36歳のオタクが急に趣味にハマれなくなった話

黒坂岳央です。

SNSで「36才のオタクが急にハマれなくなった話」という話がバズっている。昔は漫画やアニメが好きだったのに、年齢を重ねてハマれなくなってしまったというものである。

「分かりすぎて泣いた」
「もはや新手のホラー」

と多くの共感が寄せられている。

自分自身、青春時代の思い出はゲームや漫画、アニメ一色であり、一時期しばらくは離れたものの、現在は月2本ペースで新作ゲームを買ってプレイする30年来のゲーマーなのでその気持ちはよく理解できる。

そしてこれは趣味というカテゴリに留まるものではなく、むしろ心豊かに生きる人生の戦略という大枠で捉えるべき話題に感じる。

Xavier Arnau/iStock

サブカル趣味にハマれなくなる理由

漫画の中でハマれなくなってしまう理由が取り上げられている。まとめると次のとおりだ。

・登場人物は10代、20代が中心。年が離れることで共感できなくなる。
・ハマるには体力と時間が必要。

このように説明されている。これに加えて個人的に思うところとしては、

・人生経験を経ることで、他人の人生をトレースから得られる情報の新鮮味が落ちる。
・たくさんの作品に触れ、過去作品の焼き直し感を覚える。

こうした理由もあると思っている。

自分自身、親になったことでゲームや漫画の登場人物の少年よりも少年の親の心情に共感してしまうことが多くなった。登場人物の年齢と離れてしまうことや、たくさんの作品を楽しむ過程でシナリオや展開の青写真が透けて見えることによって昔ほどの没入感がなくなってしまうという指摘は正しいと感じる。

底辺の世界を描いたカイジやウシジマくんがあれほどの大ヒットを飛ばした理由は、大人が人生を生きていくしんどさや、世知辛い世の中に対して心を打つ名言に共感できるポイントが数多く散りばめられていたからだろう。サブカルにハマる要素には共感が必要であり、年齢を重ねることでそれが難しくなるのだ。

それからSNS漫画の作者の指摘の通り、体力や時間の問題も大きい。自分も一時期、あれだけ好きだったゲームから完全に離れた。それは会社員としてキャリアを真剣に考えたり、起業に挑戦したりとあまりにも忙しくて楽しむ暇がなかったからという理由も大きい。起業が軌道に乗り、時間的な余裕を得たタイミングで、PS4とSwitchを買って再びゲームの世界に戻ってきた。現在はSteamというプラットフォームで継続している。やはり時間の余裕は絶対的に必要なのだ。

継続できるのは創作にまわった人

過去記事、消費に飽きた人は、残りの人生で何をすればいいか?で書いたが、受動的な娯楽のほとんどは必ずといっていいほど「飽き」が待ち受けている。これはサブカルに限った話ではない。あらゆる受け身の娯楽はいつか飽きるのだ。

30代、40代以降でもゲームやアニメなどにハマっている人は何が違うのか? 1つには受動的ではなく、創作性を持たせていることだ。自分は10代の頃、ゲームのタイムアタックコンテストに熱心に応募していた時期があったのだが、その時に知り合ったライバルの一人は今では40代になったがYouTuberとしてゲーム実況者をやっている。非常に人気の配信者で華麗なテクニックや素晴らしい解説にコメント欄はいつも盛り上がっている。彼の場合はゲームというサブカルを受け身ではなく、発信者側としてクリエイティビティを発揮して仕事に昇華している。

また、ブログやYouTubeで素晴らしい作品を解説したりレビューしたりといった仕事をしている人もいる。この場合もやはり、研究者やレビュワーとしてクリエイティビティを余すことなく使っているのだ。彼らは自分が愛する作品を取り上げ、どのシーンが素晴らしかったのか?制作者は何を伝えたかったのか?制作の裏側は?といったことを解説し、記事や動画は作品のファンで熱く盛り上がっている。

趣味に飽きる前提で生きる

「自分は大好きなゲームやアニメがあるから、これだけで一生楽しめる」これはサブカル好きなら一度は考えた経験があるだろう。自分もそうだった。

だが現実的にそれは難しいと言わざるを得ない。人間の飽きの力は想像以上に強力だ。上記の通り、創作性を持たせれば40代以降も戦える人がいると書いたが、そもそも創作できる人はある種の才能の持ち主であることは疑いようもなく、加えて創作している人でさえその道半ばでネタ切れや飽きと戦っている。

ずっとサブカルがメイン、第一主義だった人も、年齢を重ねるとサブカルの位置づけはまさしく「メインではなくサブ」になっていく。人生のメインに来るのは仕事や家族、お金など現実的な問題であることが多い。そうなった時、虚無に襲われ立ち尽くしてしまうことがないようサブカルを過信しすぎない方がいいかもしれない。自分自身、大好きなサブカルと疎遠になってしまう日を覚悟している。

 

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