黒坂岳央です。
世間一般論では「ホワイト企業に入ることは勝ち組で、メリットづくし」というイメージがある。確かに中小零細やベンチャー企業より充実している部分は多い、だが逆にデメリットは一切何もないのだろうか?
筆者はブラック、ホワイト両方で勤務経験があるのでわかるつもりだが、ホワイト企業勤務は必ずしも「全員」に向いているわけではないと感じる。実際、筆者の肌にはあまり合わなかった部分もあった。あまり指摘されることが少ない、ホワイト企業のネガティブポイントについてあえて私見を取り上げたい。
※ホワイト企業と一口に言っても、人によってイメージが異なるので「パワハラ、セクハラは皆無。基本的に残業なし、あっても満額残業代支給と代休あり。年収とボーナスは多い。社内の雰囲気は柔和で安定的に働く環境が整っている」といった安定した日本の大企業イメージを想定して取り上げる。
そしてお断りしておくが、全員必ず当てはまるといった、極論や二元論的主張ではなくあくまで「傾向」という前提をご理解頂きたい。
1.ハングリー精神がなくなる
中小零細のベンチャー企業からホワイト企業へ移って驚いたのは、「正社員で残業がない会社は世の中にあったのか」ということだった。それだけではなく、社内には柔和で優しい人ばかり。残って仕事をしていたら「頑張りすぎず早く帰ろうね」と言われる。前職とのあまりの環境の違いに「すごくいい会社で転職してよかった!」と妻に興奮気味に報告したことを覚えている。反感を覚えるようなシチュエーションは皆無であり、落ち着いて心穏やかに働いていた。
しかし、ほどなくて「このままでいいのだろうか?」と不安を感じるようになった。多くの社員が定年まで勤め上げ、退職して起業するとか転職する社員はほとんどいない。確かに働きやすい職場で、みんな和気あいあいとのんびり働いている。その反面、一生懸命、スキルアップなどの自己研鑽に励む社員は多くなかったように思う。
あまりに快適な環境に身を置くと、ハングリー精神は失われる。自分は上昇志向があり、環境に左右されず常に上を目指して頑張れる人格が備わったと信じていたが、あまりにゆるい環境に身を置き続けると「まあ今すぐでなくていいか」と必要なことをドンドン未来へ先送りしていたことに気づいて愕然とした。
ホワイト企業はあまりに穏やかな環境であるため、それに慣れすぎるといざ厳しい労働市場に身を置くと到底耐えられないだろう。これは野生の動物を動物園に連れてくると狩りができなくなり、野生へ戻すことができなくなるのと似ている。
2.視野が狭くなる
ホワイト企業で働くと、あまりに快適な環境のため「いかにこの待遇を維持するか」が最適解になる。実際、会社にぶら下がっているような印象を受ける社員はかなり多かったと思う。
そうなると、目線は社内で自分の地位を確保することに主眼が置かれ、就業時間外に自助努力でスキルアップをしたり、労働市場のトレンドや先端の技術を学ぶことより上司に嫌われない処世術とか、飲み会での振る舞いを重要視するようになる人もいる。
確かに強い人事権を持つ上司に好かれることは非常に重要である。だが、そのことを重視しすぎて個のビジネスマンとしての力を磨くことを忘れてしまうと、生殺与奪を上司や会社に委ねてしまうことになるだろう。変化の早い時代、人生の運命を会社や上司に預けてしまうのではなく、何が起きても素早く環境変化に対応してサバイブできる実力をつけることが重要だと思う。
居心地が良すぎる環境に身を置くと、視野が狭くなってしまいがちではないだろうか。
3.挑戦しなくなる
最後は挑戦しなくなるというデメリットである。
ホワイト企業で正社員になれば、社会的に大きな問題を起こさない限りは早々クビになることはない。だから果敢にリスクを取って難しいプロジェクトに挑戦して成功裏に導くとか、誰よりも努力をして昇進を目指すということをしなくてもとりあえず安定的に給与が振り込まれ続けることになる。
ホワイト企業におけるリスクリワードはあまり良くないので、筆者のように起業して平和に暮らせる動物園を飛び出して、野生のサバンナへ自ら旅立つ人など圧倒的な少数派になる。
だが、特に人生の前半戦で挑戦することは極めて重要になる。若ければ体力も吸収力も感受性も豊富なので、同じ挑戦をするならその分有利になる局面も多い(その逆に年齢を重ねる方が有利なこともあるが)。若いうちにたくさん失敗しておかなければ、中高年からの挑戦で勇気を振り絞ることはドンドン難しくなる。
自分は起業でも勉強でも、年齢が原因でできなくなることなどほとんどないと思っているが、若い時に挑戦しない人は年を取るとさらに保守的になってしまうだろう。そうなると人生の可能性は少しずつ閉じられてしまう。
◇
今回、悪い話ばかりをしているようで恐縮だが、ホワイト企業で働くメリットは悪いこと以上に遥かに数多く存在する。だが今更自分が取り上げても目新しいことは言えない。なので今回はあまり語られない側面を取り上げた次第だ。ひたすらホワイト企業の悪い面だけをみて、敵視している訳ではないことをご理解頂きたい。
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