「なぜ安倍氏を失った『安倍派』は迷走しているのか…反LGBT、韓国嫌悪、公明批判を連呼する保守派の”限界”『安倍レガシー』は日本人全体の財産のはず」という記事を別の媒体で書いたので読んでいただきたいが、ここでは、保守派から来た批判に対する反論をしておこう。
「安倍氏は『保守派の愛国者』でありながら、立場の違う人とも対話できる稀有な政治家だった。しかし残念ながら、現在、安倍氏のレガシーは保守派だけに独占されている」ことを心配したものだ。
岩盤保守の3割は安倍氏にとって頼りになる存在だったが、7割の日本人の支持があったからこそ安倍氏はレガシーを残せたことを忘れてはならない。
安倍氏には中道リベラルにも支持される別の顔があった。20年9月の安倍氏退陣時の朝日新聞世論調査によると、実績評価について71%が「評価する」と答えた。22年7月の暗殺直後の世論調査でもあまり変わらず、安倍政権に対する国民の高い満足度を証明している。
安倍晋三元首相は、岩盤保守層の支持を大切にした。首相在任中は、30%の保守層の支持を得て政権が倒れない下支えにし、選挙のときはより幅広い50%程度の支持を獲得して議席を伸ばした。
保守派は、安倍氏のやったことより、「右に振れることは忠義である」という様なことをいう。その一方、そのままとか、左に振れたら裏切りといわんばかりだ。
安倍氏が「性自認」を重視することに反対だったとか、関係団体のことを心配していたのは事実だ。しかし、保守派の多くの人のようにLGBT全般に否定的だったわけでもなく、立法化を党の公約として掲げていたのである。
このところ保守派で、明治維新を貶して「江戸時代のほうが明治より良かった」などと褒める、田中優子氏などの仲間みたいな保守派がいるが、そういう人たちは、吉田松陰と高杉晋作の後継者である安倍氏と対極にあるはずで、同志たり得ないだろう。
安倍政権を一貫して支えた公明党への誹謗など故人の顔に泥を塗るものだと思うが、この点については別の機会に書きたい。
安倍氏を超保守派のシンボルにすることは、保守派総体の首を絞めることになりかねない。
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