概算要求公表直前!予算資料の読み方を理解しておこう

8月末は国家予算策定プロセスの重要なタイミングです。各省庁が、次年度に実施する予算の見積もりを財務省に提示する概算要求の内容が公表されるからです。

概算要求の内容は、年末の政府予算案決定に向けて、金額は多少変化したり、対象はしぼられたりすることはありますが、基本的に概算要求に乗った政策の多くは実現します。いわば近い将来に実現される可能性が高い政策集なのです。予算の本質は、望ましい社会の方向に国民が向かうようにしむけるインセンティブです。

例えば、国内のエネルギー消費を効率化するという目的があれば、企業などが省エネ設備を導入する場合の費用を補助する予算が作られるでしょうし、こどもの居場所づくりやこどもの見守り活動を活発化させたいという目的があれば、こども食堂や子ども宅食を実施する団体向けの補助金が新設されます。それによって、省エネ設備を導入する経営者は増えるでしょうし、こどもを支援する活動が拡大します。

このように、予算はかなり直接的に人々の行動を変えることができる強力なツールです。そんなツールの内容が、(その予算が適用される)来年4月の半年以上前から明らかにされているのです。

政策の動きを先読みしたい人にとっては、必修科目ですね。

今回は、8月末に公開される概算要求の内容を解像度高く理解する方法を解説します。

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予算の基本構造(概算要求基準とは)

現在の予算の組み方は、既存の他の分野の予算を減らして、政府が推進する政策に重点的に予算を付けています。

概算要求の前に、財務省は概算要求基準というものを示します。これは、各省庁があれもこれもと際限なく予算要求してくることを防ぐために、各省庁が概算要求を財務省にするにあたって、考慮すべき内容について示しています。

概算要求基準を公表する理由は、予算の膨張を防ぐためです。

仮に、各省庁が提案してもよい予算の額についてなんら制限がないとしましょう。

その場合、各省庁は自らが責任を負っている政策分野を進めるために、あれもこれもと予算要求することになります。それだけでは部分最適を追求した予算になっていまします。

予算の本質を国民の行動変容のためのインセンティブと考えれば、先ほどの省エネ設備の導入予算も、極論9割国が負担することもあり得るわけです。

何も制限がなければこのように無尽蔵に予算が膨らむことになりますが、果たしてその予算は正しいのでしょうか。自己負担が1割ならば、あまりその設備が必要ないような経営者も購入するかもしれません。そうなると予算は無駄に使われることになります。また、国の負担が多ければ多いほど、その政策につける予算額は膨らむので、結果として、他の予算が実現できなくなってしまいます。なんでもかんでも予算を付けるのはよくないのです

その点、財務省は国のお財布を預かり、国が破綻しないように安定して財政運営する役割を担っているので、全体最適を追求します。他の省庁からいわれたとおりに予算を配分するわけにはいきませんし、際限なく要求された場合に大幅に減額する査定をするのも一苦労です。

そのため、概算要求基準において一定の基準(予算の枠)を示し、各省庁が予算の要求をする段階で、予算の総額が一定の範囲に収まるように、そして政府として推進したい重要政策推進枠については、知恵を絞った新しい予算を提案してくるように工夫しているのです。

それでは、今年の予算要求のポイントや概算要求資料の読み方のコツなどを、しっかり解説していきますのでご覧ください。

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(執筆:西川貴清、監修:千正康裕)

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編集部より:この記事は元厚生労働省、千正康裕氏(株式会社千正組代表取締役)のnote 2023年8月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。