あえて思考停止するべきタイミング

黒坂岳央です。

「思考停止はダメだ」と言われがちだ。確かにしっかり自分の頭で考えるべきことなのに、他人に答えを求めようとする人は世の中に少なくない。自分の頭で考える人こそが賢い人であり、正義であるという風潮がある。

しかし、「考えすぎて動けない」という弊害は無視されていないだろうか?迷って悩んで結局何も行動しない。これでは考えるだけムダであり、逆に戦略的に思考停止して取り組むことでうまくいくこともあると思っている。

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思考停止してうまくいったこと

自分自身、ビジネスや人生経験を通じて、自分なりの優先順位やこだわりたいポイントができてきた。物事をよく考えるようになった結果、合理的でない選択肢を取ることはあまりない。

だが、限界まで脳内シミュレーションをして「これ以上は考えても答えは出ない」というところまでたどり着いたなら、えいや!と時に蛮行に思えるような選択をすることもある。つまり、意識的にそれ以上の思考を止めて「考えても分からないことはまずやってみる」ということだ。それでうまくいったこともある。

たとえば起業がそれにあたる。どれだけ優秀な人でも起業して当てるのは簡単ではない。昔、ユニクロの柳井氏は「1勝9敗」というタイトルの本を出した。これは日本トップの資産を持つ天才的経営者でも「起業で当てるのは難しい」といっているのと同義である。

「やってみてうまくいくのか?」という不安と「とんでもなく稼いでしまったら、税金の支払いが大変そうだな」と能天気でバカげた妄想をしていた。やってみると、それはもう数えきれないほど失敗し続けたが、とりあえずなんとか自己満足のいく結果を出して生き残れた。あれこれ考え続けていたら、失敗を続けていた中できっと挫折していただろう。

結婚した時もそうだ。自分が結婚する時、周囲からはあれこれ心配されたが、自分はあまり不安はなかった。同棲しても大きな問題は起きなかったし、問題が起きても二人でよく話し合いをして解決すればいい。一緒にいて楽しいしとりあえずしてみよう!このくらい軽い気持ちであまり深く考えずに結婚したが、10年以上続いている。もしも自分が合理主義一辺倒で、そろばんばかり弾いていたら不安のあまり、結婚に踏み切れなかったかもしれない。

やってみないと分からない

物事はやって見る前から分かることと、やってみないと分からないことに分かれる。やって見る前からハッキリ分かることは考えるべきだが、そうでないなら考えすぎると逆に行動力を落としてしまう。

たとえば転職をしたいという場合、年収や待遇、仕事内容などは先方の企業が提示してくれるので明確に答えが出る。だが、転職先で仕事を楽しめるか?良好な人間関係を構築できるか?こうしたことはやってみないと分からない。

仮に転職の条件が極めて良好でも、不確定性に悩みすぎて結局見送りを選択すると「あの時転職していればよかった」と後で後悔することだってあり得る(もちろんその逆もあり得るが)。

大事なのは思考しても答えがない問題については、最悪のケースを想定した上で思考を停めて思い切って飛び込んで見ることである。転職で最悪のケースとは「相性が悪くまた転職」である。だが、そのリスクを受け入れられそうなら、あまり考えずに飛び込んでみた方がいい。人間はやって後悔したことは受け入れられるが、やらないで後悔したことは一生自分の心を傷つけ続けるからだ。迷っている時間もムダになってしまう。

自分の場合は転職を何度かやった後、「会社員は自分に向いてない」と理解して独立した。うまくいかないことが続く時期は辛いものだが、最後にうまくいく「当たり」を引けばそれまでの失敗はすべて報われる。ということは、少しでも成功の可能性があるなら、思考停止して当たりが出るまでしつこく挑戦し続ければいいということになる。

よく考えることは、慎重な行動につながると思われがちだが、現実的には「さんざん悩んだり迷ったりした挙げ句、その場から一歩も動かず結局何もしない」というケースがかなり多い。たった一度しかない人生、自らの可能性を「不安」「迷い」に潰されてしまうのはあまりにももったいない。時には意識的に思考停止して思い切って挑戦することも大事なのではないだろうか。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。