評価されない岸田改造内閣:最大の支持層の地殻変化が起きかねない理由

岸田改造内閣発表からほぼ1週間、各方面の声は厳しいものが多く、本ブログのコメント欄でも支持する声は限られています。また、各紙が世論調査を発表していますが、それを見るとある特徴があるのにお気づきになりましたか?

日経、朝日、産経、読売、共同の調査で内閣支持率が一番低かったのが読売の35%です。そして不支持率が一番高かったのが産経の56.1%です。つまり右派系のメディアが岸田政権にNOを突き付けている、これが構図なのです。往年の自民党ファンにとって岸田政権は甘くも辛くもしょっぱくもない無味乾燥な政権にどうにかならないのか、という不満をぶつけているのです。

第2次岸田第2次改造内閣の初閣議のようす 首相官邸HPより

私は岸田氏が首相になった時、日本のエリートサラリーマンのような方、と評しました。つまり敵を作らないで民意を「しっかり」聞きながら自分の仕事を真面目に進める、そんな首相なのです。私の(望む)人材ではないが政権は長くなる、と申したのはこの毒にも薬にもならないタイプは叩きにくいのです。それと岸田氏が首相になったタイミングと安倍氏の不慮の事故で対抗馬が出にくくなったこともあるでしょう。

もう1つ、岸田氏が決定的な打撃を受けないのは日本経済が悪くないことがあります。コロナからの解放、外国人旅行者の回復、賃金の上昇、人流の増大に伴う景気の下支え、株価の上昇は否定できません。経済活動は選挙民にとって第一義の重要な視点ですのでこれが良好である限り、岸田政権を引き倒すほどの野党からの勢いが出てこないのです。

その上で読売、産経の支持率が低いのはなぜか、と考えると政策と運営の深掘りが欠如しており、保守層のハートがつかめなかったことに尽きると思います。つまりバランスばかりを考えたことで思い切った施策が何もないことがあるのでしょう。例えば公明との関係も結局、元のさやに戻っています。私は連立与党の組み方を選挙ごとに変えるぐらいの度量があっても良いと思うのです。公明、維新、国民あたりと適度に渡り合う関係であり、政党同士で緊張感を持ち続けねばならないと思います。

高橋洋一氏は国民の玉木氏を閣僚入りさせればよいと言っていますが、これはいくら何でも無謀。高橋氏と玉木氏がお友達関係なので持ち上げているのでしょうが、個人的には自民は国民より維新との関係を考えた方がよいとみています。今、ある程度の関係を築かないと将来ライバルになりかねず、時遅しになるかもしれません。

以前、私は自民を割るべきだ、と申し上げました。理由は才能ある議員がいても派閥の力学でその力を発揮できない仕組みがあり、あたかも年功序列的な人事制度と注目を集める人事の組み合わせとなり、機能しなくなっているのです。入閣を待つ自民の議員は70名いるとされます。それが一度の選挙で数人だけが引き上げられるならば待機組に光が当たる可能性は低くなります。しかもそれだけ人材がいればかなり強力な組閣できるだろうと思いきや、今回交代になった野村哲郎元農水大臣のような人事も生まれるのです。

個人的に異様だと思ったのが副大臣、政務官に指名された54名が全員男だったこと。これは一部のメディアが猛烈に叩いていますが、叩かれてもやむを得ないかもしれません。一応、世界に報じられる内容と写真だということを踏まえた上でなぜ全員男性だったのか、これが疑問なのです。首相は「チームとして選定を行った」と述べています。厳正に行ったとするならばリーダーとなる政治家に女性が育っていないことを首相自らが認めたことになります。

副大臣、政務官は大臣になるための登竜門的なポジション。もしもそこに女性がいないならば次の大臣候補には女性がいないということになります。が、岸田氏は今回は過去最高に並ぶ5人も女性を大臣に登用したと自慢していますが、それは実力ではなく、バイパスさせて体裁を整えたと言われても致し方ないのです。

日本がジェンダーギャップ指数で2023年は146カ国中125位に留まっている最大理由の一つが政治における男女平等の遅延です。日本は女性議員が増えたと言っても10%足らず。もちろん、日本の女性が欧米評価基準とはapple to appleにならないと考えていますが、それでも54人いてゼロというのはいかにも寂しい結果です。エッフェル塔の写真騒動に対して松川議員が胆力をもって対応せず、さっさと女性局を辞めてしまうなどの動きも個人的には寂しい限りです。

日本は政治が安定している国と評されています。ほぼ単一民族故になせる業とも言えますが、時代という流れは確実に変わっています。その中で岸田政権が表層の取り繕い的な政権運営をしていれば最大の支持層である保守層の地殻変化がいつ起きかねないとも限らない、そんな気がします。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年9月19日の記事より転載させていただきました。