予想が批判されたくないなら「悲観的なバイアス」をかける

政府のコロナ対策分科会の会長などを務めた尾身茂さんが退任しました。コロナ対策の先頭に立って、最悪の事態を防止するために尽力してきた「感染症の専門家」ですが、果して日本にとって良いアドバイスを提供できたのかは不明です。

尾身さんの提言は確かに科学的な根拠に基づいた学者としてはロジカルなものであったかもしれません。しかし、本当はそこまで厳しい感染防止策を取らなくても良かったのかもしれません。

尾身茂氏 NHKより

でも「もし尾身さんがいなかったら」という仮定の話は、もう実験することができないのです。

ただ確かなことは、コロナ対策に限らず「悲観的予想」は、発言者にとっては、とても都合が良いものだということです。

もし、予想が当たれば「予想通りの展開になった」と評価されることになります。逆にもし予想が外れても、それを検証・追及することを求める声はあまり大きくなりません。

指摘されても「予想が外れて本当に良かった」と受け流せば批判されることはありません。

つまり予想をする人は「悲観的なバイアス」をかけた方が都合が良いということです。

今週、晴海フラッグがセカンドマーケットで売買成約したと友人から連絡が入りました。平米単価は560万円を超えており、販売価格の2倍近くになっています。

晴海フラッグが最初に売り出された2019年当時にも、東京の不動産は東京オリンピック後に暴落すると警鐘を鳴らす「不動産の専門家」の方がいました。

結果論かもしれませんが、不動産価格は東京オリンピックには何の関係もなく更に上昇しています。この方からも、予想が外れたことに対するコメントはありません。値上がりしたから良いではないかということなのかもしれません。

ポジティブな予想をするのは勇気が必要です。当たっても当然と思われ、外れた時にはスケープゴートとして批判されるリスクがあるからです。

もしかしたら、私はポジティブに考え、リスクを取りすぎているのでしょうか?


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2023年9月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。