1グラム1万円、金は財産になるのか?

円安ということもあり、日本ではついに金価格が1グラム1万円という値をつけています。1999年にグラム当たり1000円を切っていた時代もあるのでそこだけ切り取ってみれば23年で10倍です。これを「財テク」の一手段と考えるのかどうかは個人のお好み次第といえそうです。

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私の知り合いの方とある時、お金の話をしていたら「実はうちには金がかなりあるの」と。ご主人の方針らしく、ご丁寧に現物で所有されているようです。ただ、現物で持っていても安全ではないし、日本のような貸金庫が何処にでもあるわけではないし、時々眺めてニヤつくわけでもないとは思いますが一部の方には根強い人気があります。

日本人はその点、金に対する欲望は低く、そもそも「金利がつかない」と断じてしまう方もそれなりいらっしゃいます。確かに金は商品相場の一角であり、金融商品ではない点、金利を振りかざされると話が進まなくなります。

商品相場というのは日常生活や経済活動をするうえで必要な一次産品の取引価格を決めるもので一定量の供給と需要が必ずあるものを季節や経済状況を織り込んで価格付けするものです。それこそ鉱物資源から野菜まで幅広く扱われています。私は得手ではないですが、時々原油先物を買います。しかし原油を自前で持ちたいとは思わないし、貯蔵もできません。ところが金となれば太古からその輝きに魅せられ、一時期は金本位制といって国家が発行する政府通貨の発行量を決める重要な算段でありました。

では現在の金の立ち位置は何でしょうか?この20数年、ずっと金とつかず離れずの関係で相場を見続けた者としていうなら世の中の物価を反映し、かつ、基軸通貨ドルの補完関係にある素直な商品と考えています。

まず大事なことは金相場はドル建てがベースである点です。現在、米ドルは他国通貨に対して強いのでドル建ての金価格は比較的、頭を抑えられ1950㌦あたりです。このところの相場も1900㌦から2000㌦のあたりで落ち着いています。金相場が高値を維持しているのは世の中の物価水準が上がっているためもありますが、採掘コストがインフレに合わせるように上昇しているからです。1200㌦程度が直接コストですから金相場が今より下がれば金採掘業者は採掘を止めるしかなく、その場合は需給が逆転するので金相場は当然上がります。

日本では円安のために金価格が円ベースでどんどん上がってしまった、これが答えになります。近い将来、仮に円高になった場合には為替上の円建て金価格は下がりますが、ドル建ての金価格が上昇します。つまり為替のリスクはそこで相殺されると考えて良いでしょう。つまり1グラム1万円の相場は多少動きはあるものの安定感をもってインフレスライドしていくことになります。

ところでスイスの高級腕時計は日本人には根強い人気ですが、なぜ一本100万円以上するような時計を買うのでしょうか?これは貴金属の希少価値をはやすからです。私もスイス製の時計を20年以上つけていますが、限定品だったので売れば価値はそれなりにあるはずで購入時の2倍にはなっているのでしょう。

日産GTRの現在の前の型、R34型は中古価格が上昇しています。理由はアメリカで許可される25年以上古い車の輸入制限がもうすぐクリアになるからです。R34が活躍したのが99年から2000年初頭でしたので間もなく25年になるため、取引価格は概ねUS40万㌦程度まで跳ね上がっているとされます。また現在のR35型もじわじわ価格が上がっているのは日産がもう新型を作らなくなるのではという噂があるからです。つまり希少価値には高値がつきます。

金も同様で採掘しやすいところがだんだん限られてきたため、採掘コストも上昇、その為、金採掘会社同士のM&Aは常時どこかで起きているような状態です。採掘業者も採掘コストの上昇をいかに抑えるか必死なのです。当然ながらそこには希少価値の金という面も出てくるでしょう。

資産形成という面で見ると近年の日本の方は金融商品という目線が主体になります。銀行預金、投資信託、株の配当やキャピタルゲイン…と数字できっちり見えるものがお好きです。残念ながら不動産の神話が崩れ、長期低落を辿ったこともあり、不動産を投資対象とする人は少なくなりました。最近、都心のマンションをその対象とする投資家も若干増えてきたようですが、一般の人向けではありません。かつては絵画とかゴルフ場会員権相場もずいぶん話題になったものです。

その点、金は抜群の安定感と世界共通の価値意識があります。特に国家が中央銀行を介して購入するケースが多く、政情不安の金ともされるし、金に国境はありません。日本が将来経済がどん底になり、ドル円が200円になったら金はしっかり価格を上昇しますし、売り手と買い手が多く相場は常に立っています。

そう考えるとお題の「金は財産になるのか?」はほぼ断言してYESと申し上げます。ただ、株式のように今日買って来週売って1割儲けたということにはなりません。それこそ、何十年も持つことに意味がある財産であり、個人のポートフォリオの1-2割程度が適正なのかもしれません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年9月6日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。