ロシア軍に参加してウクライナ領ドネツク地方で先頭に従事する日本人の動画が公開され、話題を呼んでいる。
この「カネコ」氏の過去SNS投稿における謎めいた暴言などもあわせて話題となっている。
「カネコ」氏は、ウクライナ軍に日本人がいることに疑問を感じ、ロシア軍に日本人がいてもいいはずだ、という主張を展開している。
思想的には、「親露派」に典型的な反米主義を基軸にした世界観を持つ人物のようである。
しかし、この事件でポイントとなるのは、「カネコ」氏の思想ではない。「カネコ」氏が「ロシア語教師」にロシア軍関係者を斡旋してもらって入隊した、と証言していることである。
どうやらこの「ロシア語教師」は、「カネコ」氏の動画投稿後、SNS記録を全て削除したようである。おそらくは日本人に対するロシア軍入隊の斡旋行為をした証拠を消すためであろう。おそらくは日本人に対するロシア軍入隊の斡旋行為をした証拠を消し、身元を隠したいためであろう。
ウクライナにいる日本人兵は、知られている限り、自分の意思でウクライナの領域主権の及ぶウクライナ領内に移動し、そこで入隊を志願している。日本政府は、ウクライナ政府に日本人対象に義勇兵募集をしないように働きかけているため、日本国内でウクライナ軍入隊の斡旋活動は行われていない。そのためウクライナ軍の日本人兵は、自らの意思でウクライナの領域主権内に移動して、入隊志願している。
これに対して、「カネコ」氏の場合には、日本の領域主権の及ぶ日本国の領域内で、ロシア人によるロシア軍入隊の斡旋を受け、それからロシア軍に入隊している。
そこは、大きな違いである。
日本国内には、約300万人の外国人がいるとされる。そのうち一番多いのが中国人の約75万人だ。これらの外国人が、一斉に自国の軍隊に入隊する斡旋を日本領内で日本人に対して行い始めたら、どうだろうか。つまり75万人の中国人が、日本国内で、日本人に対して、日本政府の意向を全く無視する形で、人民解放軍入隊の斡旋を始めたら、どうなるだろうか。大変な事態である。他国でも聞いたことがない類例のない話であり、主権侵害の疑いが強いだろう。
ましてロシア政府は、その長であり国家元首である大統領が、子どもの強制連れ去りで日本も加入する国際刑事裁判所(ICC)から訴追されている政府である。ICCで戦争犯罪認定されているウクライナ領からのウクライナ国籍の子ども連れ去りについて、ロシア政府は、本人の意思にもとづく保護措置だといった抗弁をする。しかし日本も加入するICCは、その抗弁には根拠がないとして、プーチン大統領を訴追しているのである。
もし北朝鮮が、日本の領土内で連れ去られた拉致被害者は、実は自由意思で北朝鮮軍に義勇兵として入隊を希望してから日本を去ったにすぎないのだ、と主張し始めたら、どうなるだろうか。あるいは本人を威嚇して、又は騙して、そのような証言をする動画を強制的に撮影したら、どうだろうか。当然のことながら、断じて認められない事態である。そのような「斡旋活動」を、北朝鮮関係者が日本国内で行うことも、認められないはずである。
「カネコ」氏事件の背後で暗躍する日本人ロシア軍斡旋活動について、日本政府が、どのような対応を取るのか、今後が注視される。
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