就職の選択、安定か、チャレンジか?:事細かい管理業務に縛られる日本企業

ある会社は従業員数が数千人の規模を誇りますが、利益は毎年5000万円程度しか出ません。もう一つの会社は従業員が10人ほどの会社ですが、利益は1億円を超えます。さて、あなたが就職するならどちらを選ぶでしょうか?

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自分が社長になるわけではないので居心地の良い方に行きたい、と思う人もいると思いますが、やはり利益が出る会社は勢いが違います。私の知る会社も従業員を全員ハワイ旅行に連れて行くなど社員への配慮や福利厚生が整っているのは経営に余力があるからでしょう。

厚労省の資料に基づく勤続年数の推移をみると男性の場合は80-90年代と伸び続け、2000年頃に勤続年数がほぼ14年程度になった後、今日に至るまでほぼ横ばい、女性は80年代から今日に至るまで微増を続け現在は9年台となっています。男性の勤続年数がこの20数年横ばいということは退職数が相当数いるということかと思いますので終身雇用制度は明らかに退化していると言えます。

2000年初頭はご記憶の通り、ITバブルで三木谷、堀江、村上各氏など若手が名を馳せ、MBAブームもあり、30代でIPOするのが一種の流行になった時代です。それは90年代に起きた企業のリストラと倒産の嵐から自分の身は自分で守るというスタンスに代わった新しい幕開けだったとも言えます。そういう意味では働き方が実質的に変わったのは2000年代になってからで、それから二十数年して政府が「働き方改革」を提唱するというのもずいぶん間の抜けた話だとも言えます。

先日、日本の労働生産性が上がらないという話をしましたが、日本の場合、大卒を総合職と称して採用し、実質的なホワイトカラー職としています。つまり、管理職や管理職の卵たちであって生産現場はロボットであったり、外国にあったりもするわけです。つまり、ほとんど現場を知らない人たちが書類と数字とパソコン画面だけで事細かい管理業務に縛られているわけです。

こんな仕事、私ならさっさと辞めます。何一つ面白くないです。商売の基本は客の顔を見る、客の商品への興味を見る、客と交渉をする、そして購入いただき、アフターケアをする、これがビジネスをするうえで8割の情報であり、結果を占めるのです。残り2割がマーケティングや仕入れ、経理、法務、人事といった管理業務です。マーケティング志望の若者が極めて多いのですが、現場知らずにマーケティングをどうやるのか、私には理解が出来ません。

ではスタートアップならどうでしょうか?個人的にはそれも一長一短だと思います。なぜならスタートアップ企業は総じて創業者の熱い思いが前提にあり、時として従業員に無理難題を非論理的に押し付けてくることもあるからです。最終的に自分が何を学びたいか次第ですが、比較的芽があるのは成長過程にある中小企業や新興企業なのかもしれません。

カナダで採用面接をすると日本人とローカルではある決定的な差があります。それは給与/報酬額がローカルの人は期待通りでなければ完全スルーされ、採用に至りません。日本人の人はその仕事が自分の糧になれば頑張る人も多いというのが印象です。

しかし、給与に釣られて職を転々とする人ほど最終的には何の技術も経験もノウハウも持たない人が多いというのもこれまた事実です。初めの数年間はローカル企業より給与水準は見劣りするかもしれないけれど経験を積んだらグイと上がる、こんな給与体系であれば経営者と従業員はウィンウィンの関係になるのでしょう。

ただ、私の見る限り、お勤めの人は自分が勤める会社の社内ルールや仕組みにこそ精通するものの応用が全く効かないという方もお見掛けします。セールスには商売敵の長所短所を知り抜いたうえで自分の商品がどう優れているのかを見せることでセールストークになります。しかし、多くの企業体質は自社のことだけに集中している、そして他社のそれは価格面など表層的な部分でしか、参照にしないことはあるのでしょう。

そこまでしっかり考えて就職活動をしている人がどれだけいるのかわかりませんが、就職とは自分の家族よりも長い時間を過ごすこともある結婚と同じぐらいの意味合いがあります。それ踏まえ、短期間の恋愛経験とするのか、腰掛にするのか、共に育めるのか、といった視点で考えると就活で50社受験しましたという話にはならないと思うのですが。

この辺りは私にはもう別世界ということなのでしょうね。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年8月22日の記事より転載させていただきました。