすればそれなりに対策にはなるかと思います。皆さん、諸条件があるのでなかなか思った通りにはならないと思いますが、いろいろ考えを巡らせると思いつくことは多いのではないでしょうか?

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年8月17日の記事より転載させていただきました。