パリ国立オペラ座バレエ「マノン」

パリ国立オペラ座バレエ、「マノン」マクミラン。

とても久しぶりの上演。前回はなんと8年前。レティシアが相性よいマチューと見事なマノンを披露し、引退するオレリーが圧巻の踊りと演技で君臨し(デグリュー怪我しちゃって、ボッレがわざわざ助っ人出来た)、ユゴがドロテに導かれて衝撃の主役デビューを果たした(バレエ親友も私も、この夜のユゴが今まで見た中で最高だと思ってる)。

(8年前の写真&感想、最後に載せています)

2月くらいに、”ミリアム&マチューがあるよ!”と聞いて、お願いだから怪我しませんように、と祈りながら待ち焦がれていた、今シーズン一番楽しみにしていた作品&配役。

たか~い期待を裏切らない、極上の舞台~。

大好きミリアムが演じる、今夜が最初で最後のマノン体験。あと2回踊るのだけど、両日とも塞がっていて残念無念。なので、見方にとっても気合入る。

ミリアムが舞台にいるシーンは、脇であれ奥であれ、1秒足りとも彼女から視線を離さない。

たおやかで、愛くるしく、美しく、繊細で、ポエティックで、ドラマティックで、妖精じみていて、心揺さぶられる。入団当時から惚れ切っている、首から指先のラインと動き、今宵も一寸の隙なく美しい。あまりに素敵で、見ていて目が痛いくらい。

1幕最初のパ・ド・ドゥ、なんて愛らしいこと・・。全て良かったけど、強いていえばベッドに飛び込むシーンが、ほんの少しチャームに欠けた?わざとの演技?

これが彼女のマノンデビュー。もったいない・・。前回、産休だったのかしら?

幕間はもちろん、バレエ友たちと、ミリアム讃歌にあけくれる。

相手がマチューでほんとよかった。ここ数年マチアスがいなかったので、ミリアムの相手は苦手なダンサーばかりで辟易していてた。今回、マチアスはレオノールと組むけれど、役的にはマチューかジェルマンが最高なはずなので、作品的にも完璧なカップリング。

ロマンティックでナイーヴな、申し分ないデグリュー。ロマンティックで哀れな役、マチュー似合う。立ち姿完璧、柔らかな演技もミリアムとの相性もよく、見ていてとても心地いい。

大好きパブロのレスコー、適役だし決して悪くない。のだけれど、この役、私にとってはデフォルトがカデール、2番手にヤンとフランソワという、この手の演技力において比類ない超演技派俳優ダンサーなので、比べちゃうとどうしても、ね。登場シーン、瞳の演技が見えるよう、もう少し顔上げるとよいと思うのだけれどな。

愛人も、デフォルトがマリ=アニエスなので、彼女とロクサーヌを比べちゃかわいそう。役にあってて頑張ってたけど、ちょっと人間味が足りない?とはいえ、マノンとデグリュー見るのに忙しく、あまり視線を向けてなかった。

久々の「マノン」を堪能。ミリアムラヴァーの親友とうるむ目を交わし合いながら、夢中になって拍手を送る。

来シーズンでついに引退、信じられない信じたくない、、。残されたあと数回のミリアム体験が、どうぞ感動的なものでありますよう。

今夜は夏至。23時近く、ガルニエの西の空はまだまだ明るく、フェットドラミュージック(音楽祭)の日なので、至る所で賑やかな音楽会。

また来週、パレ・ガルニエ。

以下、2018年4〜5月の感想です。

オペラ座バレエ、マノン。レティシアが見たくて、珍しく初日のチケット買った。初日は基本、避ける。ダンサーたちがまだまだ作品に入り込んでいなくてこなれてないのだもの。今夜もそう。みんな、18世紀じゃなくて21世紀に生きている感じ。

