株価好調の日本、伸び悩む北米:「33700円の蓋」を抜けるかの大挑戦

まずは阪神ファンの方におめでとうと申し上げます。プロチームは個々の選手の能力は伯仲しており、監督の采配と能力、人的魅力がその違いを左右させることが多いとされます。今期復帰した岡田彰布監督には脱帽です。ここまで選手の能力を引き出せたのは「当たり前のことを当たり前にやること」だそうです。

そういえば同じ阪神出身の新庄剛志監督率いる日本ハムは借金18、リーグ最下位です。奇をてらうことで選手がついていけないより選手と監督の一体感がやはり王道ということなのでしょうね。

では今週のつぶやきをお送りいたします。

株価好調の日本、伸び悩む北米

日本の株価上昇が止まりません。8月18日の31200円台を底にしっかり上昇、金曜日には33500円台に乗せ、1か月足らずで7.4%の上昇となりました。来週が関門でチャート的に「33700円の蓋」を抜けるかの大挑戦となります。これは6月、7月、8月とチャレンジし、いずれも跳ね返された鬼門とも言えるラインでいよいよ勝負どころになります。

超える可能性はあると思いますが、買われる銘柄が一部の優良株に偏っており、個人投資家好みの小型株が見向きもされない状態になっています。つまり指数相場的で個人的には嫌な感じ。

北米に目を転じると今年最大のIPOだったARM社はご祝儀相場で仮条件上限の51ドルに対して初値がついたのは昼過ぎで25%高を演じました。とはいえ、仮条件はご祝儀を煽ることもあったのか低すぎで、現在の時価総額9兆円規模はいづれ1.5倍から2倍に化けるとみています。浮動株も少ない上にこの会社の持てる能力を考えればこんなものではないでしょう。

ただ、北米株式市場全体をみると冴えない展開で上値を追ってこない状況です。これは投資家が現在の株価がバリュエーション的に高すぎるとみているか、先行き冷たい北風が吹くとみているのかのどちらかでしょう。

欧州中央銀行が最後の利上げと思われる判断をしたことに喜びよりも更なる経済打撃というイメージが強く、ラガルド総裁への恨み節も聞こえてきます。特にドイツが厳しく、欧州全体からも景気の良い声が聞こえてこない理由はウクライナの地政学的問題もありますが、中国との距離感が大きくなったことが重くしている気がします。

中国は他者を利用するだけ利用し、自前能力ができると逆に他者の市場に土足で入り込むという悪癖があり、ユーラシア大陸で繋がる欧州は早急にそこに気づかないと自国経済がやられてしまうリスクが出てくるでしょう。

東京証券取引所 Wikipediaより

日本の自動車産業にカナダが一役買うか?

ご興味ある人しか気がつかなかったかもしれませんが、金曜日の日経一面に「カナダでEV電池供給網 日本の官民が協力、北米販売後押し」とあります。これは私がカナダにいるからかもしれませんが、極めてインパクトがある記事でした。

日本とカナダが政府間で協調し、EVに必要な資源の採掘に日本が技術的な面を含めて支援し、その採掘した資源を基にEV用電池工場を作り、最終的にはカナダでEV完成車を作り、アメリカ市場に参入するというストーリーになるかと思います。

アメリカではインフレ抑制法で一定条件のEVを購入すると税額控除で110万円ほど安く買えます。これがテスラなどが爆発的に普及している要因ですが、日本車は一種類も認定されていません。その理由は電池が北米で作られたものではないからなのです。

カナダは資源の宝庫ですが、埋蔵が相当あるものの手が付けられていない鉱山は相当あるとされます。ここに目をつけたのでしょう。西村経産大臣も来週カナダに飛びます。自動車産業はすそ野が広く、「資源のカナダ」との相性もあり、日本がようやくカナダに目をつけたかなと嬉しく思っています。

もちろん、この交渉は素晴らしいですが、手放しで資源開発ができると思ったら大間違い。私は過去20数年、大小さまざまな資源会社に投資し続けてきていますが、許認可はたやすくありません。一つは環境問題、もう一つはカナダ先住民対策です。このプロセスに異様に時間がかかり、時として裁判になり、合意に至らない場合もしばしばあるのです。よって日本からポッときて「技術持ってきました」では進まず、いかに交渉を進めるかが全てでしょう。

EVと電池開発は一刻を争う話の中、日本側はカナダの時間軸について行けるか、忍耐と工夫とカナダ政府の協力とローカル企業との合弁を含めた国際的パートナーシップの運営能力にその成否が占えると言えそうです。

敬老の日、他人事ではない100歳越え92000人

私はかつては敬老の日と100歳以上の方の意味合いについて深く考えることはなかったのですが、考えざるを得ない年齢になってきた、それが本音です。9月1日時点の住民基本台帳ベースで100歳以上は92000人、驚くことは53年連続で増加という点です。ということは私もこれをお読みの同年代の皆様も100歳というベンチマークをクリアする可能性が多いに出てきたということです。

科学的に言われるのは現在の人間の物理的寿命は120歳。日本最年長の方が116歳でなるほど科学は正しいのでしょう。仮に120歳まで生きるとすれば私はまだ折り返しをちょっと過ぎたぐらいなのです。

しかしながら私の同期は次々「リタイア」「嘱託」で挙句の果てに「ひろはまだ働いているの?大変なのね?」と憐みのお言葉を頂戴しております。「歳とってそんなに働きたくないわ」と言われてもリタイア後10年でぽっくり逝っていた1960年代とは違うんです。私の会社の60代後半の社員が「俺は家のソファに一日座っているような老後なんて絶対に嫌だ。もっと働く!」と元気ハツラツです。

それに生きている以上、食わねばならないし、住むところも必要。30代の時に苦労して購入した郊外の一戸建ては既に築40年。だましだまし使っている理由はあと5年か10年で俺もぽっくりさ、というわけワカメの理由から。

しかし残念ながら10年経っても15年っても元気だったら「俺、いつまで生きるんだ?それよりこの家、もう持たないぞ。どうやって修理代を出すんだ」という話を想像した方がよいのかもしれません。敬老の日を迎えるシニア層も喜怒哀楽ということでしょうかね。

後記
ドイツの若手プロフェッショナルグループなる十数名の訪問団が当地を訪れ、日系ビジネス団体との交流会をしました。私が知る限り他国の訪問団がバンクーバーの日系ビジネスに興味を持ってくれたのは31年いて初めて。幸いにして三菱商事様のものすごく立派なオフィスの会議室をお借り出来、ニッポン企業の威厳、いや見栄を大いに張らせて頂きました。いや、正直言うと私もそのオフィスには格の違いをひしひしと感じてしまいました。さすがバフェット氏が目をつける代表的日本企業です。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年9月16日の記事より転載させていただきました。