海外視察が好きな社長は会社を潰す?(横須賀 輝尚)

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社長の危ない「虚栄心」と「自己承認欲求」

X(旧Twitter)やFacebookなど、社長が自ら情報発信することも決して珍しいことではなくなりました。事業の成長を見せれば、社員も顧客も安心しますし、メディアにも取り上げてもらいやすくなります。しかしSNSでの投稿に「いいね」が集まると、純粋な情報発信は変化してしまうものです。

「社長のSNSを見れば、その会社の脆弱性が見えてくる」と経営コンサルタントの横須賀輝尚氏は解説します。今回は、横須賀氏の著書「プロが教える潰れる会社のシグナル」より、再構成してお届けします。

出張が多い社長、本当に仕事してる?

出張ばかりしている経営者っていますよね。SNSとかで「今日は沖縄にいます!」とか「仕事でシンガポールまで来ました!」みたいな投稿、よく見ると思います。もちろん、これも「事業にとって必要な出張」であれば、大きな問題はありません。

しかし、まあ説明するまでもないと思うのですが、単に遊びたいだけの場合は経費の無駄遣いですからちょっと危険な気配です。

特に気をつけたいのが「視察」って言葉。

国内だけにとどまらず、結構海外企業の視察ツアーなんかも世の中にはあって、「今後の事業のために視察が必要だ」と国内外駆け巡っている経営者もいるわけです。本当にそういう目的ならば良いのですが、「視察」というワードを大義名分にして遊びまくっているのであれば、これはちょっと大丈夫? という感じです。

私自身、これまで国内を始めとして、東南アジアやインド、アメリカなど企業視察は幾度となく行っています。海外企業から学ぶことは本当に多く、勉強になることばかり。でも、やっぱり特に海外視察はお金がかかるもの。だから、出張の多い経営者がお金を使っていることは事実です。

視察が無駄になっていないか見極めるポイントは、その視察から何か新しい事業や商品が生まれたか。あるいは、取引先が新規に見つかったなどの経営にきちんと貢献した視察であったかどうかです。

結果を出していれば、視察も立派な「投資」。ただの遊びであれば、それは「浪費」なので、このあたりを俯瞰して眺めてみましょう。

特に、SNSで虚栄心を満たしたいがために出張を続ける経営者には要注意です。

セミナー講師、目立ちたがり屋の社長には要注意

虚栄心という言葉が出ました。

経営者も創業の頃は、「家族を食わせるんだ」とか「世の中を変えるんだ」とか、理念にも燃え、経営を軌道に乗せるため必死です。他人の評価なんか関係ない。ところが、経営が上手くいき、結果が出てくると周りから自然に評価されるようになります。

露骨に言えば、「成功者」としてチヤホヤされるようになるわけですね。チヤホヤされたことのない経営者が、チヤホヤされるようになるとどうなるかというと、調子に乗り始めます。非モテ男子・非モテ女子がモテ始めるようなものです。そこで上手いタイミングでやってきたりするのが、マスコミ取材やセミナー講師の依頼です。

メディアに乗ると、周りの評価がガラッと変わるんです。称賛の雨あられ。これが気持ちよくないはずがありません。そしてセミナー講師。多くの経営者や起業家が、「先生、先生」って慕ってくるんです。これも気持ちよくないはずがありません。

これに気を良くした経営者は、もっと目立ちたくなります。マスコミ関係者とのつながりを増やしていったり、プレスリリースを頻繁に出すようになったり。もちろん、PR自体はいいことなのですが、それが売上に直結しているのかどうかが肝要です。

そしてセミナー講師。一度やってしまうと辞められないっていうくらい、慣れてない経営者は気持ちがいい。セミナー講師の仕事が終われば、講師を囲んでの懇親会。またそこで称賛の嵐。

家ではついでもらえないお酒も、ここでは率先して「先生、先生」とついでもらえます。まるで依存症のようです。となれば、今度はセミナー講師の仕事を率先して受けようとします。講師派遣サイトに登録してみたり、あるいはスーツを新調してみたり。こうなってくると、本業よりも楽しくて仕方がありません。

だってみんなチヤホヤしてくれるんですから。本業そっちのけで、セミナー講師業に手を出す経営者は、自分の虚栄心を制御できていません。そうなれば、講師業だけでなくほかのお金の使い方も気になってしまいますね。

なお、あくまで本業である事業をベースに、時々依頼を受ける程度であれば、大きな問題はないといえます。それから、私のようなコンサルタントなどセミナー講師を主たる事業にしている人は、セミナー開催数が多いからといって、危険なシグナルというわけではないのは、一応伝えておきますね。

横須賀 輝尚 パワーコンテンツジャパン(株)代表取締役 WORKtheMAGICON行政書士法人代表 特定行政書士
1979年、埼玉県行田市生まれ。専修大学法学部在学中に行政書士資格に合格。2003年、23歳で行政書士事務所を開設・独立。2007年、士業向けの経営スクール『経営天才塾』(現:LEGAL BACKS)をスタートさせ創設以来全国のべ1,700人以上が参加。著書に『資格起業家になる! 成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)、『お母さん、明日からぼくの会社はなくなります』(角川フォレスタ)、『士業を極める技術』(日本能率協会マネジメントセンター)、他多数。
会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業 | 横須賀輝尚 https://www.amazon.co.jp/dp/B08P53H1C9
公式サイト https://yokosukateruhisa.com/

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2023年9月21日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。