パリ国立オペラ座。今から350年以上も前、フランス史に燦然と輝き”太陽王”と呼ばれたルイ14世が創設した王立舞踊アカデミーを祖とする、フランスが世界に誇るバレエとオペラの殿堂だ。
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パリ国立オペラ座の本拠地、パレ・ガルニエ
Jean Pierre Delagarde / Opera national de Paris
現在のパリ国立オペラ座は、パリ中心地に19世紀後半に建てられた優美な「パレ・ガルニエ」、パリ東部のバスティーユ広場に20世紀後半に建てられたモダンな「オペラ・バスティーユ」という二つの大劇場を持ち、オペラとバレエを合わせて年間400前後もの上演を行う、世界最大級のオペラ座だ。
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ゴールドと深紅で装飾された優美な劇場。天井にはマルク・シャガールによる装飾画
Jean Pierre Delagarde / Opera national de Paris
公演期間は、9月半ばから翌年7月半ばまで。今シーズンは、オペラ20作品、バレエ14作品、トータル377公演が予定されており、うちオペラは8作が新演出、バレエは5作がオペラ座初上演、2作が新作という構成。
9月半ば、オペラは「ドン・ジョヴァンニ」、「ドン・パスクワーレ」、「ローエングリン」で、バレエはクリエーションを含めたコンテンポラリー作品のミックスプログラムで、新たなシーズンが始まったところだ。
オペラの質もよいが、バレエに対する評価はさらに高く、世界最高峰と目されている。日本での人気も高く、パリでのバレエ公演には日本人観客を多く見かけるし、長年来、数年の感覚で日本公演も行われている。
前回は2020年2~3月、新型コロナウィルスの影響下であったが万全を尽くして来日公演を決行したパリ国立オペラ座バレエ。今シーズン再び来日が予定されており、2024年2月、東京文化会館で、「白鳥の湖」と「マノン」が披露される。
「白鳥の湖」は、クラシックバレエの最高峰と言われる作品。パリ国立オペラ座バレエでは、同カンパニーの発展に多大に貢献したダンサー兼振付師であったルドルフ・ヌレエフ版をレパートリーにしている。
1984年の初上演来、数年ごとに舞台に乗る大人気作品で、昨年冬の公演時に、トータルの上演回数が300を超えた。
クラシックバレエの端正で優美な振り付けと、古典的エレガンス漂う舞台セットや衣装。チャイコフスキーの優雅な音楽とともに、世界トップの技術を持つソリストダンサーたちと群舞の実力を堪能できる。
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クラシックバレエの最高傑作と言われる「白鳥の湖」
Yonathan Kellerman / OnP
「マノン」は、フランスの小説家アベ・プレヴォーの物語を、近代バレエ界の巨匠振付家の一人、サー・ケネス・マクミランがバレエにしたもの。ストーリーテリングに長けたマクミランによる、演劇的魅力をふんだんに取り入れた情緒溢れる振付は、観客の感情を揺すぶってやまない。
小説をベースにした”物語バレエ”と言われるジャンルの、最高傑作の一つと誉れ高い名作だ。音楽は、マスネのさまざまな作品の旋律を組み合わせて編曲したもので、ストーリーにも音楽にも、フランスらしい魅力が漂っている。
「白鳥の湖」で正統派グランドバレエの真骨頂を堪能するもよし、「マノン」でドラマティックなストーリーに感情を揺さぶれるもよし。パリ国立オペラ座バレエの魅力を二つのスタイルで満喫できる、楽しみな日本公演だ。
本拠地パリでも、クラシックからモダン、そしてコンテンポラリーと、魅力的なプログラムが目白押しの2022-2023シーズン。
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豪華絢爛な「眠れる森の美女」
Sebastien Mathe / OnP
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「リーズの結婚」。ユーモアあふれるかわいらしい作品
Francette Levieux / OnP
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モダンバレエの大家ジェローム・ロビンスが振付けた「アン・ソル」
Laurent Philippe / OnP
パリ旅行を計画するときには、ぜひ二つのオペラ座の上演スケジュールを確認し、旅にバレエ鑑賞を組み込んでほしい。パリの旅が、より一層忘れ難いものになるだろう。
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バスティーユ広場に建つ新オペラ座こと、オペラ・バスティーユ
E.Bauer Opera national de Paris