夏のこの時期は国会がない一方、政治家が様々な活動をする時期でもあります。かつてお盆の頃は政治家の外遊は当たり前のようなものでした。コロナ明けで外遊復活となった途端、自民女性局38名のフランス研修旅行がSNSに掲載された奇妙な写真が発端で大炎上しました。旅費に誰がいくら払ったか、という話はタブロイド紙のお得意分野ですのでそちらにお任せしますが、この手の研修旅行はまるで農協の団体旅行のようであまり格好よくありませんね。
研修旅行がやりにくくなった背景もあります。その一つはオンブズマンが細かいチャチャを入れるからで現地のこと細かい行動やその支払額などが報告され、追及のネタになります。当然ながら庶民感覚とかけ離れた食べ物を食べたり、観光なのか研修なのかわからないような場合には厳しく責められます。
私も以前、同様の研修旅行の現地案内人としてお手伝いしたことがありますが、その団体はかなり真面目でレポートもしっかり作っていました。座長の意識の問題でありましょう。その点からは自民女性局はネジが4-5本飛んでいた、ということです。「自らに甘い」典型ですね。
さて、座長といえば自民党清和政策研究会、通称安倍派の会長席が不在のまま、2人+5人の集団指導体制となっていましたが、今般、塩谷立氏が「座長」という称号を得ました。会長ではなく、座長であり、あくまでも集団指導体制の中の意見とりまとめ役という形であります。では7人衆の中でなぜ、塩谷氏だったのかといえば彼が10期務めており、7人衆では一番長いうえに、ドン森からのお墨付きを頂いたこともあります。ちなみに下村博文氏は9期、他の5人衆は5-8期です。長老を祭り上げただけであり、実力や将来を見据えたものではありません。塩谷氏と対立していた下村氏の去就も気になります。
この清和政策研究会は自民の中では本来は傍流でした。保守本流は宏池会や平成研究会ですが、清和政策研究会が反吉田茂路線で親米、憲法改正、再軍備などのタカ派的なところがあり、自民党好きのおじさま方にはたまらない響きなのであります。「シニア右翼」(古谷経衡著)を読むとある意味、爆笑ものの「自民一つ覚え」のニッポンのおじさまの様子が手に取るようにわかります。
これは実は共産党の話にもつながります。志位和夫委員長は日本のプーチンか、と言いたくなるほどの長期政権で既に22年を超えています。志位さんは東大物理工学科を卒業した相当頭が切れる人物とされます。「Youはなぜ、そんなに委員長が好きなの?」と聞けば「それがなぜ悪い?俺は何一つ、悪いことをしていない」と返します。そして共産党の自慢は「戦前戦後を通じてずっと同じ政党の名前を貫いているのは私たちだけです」といかにも由緒正しいニッポンの本流(になれない)政党というわけです。
ここではっと気がつく方がいらっしゃるかもしれませんが、自民の清和政策研究会もそもそもは岸信介氏の日本自由党が源流であり、岸氏は先日のブログで記載した通り戦前と戦後をつないだ人物の一人であり、ある意味日本社会のフィクサーでもあるわけです。つまり、日本は歴史を重んじ、戦争という断絶期間があっても脈々と続いていることに特別の価値観を置くようです。繰り返しますが私はそれを善悪の括りでは判断しません。それが日本の特筆すべき社会構造なのです。
しかし、日本が民主主義でかつ、与党に一定の刺激を与えるためには野党には頑張ってもらわねばなりません。その中で立憲民主党の不甲斐なさが報じられ、泉代表が次の選挙でケツを割りそうなニュアンスの発言をする中で「志」がない点、同じ「志」が名前につく「志位」さんはブレない点ではまともなのかもしれません。
さて、野党が野党を貫くのか、与党にすり寄るのか、大事な一戦を控えるのが国民民主党であります。党代表選挙を9月2日に控えますが、現代表の玉木氏に対して前原誠司氏が打って出ます。その主義主張は好対照ですが、基本的に前原氏は前科があり過ぎてベテランほど彼になびかないとみています。玉木氏有利というのが現状ではないかと思います。前原氏は京大で学者になるほど頭脳明晰ではなく、外交官になりやすかった東大でもない、母子家庭で苦労したので選択したのが松下政経塾で箔をつけるでした。
前原氏の話はこのブログで書ききれないほどあると思いますが、皆さんもご記憶にあろうかと思いますので控えます。むしろ、「昔の名前でやっています、前原誠司」が敗者復活戦に挑むのか、王者、玉木雄一郎が防衛を果たすのか、このタイトルマッチはある意味、後楽園ホールでやってもらいたい試合であります。
よもや話なので何をどうまとめるか、難しいのですが、日本の政治も全体的に制度疲労と時代の変化に今後、どう対応するのか、という大きな課題が残りそうです。政治家は法律を作る人ですが、その政治家を取り締まる仕組みがないのは規律監督の機能欠落である点は掲げておきます。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年8月18日の記事より転載させていただきました。