黒坂岳央です。
「円安とインフレで海外旅行へいくハードルが高くなった」という声が聞こえる。
この指摘は正しい。2022年1月は1ドル115円だったものが、146円前後を推移している。これは円の持つ米国の商品サービスに対する購買力が20%低下したことを意味する。海外のインフレ状況は一時のピークからは緩和するもまだまだ高い。為替介入を警戒する人も出てくるも、日銀の売り玉には限りがあり、今後どうなるか予測することは難しい。
「海外旅行はハードルが高い。国内旅行へ切り替えよう」という意見もある。だが、長期的に見て宿泊を伴う国内旅行はこれから高くなっていく材料が揃っている。すべてが悲観的な状況ではないが、少なくとも旅行を楽しみたい消費者には逆風が吹くことになるだろう。もしかしたら、今のうちに国内宿泊旅行を存分に楽しんでおく方がいいかもしれない。
息を吹き返した宿泊産業
ホテルの価格が急騰している。コロナ禍と比べて1.5倍から2倍以上になっている。さらにホテルの開業ラッシュが続いており、あちこちで新規のホテルが作られている。
また、フェアフィールド・バイ・マリオット・兵庫淡路島福良についていえば、ターゲットは国内の日本人ではなく外国人のインバウンド客を見据えてのものであり5割が目標なのだという。コロナで大打撃を受けた宿泊産業がなんとか息を吹き返した格好だ。
だが依然として課題は残されている。最大の課題は労働力不足だ。コロナ禍で大打撃を受けた宿泊施設は、解雇を余儀なくされた。コロナ明けの今、簡単には労働力は戻ってこない。どこの産業も人手不足だからだ。特に宿泊業は労働集約型産業であり、ロボットやAIで代替できる部分はかなり限定的になる。
筆者は7月と8月で仕事で4回の県外出張に出かけた。その際、あちこちビジネスホテルに宿泊したが、アメニティの多くはフロントでのセルフサービスとなっており、各部屋へのアメニティの設置もままならない様子が伝わってきた。
これから宿泊施設が高くなる理由
最近、どこの街でもスーツケースを持った外国人の姿をよく見かけるのは気のせいではない。日本政府観光局の発表によると、2023年の6月の訪日外国人数はコロナ前の7割の水準を回復。2023年推計値は5.9兆円とすでにコロナ前を超えたのは、円安による消費が旺盛な理由もあるはずだ。
溜まっていた消費意欲が爆発したことで、観光客は大いに日本旅行を楽しんでいるようである。日本経済へマネーの循環が起きていること自体は大変喜ばしいことだ。
それに伴って宿泊産業は大盛りあがりだ。筆者がビジネスホテルに宿泊した時も、大幅な値上げが続いているにも関わらず、同じホテルに連泊したくても全室予約済で、泣く泣く別のホテルを必死に探して予約を入れるということが何度もあった。
値段が上がっているのに、予約が全然取れないのは外国人観光客の利用が増えているからだろう。実際、フロントや朝食会場は英語、韓国語、中国語が飛び交っていた。
売上があるのに人手が足りない。人件費の賃上げで人を集めて宿泊料へ価格転嫁することでしか対応する方法はないだろう。そしてこのトレンドは加速する。なぜなら日本の労働力は減少し続けることが確定的である一方、日本にやってくる外国人観光客は増え続けているからだ。
日本経済全体で見れば、外国人観光客が見向きもしない状況よりはるかに良いはずだが、この値上げは日本人消費者には逆風になる。日帰り旅行ならまだしも、家族でそこそこのグレードのホテルに泊まるのはハードルが高くなってしまうのだ。
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ハードルが高くなった海外旅行で、国内旅行へスイッチする人も増えたがここへ来て、今後は国内旅行もハードルが高くなる公算が大きい状況が浮き彫りになった。ホテルや旅館ではなく、エアビーアンドビーやネットカフェなどの簡易宿泊に注目が集まることで、こちらも盛り上がる可能性もある。
いずれにせよ、国内旅行における環境変化の認識をすることで、豪華な国内旅行は早めにいっておく方がいいかもしれない。
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