長期政権を目論むのか、岸田内閣改造人事

首相官邸HPより

9月13日に発表される内閣改造の人事案がほぼ確定したようです。各紙、特報として報じていますが、日本が夜中ということで専門家のコメントはまだ少ないようです。

概括するとバランス人事だとみています。敵を作りにくい、かつ、一定の改善が行われている、そんな風に見えますが、族議員が目立ち、時代の流れに反しているとみる向きもあります。

岸田首相は自民党主導の政権をこれ以上不安定にさせないための布陣にしたという想いでしょう。維新が迫り、国民民主の立ち位置もある意味では不気味になります。更に参政党や百田新党といった注目を浴びる新興勢力の動きもあり、自民党はかつてなく緊張感をもって展開しなければ一気に崩れるリスクさえある状況です。

閣僚人事は政権の安定感を決定づける重要な要因で第2次安倍内閣(12年12月から14年9月まで)は首相と閣僚の歯車がかみ合った近年では最高のチームだったと考えています。それゆえに1年9カ月の長期の間、スキャンダルがほとんどなく、こぼれ落ちる閣僚が少なかったことが特徴で、安倍元首相が全精力を本業に傾けられた時でした。それがその後の長期政権につながった一因と考えています。

岸田政権に於いては第一次内閣が史上最短の38日間だけの組閣でした。戦前の混乱期でもそんな短い内閣は無かったのですが、これは組閣直後の衆議院選が影響したものであくまでも形式的なものとされます。

その後第二次岸田内閣が生まれ21年11月から22年8月まで続きます。8月に第二次岸田第一次改造内閣という舌を噛みそうな正式の名前のもと、今回に至ったわけです。よってこの内閣改造は第三次岸田内閣ということになるかと思います。

ご記憶にある通り、第二次の人事が悪く、今見返してみるとこんな人たちがやっていたのか、と思う人も多いでしょう。コロナ禍で世の中が尋常な状態ではないというハンディはありましたが、人事の岸田と言われる中では面目丸つぶれとも言える采配だったと思います。

今回の人事で私が思ったのは「年寄りが多い」点でしょうか? 概ね60代半ばから70歳に手が届く人が主流です。一番若いのが加藤鮎子氏で44歳にしてこども政策大臣となりました。加藤氏は元官房長官で自民党幹事長だった加藤紘一氏の娘です。

次いで自見英子氏で47歳、当選2回で地方創生大臣を仕留めました。あと小渕優子氏が選対委員長で49歳。この辺りが目立つところで50代が見当たらない気がします。加藤氏と小渕氏は政治家のサラブレッドですので将来にわたって政界で活躍されるのでしょう。その点ではガラスの天井を破るのはむしろ、この世代まで待たねばならないのかも知れません。

この人事を俯瞰すると骨格の部分はしっかり確保しています。麻生、茂木、萩生田、西村、松野氏らを要職にしました。重要ポストで不満なのが鈴木財務大臣の留任かなと。麻生派当選10回という重みで麻生氏が副総理をやるための条件なのだろうと思います。

岸田氏は派閥人事から麻生氏を重用しなくてはいけない関係にあり、麻生氏がいるからこそ、岸田氏が首相ができるようなものです。やむを得ないと言えばやむを得ないのですが、日本の大改革は財務省の改革からだと思いますので岸田内閣の奥底が知れている理由の一つでもありましょう。

外務大臣ですが、林氏を落としたのはやや驚きです。上川陽子氏を指名しましたが、女性の外務大臣は川口順子氏が2002-3年にやったのが最後です。その前になると田中真紀子氏です。江戸末期の慶応時代の外国事務総裁、明治の外務卿など戦前戦後含め、女性の外務大臣はこの3名以外いません。そういう意味では極めて思い切った人事であります。

外相のポジションは多分、閣僚の中で最もハード、かつパワフルな仕事ぶりが求められます。外交センスに優れ、体力があり、かつ自分を売り込むのが上手である必要があります。上川氏がなぜ唐突的に選ばれたのか、気になります。

川口順子氏が外相の時、当地に来訪して朝食会に行ったことがあるのですが、とても普通の庶民的な方で驚いたことがあります。今の外交は時としてブラフが言えるほど自分を大きく見せ、パワーがあることを見せないと一国の外相としては足元を見られます。

もう1つは長くやる、これが大事なのです。アメリカもロシアも中国も長いですよね。同じ顔が続きます。ただ、日本の閣僚候補で外相ができるタマは岸田、茂木、林、河野各氏ぐらいで全員、外相経験者です。しかし全員中国に抱き込まれやすいという弱点があります。この辺りが難しい人事だったのかもしれません。

内閣改造についてはマスコミ各紙、専門家、更には個人に至るまで様々な思いがあり、落第点、及第点それぞれ出ると思います。私は概括すれば可能なコマを使い切って総裁選まで走れる人事をとりあえずは作ったな、と思っています。あとは各自の働き次第だと思います。

まずは個人のスキャンダルが出ないこと、そして内閣が一致団結してことに向かっていくしなやかで強いチームワークを形成することが大事かと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年9月13日の記事より転載させていただきました。