共産党宣伝の「新たな戦前」は著しく国益を害する

日本共産党・志位委員長と小池書記局長長 NHKより

共産党宣伝の「新たな戦前」

日本共産党は、

岸田自公政権は昨年末、安保3文書を閣議決定し、「専守防衛」をかなぐり捨てる敵基地攻撃能力の保有と5年間で43兆円もの異常な大軍拡への道をひた走っている。無謀な戦争に突き進んだ戦前を想起させる危険な動きだ。(「赤旗」9月18日)

と主張し、「新たな戦前」は許さないと「赤旗」等で大宣伝している。

「新たな戦前」は、もともとタレントのタモリ氏が昨年末のテレビ番組「徹子の部屋」で使った言葉であるが、同氏がこれをどのような趣旨で使ったのかは必ずしも明らかではない。これを共産党が大宣伝に「利用」しているのである。

しかし、実際に現在の日本が「新たな戦前」と言えるのか、また「新たな戦前」に向かっているのかについては、事実に基づく検討が必要である。

「新たな戦前」の理由

共産党は「新たな戦前」の理由として、上記のとおり、「専守防衛」に反する敵基地攻撃能力の保有と、5年間で43兆円の軍事費(防衛費)の増額を挙げている。

しかし、中国・北朝鮮・ロシアの核搭載可能極超音速弾道ミサイル攻撃、変則軌道ミサイル攻撃、ミサイル飽和攻撃などに対するミサイル防衛が技術的に困難となれば、敵のミサイル発射基地に対して攻撃可能な長射程ミサイルを保有しなければ日本国民の命を守ることは不可能になる。

まさに「座して死を待つこと」(1956年鳩山一郎首相国会答弁)は憲法9条の趣旨ではなく、「専守防衛」の趣旨でもないからである。共産党の敵基地攻撃能力保有反対は、敵国の核搭載可能ミサイル攻撃から日本国民の命を犠牲にする主張である。

したがって、軍事費(防衛費)の増額も、長射程ミサイルの保有を含め、上記の日本国民の命を守るために必要不可欠である。共産党の軍事費(防衛費)増額反対は、「反戦」「反米」「反自衛隊」のイデオロギーに基づく1億2000万日本国民の命を犠牲にする主張である。

共産党主張の「先制攻撃」はあり得ない

共産党は、日本が長射程ミサイルなど敵基地攻撃能力を持てば、集団的自衛権に基づき必ず米国と共同で「先制攻撃」を行うから、日本は相手国の反撃を受けて焦土になると主張し大宣伝する。

この主張は、共産党が中国、北朝鮮、ロシアを信用し、米国および日本国を信用しない主張である。力による現状変更を行う国は米国および日本国ではなく、中国およびロシアなのである。力による現状変更をしない米国および日本国には、「先制攻撃」を行って力による現状変更をする必然性などは全くないからである。

反対に、力による現状変更を行う中国やロシアこそ「先制攻撃」の必然性があるのである。この事実は、ロシアによる先制攻撃としてのウクライナ侵攻、中国による先制攻撃としての台湾侵攻、尖閣侵攻の危険性を考えればあまりにも明白である。

共産党宣伝の「新たな戦前」は著しく国益を害する

共産党はタモリ氏の「新たな戦前」を利用し、「赤旗」等で日本があたかも「戦前」と同じ危機的状況であるかの如く大宣伝し「大軍拡反対」を唱え危機を煽っている。

しかし、現在の日本は、他国に対する軍事力による領土拡張や権益獲得の野望は皆無である。

この事実は共産党も否定できまい。現在の日本は、ひたすら我が国の主権と独立を守り、尖閣諸島や沖縄本島を含む我が国の領土、領海、領空、排他的経済水域を守り、日本国民を守るために、自衛隊と日米同盟の抑止力に依拠する自由民主主義国家であり、中・ロ・北朝鮮のような専制主義国家ではない。

それにもかかわらず、全く事実に反し上記「新たな戦前」の大宣伝をする共産党の主張は、中国や北朝鮮、ロシアに迎合し、日本国の抑止力を低下させ、自由民主主義国家としての日本国の国益を著しく害する以外の何物でもない。