1人がんばったのはレティシア。技術完璧、腕美しく、表情過不足なく饒舌。昔からの大好きダンサーの初マノン。年齢的にどうかな、と思っていたのはまったくの杞憂。おみごと!マチューは、マチューにしては足下ぐらつくことも多く、絶好調ではないのが残念。でもまあ、美しいデグリュー。

オレリー・デュポンのアデュー公演はマノン(ほんとは、椿姫でラストを飾りたかったらしい。2年前にアニエスがやっちゃったからねえ・・)。エルヴェが怪我したため、ロベルト・ボッレをゲストに呼んだ(他のオペラ座ダンサーでは役不足ということ(笑)。まあ、気持ちは分かる)。

先月の初日とは、まったく違う舞台。コールは気持ちよく作品になじんでいるし、なにより主役2人が圧巻。オレリの完璧すぎる技術と表現に、ボッレがこれまた完璧に華々しく寄り添ってくる。まるでジャズのセッションの掛け合いみたいな、エッジが効いて火花がきらきら舞い散るようなパドゥドゥの数々。あんなに喜び満ちあふれて輝かしい寝室のパトゥドゥ、初めてだ。あまりにまぶしくて美しくて涙がこぼれる。

オレリの、身体能力の高さにも増す女優力を堪能。細胞の一つ一つが何かを表現しているみたいな細かなニュアンス、本当に素晴らしい。やっぱりマノンでなく椿姫で最後を見たかったなあ。マノン、2幕まではいいけれど、3幕は衣装も髪も可愛くないし踊りもデグリュー中心だし。

久しぶりのボッレ、彼はマニュの進化版だと改めて思う(文句なしの体格と顔は、マニュにはなかったけれど)。マニュみたいに、舞台にいるだけでそこが輝き、全身全霊が踊る喜びに包まれる感じで、完璧な技術をサクサクこなし、同時に役作りもソツない。今のパリのエトワール達には誰も出来ないこと。みんな、自分の中に不安を抱えていたり、観客にその不安感が伝わって来たり、いかにも一生懸命踊ってます!みたいになっちゃったり・・。強いて言えばエルヴェとマチアスが一番近いかな。ジョゼやニコラ、ローラン、マニュみたいな、完璧な技術と安心感があってどんな役でも踊りこなせるダンサーが、ちょっと恋しい。

オレリは、マノンを5回踊ってオペラ座を去る。毎夜スタンディングオーベーションだ、と聞いていたけれど、今夜もそう。オペラ座の至宝ダンサーの最後の舞台に、会場が感動に包まれた。

17年間の感動に、心からメルシーボク、オレリ。

夕べのマノン。デ・グリューを踊ったユーゴ・マルシャンに感動!

今年スジェにあがったばかりの未来のエトワール君。技術はもちろんちょこちょこ不備があるけれど、オペラ座で初めて見るようなそれは見事なアラベスクに感嘆。そして、リリックでしなやか、ポエティックでちょっとナイーヴで愛情と苦悩あふれる演技に息をのむ。オペラ座で少なくとも15回は見て来たマノンだけど、最上のデ・グリューだなあ。1幕最初のヴァリアシオンと3幕ラストシーン、最高。泣ける。レヴェランスの時、ずっと放心状態の顔がまたいい。来シーズンは、是非ロメオを踊ってほしい。そしていつか椿姫のアルマンも、ね。

フランソワのレスコーも、見事すぎる技術に加え、こちらも芸達者なのですばらしいできばえ。カデール、そしてヤン・サイズ以来初めて、納得できるレスコーに出会えた。

ヤンの小技が利いた演技もさすがで、男子3名の演技力の素晴らしさに圧倒されたマノン最終日。初日のレティシア&マチューよりも、先週のオレリ&ボッレよりも、今夜が(マノンがいまひとつだったにも関わらず(笑))一番。あー、いいソワレだった。


編集部より:この記事は加納雪乃さんのブログ「パリのおいしい日々5」2023年6月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「パリのおいしい日々5」をご覧ください。