行政への不信がマイナンバーの問題という意見に対して

マイナンバーの積極的な利用を唱えると、「行政への不信」を理由に反論する人がいる。一見もっともらしいが、どうしても理解できない。

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種々の行政情報を紐づけして一覧できれば、その個人が「丸裸」にされるという意見がある。

そんな操作をするとしたら、実行者は、政務三役(大臣・副大臣・政務官)ではなく、行政職員である。ある行政職員がそんな操作をしたとして他の行政職員は見て見ぬふりをするのだろうか。「行政への不信」は行政職員への不信に他ならないのだが、発言者はそれを理解して発言しているのか。行政職員が組織する労働組合が支持する政党関係者が「行政への不信」と発言するのは、支援者を侮辱するに等しいと発言者は理解しているのだろうか。

紐づけしないにしても、マイナンバーがわかれば、個人情報が無断で行政職員に知られてしまう。だから問題だという意見もある。

銀行の口座情報がわかれば銀行員は口座の中身を知ることができるのだが、だれもそんな心配はしない。個人情報が無断で行政職員に知られるので困るという意見は、行政職員は銀行員よりもレベルが低いというに等しいのだが、発言者は理解しているのだろうか。

そもそもどんな取引でも、相手が信用できない時には、普通の人は取引内容を慎重に確認する。思わぬ安値でブランド品が入手できるとなったら、普通は本物かを確認する。

マイナンバーの紐づけミスが報道され、やっぱり行政は信頼できないと思った人は、自分の行政情報で紐づけミスが起きていないかを確認するはずだ。マイナーポータルで確認は容易にできるし、ミスが判明したら行政に修正を求めればよい。「行政への不信」を口にする人たちの多くは、信頼できない行政が間違いを修正するのをじっと待ち、遅い遅いとあげつらう。

だから僕は「行政への不信」を口にする人たちの意見が理解できない。

ところで、情報通信政策フォーラム(ICPF)では、マイナンバー問題の解決に向けて議論するセミナーを連続開催している。第2回は「エストニアに学ぶ」。9月26日に開催するので、ぜひご参加ください。