在米の知人と言っても米国人ではなく長く米国に住む日本人で、トランプ政権の頃から「米国は内戦だよ」と言っていた人物。「沼の水を搔い出しているトランプとそれを阻止する勢力との戦い」との思いが筆者と通じていたので、「灯台もと暗し」と言うし「日本は終わってるよ」の意味を忖度してみた。
安倍さんがああいう形で亡くなってから確かに日本で奇妙な現象が起きている。それは立憲・共産や朝日などの左巻きの岸田自民批判と結果的に同じことを、主としてネット番組で保守論客と言われ多くの支持を集める人達が、今、むしろ左巻きの連中以上に激しく主張していることだ。
安倍さんの慰安婦合意でも水島聡氏らの安倍批判があった。が、安倍暗殺で統一教会問題が再燃し、そしてLGBT理解増進法の辺りからネットの保守論客、それは百田尚樹氏であり、門田隆将氏であり、山口敬之氏であったりするが、彼らの岸田自民批判が始まった。その影響力は水島氏のそれとは比べものにならないほど大きい。
その保守論客が左巻き連中と同じように岸田自民を批判するのは、一つは旧統一教会(教団)であり、他はLGBT理解推進法だ。他にも増税やマイナンバーカードなどがあるが、筆者から見ると小事に過ぎないし、再エネにもネット保守論客は批判的だが、左巻きはこれを支持するから状況が異なる。
先ずは教団問題。右も左も岸田自民批判の対象にするが、よくよく見ると左派が批判するのは始めに教団、そしてこれに選挙を依存していたとしての自民批判だ。が、右派の批判は安倍暗殺の背景になったことや日本で集めた金を韓国に送っていること辺りに理由があって、選挙応援などは問題にしていないようだ。
そして岸田総理の教団潰しには右も左も異を唱えていない。が、ネットの保守論客がこの件を批判しないことには異論がある。筆者は左派の教団潰しの目的を、被害者救済に名を借りた「勝共連合潰し」と見ている。共産党やその影響の強い弁護士らが急先鋒だからだ。右がこれに同調するのは如何なものか。
筆者は教団の是非に興味はないが、昨年の内閣改造で岸田総理が過去に教団と関係があったとの理由で多数の閣僚を更迭し、総裁としては自党議員に教団と関係団体(勝共連合も含む)との関係を絶たせ、そして順序を違えて事後的に質問権を7回も行使し教団潰しに走ることは大いに問題視する。
それは左巻き連中に加担することになるのみならず、何より憲法に謳われた信教の自由や宗教法人法を蔑ろにする法治主義への挑戦と考えるからだ。外では「法の支配」を言いながら内では「法治主義を危機に晒す」岸田総理は、この一件を以て除かれるべきだ。
次にLGBT理解推進法。確かに党の特命委員会で決も採らずに先に進めさせ、法案提出前日に萩生田政調会長に維新・国民と調整させた岸田総裁の手法は、余りに拙速かつ強引で問題がある。が、そもそもこの件は安倍さんが行き過ぎた現状に歯止めを掛けるべく、野党に先んじて抑制的な法案を目指したことが濫觴だ。
そのことを知る萩生田氏は土壇場で維新・国民案を丸呑みし、学校でのこの問題の教育には地域と保護者を参画させることにし、かつ80項目ほどやらねばならぬことがあると述べた。厚労省の「女風呂の利用者は外形的に判断する」との通達や、自民党が立ち上げた「女子を護る議連」が先般、27日の最高裁判決を前に「性別変更に手術要件維持」を法相訴えたことなどはその一例だ。
つまり、LGBT法での岸田総裁は救い難いが、自民党にはまだ救いがあるということ。にもかかわらずネットの保守論客は左巻きと一緒になって岸田自民を批判する。批判は良いが、では「T」での行き過ぎた現状にどう歯止めを掛けるのかの議論が、左にはもちろん右にも欠けていることを筆者は嘆かわしく思う。
むろん岸田総理にも評価すべき点がある。安保三文書を成立させ、防衛費を増やし、日米韓同盟を形にして台湾有事と中露北への備えを整えた。が、それらは安倍・管政権のやり残しで、岸田独自の政策には見るべきものはないし、何より前述の根本問題がある。内閣改造よりも、ここは岸田総理に降りてもらい、萩生田・高市に任せないと「日本は終わってるよ」が現実になりかねない。