台風7号は大きな被害が予想されたが、鉄道の計画運休や線状降水帯の豪雨注意の呼びかけ報道等の対策もなされた。武蔵小杉の水没、タワマン浸水停電が起きた2019年の台風19号等、近年強大化する台風の教訓あってのことだろう。
にも関わらず、被害が出てもおかしくないような「自爆行動」する人も目立ち報道が相次いだ。日本人は一億総愚鈍化、刹那主義化しているのか、それとも賢明層と愚鈍層に格差二極化しているのか。
最初に目に留まったのは、新幹線が止まり野球観戦できず小学五年生が泣いたという記事だ。10歳超えれば分別も付く、泣くようなことか? 台風が来る運休予定とわかっている、それで出かける親も親ゆえ子も子だが、少々常識に欠けはしないか。野球つまり遊びと身の安全とどちらが大事なのか。死んだらと言わず怪我したら痛くて泣くのは当たり前だが、自ら台風に飛び込む真似には同情し得ない。
神奈川の海水浴場では、台風接近により遊泳禁止の海に入り溺水、行方不明、10代から20代という。しかも白波が立ち17時過ぎ、普通に考えて泳ぐ状況ではない、明らかに「怖い」はずだ。にも拘わらずである。やはり常識を疑ってしまう。
さらにコロナ禍明けてようやく再開の阿波踊りでは、台風接近にも関わらず強行開催。責任所在が不明確なまま、実行委員会は開催決定し風雨の中強行。一部の連(踊りのチーム)は自主判断で出場中止したそうだが、「実行委員会がやるというから」と多くの連が演舞したという。観客も居るし、ということもあったのだろうか。となると嵐だというのにわざわざ見物に出てくる観客の常識も怪しい。しかも階段状の観客席は建築基準法に違反していたという。万一倒壊でもしたらどうなったか。
地球温暖化の影響で海水温が上がり、台風が巨大化、強大化している。ゲリラ豪雨を超えて、線状降水帯という「豪雨の帯」が発生するようになった。このわずか数年で水害が各地で相次いでいる。死者も出ているが、毎度の死亡パターンは「川や用水路を見に行って流された」「アンダーパスに車で進入した」である。わざわざ危険に自ら飛び込み自爆死する例が後を絶たない、理解に苦しむ。
これらの行動心理は、心理学の「正常性バイアス」「同調性バイアス」として知られている。「これくらい大丈夫だろう」「皆同じくしているから大丈夫だろう」という心理だ。論理的思考判断が今の自分の欲求でかき消されてしまうのである。結果は最悪の場合、死だ。バカは死ななきゃ治らない、という言葉はある意味で真実ということだ、ただし死んだらおしまいで、治らないが。
巨大強大な台風が来る、運休予定、とわかっているのに、今電車動いているから、今自分の周りが大したことないから大丈夫だろう。皆でかけていくから同。よって自分の快楽欲求優先。しかしその結果・・・。
そういえば1999年筆者の住む神奈川の水がめである丹沢湖上流の玄倉川で、中州でキャンプしていた若者子供たちが退避勧告に従わず、上流のダム放流により流され13名が死亡した大事故があった。捜索のため渇水期にも関わらず巨大な丹沢湖の水を抜水したはず、とんでもない迷惑と思った記憶がある。まさに「今大丈夫だし、皆いるし」という典型的な正常性バイアス、同調性バイアスによる自爆死である。
若かろうが未来があろうが関係なく、人はこれらの「誤ち」を冒す。だからこそ今の快楽欲求に流されることなく「賢い判断」を心掛けなければならないし、少しでもまともな判断ができる者がそのように声を大にし導かなければならないのだ。東北大震災で南三陸町の防災庁舎で津波に流される寸前まで防災無線に「逃げて」と叫び続けた遠藤未希さんを想い出す。それが正しい姿有り様だ。
ところが現実は、為政者や企業トップが賄賂汚職や公金チューチューさらには性加害まで、快楽欲求に耽り放題だ。模範的ロールモデルが崩壊しているのだから、一般市民がささやかな快楽欲求を優先するのも然りか。イワシと国は頭から腐るのだ。からの「今だけ金だけ自分だけ」。他人どころか自分の子供の命すら軽く快楽優先。かくして一億総愚鈍化刹那主義化は進んでいく、それでいいのだろうか。
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