黒坂岳央です。
我が国でインフレが進んでいる。原因は複合的なものだが、中でも円安が大きなインパクトとなっている。今、日本経済は賃上げの伴う好循環インフレ経済に移行出来るかどうかが試される局面ではないだろうか。
日本で生活する上では強烈なインフレを実感することが少なかった。企業が収益率を落としても値上げを回避し、値段はそのままで容量を少なくするシュリンクフレーションで対応していたからだ。日本製品の多くは安いままだった。
だがほとんどの人にとって最も強烈にインフレを実感するものがある。それは「新型iPhone」である。
円ベースで猛烈に高騰したiPhone
日本円ベースで見るとiPhoneは年々、値上げをしている。
iPhone12 799ドル 85,800円
iPhone13 799ドル 98,800円
iPhone14 799ドル 119,800円
iPhone15 799ドル 124,800円
このように機種別に見ると15%、21%、今年発表されたiPhone15では4%の値上げとなった。
人によっては「Apple製品は何でも高い!もはや高すぎて買えない!」と憤りを見せるが、日本は中国、アメリカについで3番目に安い国・地域なのだ。円ベースで見ると、最も安い中国ともほとんど価格は変わらない。Apple社にとって日本市場はiPhoneがよく売れるドル箱であり、価格を抑えてくれていると考えることができるだろう。
ちなみにその逆に世界で最も高く売られているのは、トルコで日本の2倍以上。これは日本を圧倒的に上回るインフレがトルコを襲っているためだ。
毎年、新型iPhoneの発表の時は新機能やスタイリッシュな外観などが話題になるが、ここ数年は「どれだけ値上げしているか?」が注目を浴びるようになった。iPhone15発表前には「最も高いモデルは30万円を超えるだろう」という予測も飛び出していた。
今年1月、一時ドル円レートは127円台になった。現在の147円より14%も円高だった。このレートが定着していたなら、値付けの状況は変わっただろうか?
日本人に新型iPhoneは手が届かなくなった
かつて、iPhoneはもっと身近な存在だった。日本で最高潮に盛り上がっていたiPhone4は、発売当初5万円台で売られていた。これは現在の格安スマホと同じくらいの価格であり、この前後の時代では中学生や高校生が使っているのをあちこち見かけていたと記憶している。
しかし、昨今の新型iPhoneはどれだけ安くても10万円以上、ハイスペックモデルのiPhone15Pro Maxの1TBモデルでは約25万円に迫る。だがこれは同じ容量のMacbookよりも高いことから、大容量ハイスペックモデルの性能はもはやPCに迫る勢いで向上したという意味でもある。今や、iPhoneは単なる電話端末ではなく、ポケットサイズのハイスペックPCとその本質は変わらない。iPhone15は高画質3Dゲームにも対応した。プレイステーションやSteamと同じ土俵に上がったのだ。
これだけ高くなるともはや新型iPhoneを買える人は限られてしまう。経費で落とせる法人や個人事業主、ガジェットマニアくらいだろう。一般のサラリーマンにとっては、もはや手取り月収よりも高くなったiPhoneは到底手が届かない。気軽に買えるのは同じiPhoneでも廉価版のSEモデルだろう。
iPhoneの値上げにどうすればよいか?
今後もiPhoneの値上げは続いていくことが想定される。どうすればよいのか?
結論として、資産運用を覚えるかドル建てで報酬を受け取る仕事をする選択肢だろう。後者は高いスキルと英語力が必要となるので、現実的には資産運用である。
iPhoneの値上げが際立ってきた2020年前後に比べて、現在はあらゆるアセットが高騰している。日経平均は2020年1月から43%も上昇し、ゴールドは2倍以上、NASDAQも50%以上だ。
価値が上昇したというより、フィアットが下落したと評する人もいるが、いずれにせよこの3年間でiPhoneの値上げ以上にあらゆるアセットは大きく上昇したのだ。資産運用をしていた人は、iPhoneの値上げをはじめインフレを喜んで受け入れられただろう。
資産運用は「イチかバチか勝負。勝てば大金、負ければ大損」というイメージを持つ人も少なくないが、それは各人のポートフォリオ次第であり、たとえば日本円のフィアットの下落防衛のディフェンシングに特化したものにするなどでリスクコントロールは可能である。
◇
むやみにリスクの高い投資をする必要はないが、身を守るためにも資産運用は必要になる。昨今、国はNISAなどの優遇制度を積極的にプッシュしている。これは「もうデフレは終わり。インフレ経済下で資産運用を覚えて各人で対応してくださいね」という国家から国民へのメッセージなのかもしれない。値上げが続くiPhoneを買えるようにするためにも、マネーのハンドリングについての転換点が来ているのかもしれない。
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